死闘の末に見たもの
こんばんは、すらいむ[N]です。
遅くなり、大変申し訳ありませんでした。
話は頭のなかにできてはいたんですが、時間がなくて・・・。
ではどうぞ!
夜明け前、まだ薄暗い森の中、俺は剣の手入れをしている。
今まで、数多くの人間と魔物を斬ってきた剣だ。かつては聖剣と謳われたこの剣もいまや赤黒く錆び付いている。
しばらく磨いたが、錆は取れなかった。
俺は立ち上がって深い深呼吸をした。
「すぅっ」
魔王の時には感じなかった緊張がある。
これはかつて勇者として旅をしていたときに出会った強敵に対するものと同じだ。
『勇者よ、私を倒すつもりか?無駄な事はよすんだな。』
深く静かで重みのある声が森の中に響く。
目を開けるとそこには性別のわからない人間が立っていた。 いや、正しく言うのなら少し浮いていた。
『お前は魔王を倒した勇者だ。私を倒す必要などない。大人しくどこかで暮らせ。お前の使命は終わったのだ。』
「お前に行動を制限される云われはない!精霊だからといって調子に乗るな!!」
『勇者よ、今まで何度も生き返らせてやった恩を忘れたのか? お前が死ぬ度に死の淵から引き上げてやったのはこの私なのだぞ。』
「それが余計なお世話だって言ってんだよ!!誰が生き返らせてくれと言った!誰が魔王を倒したいと言った!!俺はそんなこと思ってなかったんだよ!!」
『ふふふふふ。それならこうしよう。私がお前の願いを一つだけ聞く。それでお前は平穏な暮らしに戻る。どうだ?悪い話ではないだろう。ここでお前が私に殺されても生き返りはしないのだしな。』
「別に構わない。どちらにしろこの世界と共に死ぬつもりだからな。だがその前にお前を殺す。俺の願いはこの世界の破滅、この世界の腐った人間と腐った精霊を殺すことだ!!」
俺は腰の剣を抜く。剣は赤黒く錆び付いて、精霊など斬れそうにない。
『わかった。とりあえず剣を納めろ。腐った人間のためにお前が剣を抜く必要などない。私は常にお前の味方だ。』
「・・・やっとわかったよ、この世界の人間は全てお前に似ているんだ。でもな、一番腐っているのはお前だッ!!!」
俺は剣を両手で握り、精霊の右肩から左腰にかけて斜めに剣を降り下ろした。
ザクッ!!
爽快な音が聞こえた。だが、剣を降り下ろした先に精霊はいなかった。
『無駄なことはするなよ。お前では私には勝てないのだ。教えてやろう、なぜ精霊が魔王に手を出せないかを。なぜ勇者などという存在に頼らなければならないかを。』
精霊は俺の背後に移動していた。
腕を組んでフワフワと浮いている。俺は振り向きながら、浮いているそれを薙ぎ払った。
ザンッ!!
斬れる音はする。だが感触はない。
『例えを出そう。神は直接人間を助けるか? 助けないだろう? だがそれは助けないのではなく、助けられないのだ。神と人間の間には次元の壁がある。見えないが分厚く大きな壁だ。私は神の部類に入るのだ。そして魔王は人間の方に入る。神が倒せるのは魔神であり、魔王は人間にしか倒せないのだ。』
精霊は俺の頭の上に浮いていた。依然腕を組んでいる。
俺は精霊に向かって剣を繰り出すがまるで当たらない。
『だから無駄だと言っただろう。 これでも聞かないのならしょうがない。体に教え込むとする。』
精霊は音もなく俺の前に現れる。剣をつき出しても当たらない。まるで投影された絵と戦っているようだ。
精霊はゆっくりと手をあげ俺の額に拳を軽く当てた。
バンッッッ!!
俺の体は爆音と共に飛び、木の幹に衝突した。全身が痺れて動かない。
『わかったか?人間では神に勝てないのだ。』
精霊は動けない俺の前に姿を表す。
「だが・・・俺は・・・神を殺した人間の・・・話を聞いたことがある・・・・・・」
『そうだな。そういう人間も稀にいる。だがその傍らには常に神を殺すことを可能とする武器、防具があったはずだ。今のお前にそれはあるのか?』
精霊は薄く微笑んでいる。
「一つ聞く・・・、なぜ勇者が必要だったんだ?・・・なぜ、魔王が生まれたんだ?」
『・・・』
「答えろよ・・・」
『仕方がない。どうせお前もなるのだから言っておこう。魔王とはかつて勇者だった人間が聖なる力を失ってなるものだ。私に歯向かったものたちの行く末が魔王だ。お前が魔王と戦ったときに、剣が輝いたのは勇者同士が戦う拒絶反応というやつだろう。私も初めて見たがな。』
「くっ・・・!!」
『所詮お前もそいつらと同じにになるのだ。』
プツン!
俺の中の何かの線が切れた。
「俺は・・・お前を・・倒す!!!」
俺はボロボロの体を引きずりながら、立ち上がった。
「今まで何度勇者を魔王にしたかは知らないが俺は同じにはならない!俺はかつての勇者たちの分まで背負って地獄にお前を連れていく!!勿論俺も一緒にな。」
ふと剣を見るとかつての輝きが戻っている。俺はもう一度剣に勇者と認められたのか。だが今は関係ない、ただ目の前にいるヤツを斬る。
『何度来ようと同じこと。』
「次は違うさ」
俺は盾も装備し、かつて旅をしていたときのスタイルに変えた。
すると剣と盾が共鳴したのか輝きは増した。
右手で剣を握りしめ、精霊へと斬り込んだ。
ドシュッッ!
鋭い感触と共に鮮血が飛び散った。
聖剣は深々と精霊の肩に食い込んでいる。
『何ッ・・・!!』
俺は一歩踏み込み、更に右手に力を込めた。
「うおおおおおおおお!!!」
ザンッ!!!
今度は精霊の肩から左半身を斬った。俺はすぐさま首に二撃目を放つ。
スパン!
あっさりと首がとんだ。
ドサッ!という音と共に精霊の首は地面に落ちた。
『神を殺す剣になったのだな。なら私の真の姿を見せよう。』
まばゆい光に精霊の姿が包まれて消えた。
ドドドドドドッッ!!!!!
鋭い空間威圧に俺は後退する。
光が晴れた先に見えたのは、先程よりも
成人男性に近い精霊だった。
『この姿を見せたのは数千年ぶりか、鈍ってないかのぅ。』
首や手をコキコキと鳴らしている。
俺は剣と盾を構え、様子を見る。
スゥッ!タタタタタタッ!!
地面を滑るように走り俺の目の寸前で体を捻り、背後に回る。そして、俺の胸部へと肘打ちを放つ。
メキッ!!
「がっ!!」
重い、だが耐えられないほどではなかった。
俺は腕を 降り、剣を精霊へと叩きつける。
だが当たることはない。現状はふりだしへと戻った。
『やはり鈍っているな。』
精霊は先程と同じように滑るように走ってくる。盾を構えるがすり抜けるように攻撃を繰り返して来る。
頭、腹、足。それぞれに攻撃を何度も喰らい、俺は立っているのも困難になった。
『所詮そんなものか。』
精霊はくるりと背を向けた。
俺は隙を逃さず反撃した。
「テラ」
いくつもの炎球が精霊を襲う。そして俺は走り出す。右手に勇者のみが使える雷撃の呪文を流す。それが剣を伝い、最強の剣技となる。
精霊へとたどり着いたとき、まだ炎球にもがいていた。
「うおぁぁぁあぁあぁ!!!」
俺は渾身の力で精霊を頭から斬った。
バリバリバリッッ!!!!!!
巨大な雷柱が精霊を包む。
俺は魔力、体力ともに尽き、地面へと倒れる。
『ぐっ!ガハッ!!!』
精霊は吐血し、その場に膝をついた。
『ふふ、お前の勝ちだ、勇者よ。私はもうすぐ消滅する。この腐った世界と共にな。 だがお前は死ねない。お前はこの世界の住人ではないからだ。もし、この世界の住人ならお前も腐った性格だっただろうからな。・・・この世界の上にお前の故郷がある。この世界の消滅と共にそこへ飛ばされるだろう。そろそろだな。行ってこい。』
精霊は空気にとけて消えた。
俺は精霊の言葉を聞いたあと、睡魔が襲ってきたのか、まぶたが重くなった。
もう一度しかない命。俺はまだ生きていたい・・・。 勇者が最後に見たのは、太陽の光だった。
いかがでしたか。
この世界はとりあえず終了です。
次からは細かく濃密に新世界で書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。




