勇者とは
こんにちは、すらいむ[N]です。
第二話です。短編含めると第三話ですね。
今回は時代が少し交わりました。
ではどうぞ!
俺は森の村を滅ぼし、逃げて隠れていた王女を殺した。
次はどこに向かおうか。
あぁ、行ってない場所があったな。
そこは伝説の勇者であり、俺の祖先の墓だ。
魔王を倒しに意気揚々と旅立った時に最初に向かったところだ。
洞窟の深部にあり、そこでは魔物が出なかったのを覚えている。死んで数百年経っても消えない勇者の力に俺は驚いた。
母国の城からそんなに遠くないところに俺の祖先の墓はあった。
前に来たときと変わらない聖なる力に包まれている。だが俺は言い様のない違和感を感じた。
まるで俺を拒絶しているかのような感じだ。
深部に着くとそこには勇者の紋章と功績を称える文字が刻まれた大きな石板があった。やはり以前と変わらない存在感だ。
まるで見られているかのようだ。
俺はそっと手を伸ばし、触れてみた。
バチッ!!
石板に弾かれた。
強い静電気が手に走ったような感覚だ。
でも理由はわかる。
祖先が造り、死ぬまで守り抜いた城と人々を殺した俺を恨んでいるのだろう。
だが納得はいかない。
祖先は俺が受けてきた扱いとその悲しみを知っているのか。知っているのならわかってくれるはずだ。
俺は石板の紋章を睨み付ける。
すると、夢でも見ているかのような映像が頭に流れ込んできた。
一人の青年が16歳の誕生日、城に呼ばれ、王に魔王討伐を命じられる。
ここはどこだ?
俺の知っている世界ではない。
その青年はかつての俺と同じように意気揚々と魔王を倒しに旅立つ。魔王を倒すだけではない。父親も探しているようだ。
青年は困っている人や国を助け、魔王の手がかりを手に入れながら進んでいく。盗賊や大蛇を倒し、船に乗り世界を旅する。
この世界は俺の住んでいる世界よりとても広いようだ。城や村の数も多く、その旅は俺の旅より遥かに辛いものだった。
しかも、青年の扱いは俺と同じだった。
魔王を倒すためにレベルの上がった青年を人々は恐れた。だが、青年は己の信念を曲げなかった。
旅立って数年が経ち、いよいよ旅も終盤まで来た。
魔王の城へと乗り込み、激しい死闘の末、倒した。
だがそれは、新たな旅の始まりだった。
魔王討伐の宴が始まろうとしたとき、得たいの知れぬ力で兵士たちが倒れ、王の後ろに何者かが現れた。それは魔王でさえも操っていた大魔王だった。
青年はまたもや倒すことを命じられ休む暇もなく旅立つ。
とある場所にそこの見えぬ穴が開き、降りていった人は戻ってこなかった。
魔王を倒した青年はその穴に飛び降りた。
そこで俺は驚いた。
飛び降りて辿り着いたのが今俺がいる世界だった。
その青年は様々な道具を集め仲間と共に大魔王を倒しに向かった。
その魔王城の途中で見たのは瀕死の父親だった。
その父親は青年のため、家族のため、大魔王を倒しに向かっていたのだ。
青年は父親の遺志を継ぎ大魔王を倒し、世界に平和をもたらした。
だが、もとの世界に戻ることはできなかった。
そして、青年は勇者となった。
そこで俺は確信した。この青年が俺の世界の伝説の勇者だ。
この世界に平和をもたらし、母国と城を作った勇者だ。
己の信念を貫き、魔王を倒すことで結果的に崇められた。
俺ははっと目を覚ました。
石板の前に立っている。
眠っていたのかどうかはわからないがとりあえずここから出ることにした。
呪文は使えないので、自分の足で外へ出た。
空は青く澄んでいる。
確か祖先がこの地に来たときは真っ暗だった。
この空も勇者が変えたのか。
俺が勇者のまま魔王を倒していればあの青年のようになれたのだろうか。
己の信念を貫き、魔王を倒せば良かったのか。
空を見ながら考えた。
「今さら考えても無駄、か・・・」
俺は呟き目を伏せた。
俺は青年の墓を後にした。
どうでしたか。
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ではまた!




