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旅騎士の遥かな旅  作者: すらいむ N
3 城塞国ハーバーランド
16/34

惨劇の戦い

こんにちは、夏玉 尚です。


どうぞ。

圧巻の城内。


城内は中央の階段から左右対称になったまさに豪華絢爛な造りになっていた。

だが余計な装飾はなく、洗練されている。


そして静かだ。


城内というのは多くの話し声が聴こえるものだが、この城の一階は恐ろしく静かだった。


見張りの騎士が4人、純白の甲冑と剣を腰に指し槍を手に持って各所に立っているだけだ。


俺はようやく階段に向かい、2階へと上る。



2階には少しばかりの話し声が聞こえる部屋があり、王室だろうと思った。


俺はそのまま王室の巨大な扉を開き、中へと入る。



すると話し声がピタリと止まり、全員の視線が俺へと集まった。


総勢10人。

騎士が6人中央に敷いてある赤い絨毯を挟むように立っている。


そして王が部屋の中心に座り、その隣に王妃が座っている。

豪華な玉座だ。


その2人の横に騎士の装備をしながらも詰所の男と同じく冑を外している若い男が立っている。



「誰だ?」


若い男が剣の柄に手をかけ、俺を睨む。殺気が俺に向けられている。


「国の門番に呼ばれてきた、旅の者だ。」


そこで王が若い男に制止をする。


「下がれ、イヴァン。」


「はっ。」


イヴァンと呼ばれた若い男は一歩下がった。

先程まで向けられていた殺気も消えている。



「ここまで王の権力がすごいとはな。」


俺は小さく呟いた。

この国の騎士たちを統率する王の力量は凄い。俺の母国とは比べ物にならないと何度目だろうか、痛感する。


母国では至るところで遊んだり、居眠りしていたりという兵士が見られた。



「旅の者よ、話は聞いておる。闇騎士とかいう輩を始末してくれたようだな。心より感謝する。」


なんと王は俺に頭を下げた。


「なんと!王よ、こんな旅の剣士風情に頭を下げる必要などございませぬ。」


イヴァンが黙っていられなくなったようだ。


「何を言っておる。国の民が何人も殺されたのだぞ。その恩人に礼を言わずにどうする。」



そこで俺は納得した。

この国の王は理想の王だ。

人望厚く統率力もあり、民を愛する心を持っている。

だから今まで未開の地に広く面しているこの国を魔物たちや、盗賊、山賊の類から守ることができたのだろう。



「ふむ、旅の者よ。闇騎士を瞬時に始末したそうだな?」


「はい。」


「ということはかなりの強者と見てとれる。どうだ、ここにいるイヴァンに勝てると思うか?」


王は少し楽しんでいるような口調になった。


「王!申し訳ありませんがこのイヴァン、旅の者に遅れをとるつもりはありません!!」



「・・・と申しておるが、どうだ?」


イヴァンに再び睨まれる。

だが俺より強いとは思えなかった。


「俺もこの騎士殿に負けるつもりはないです。」





そこで何故か王室が笑いに包まれた。


「旅の者よ、イヴァンはこの国の騎士の中で2番目・・・いや1番強いのですよ?しかもイヴァンはこの広い世界でも屈指の騎士ですの。いずれは勇者様の一行に加わるとも言われております。」


初めて王妃が口を開いた。

そしてすぐに俺は嫌いな人間のタイプだと確信した。



「もう一度聞こう、勝てると思うか?」


王だけは真剣だ。


「俺ももう一度言わせてもらおう。負けるつもりは な い。」



「それでは皆のものよ!中庭の訓練場に集まれ。国の民にも声をかけるがよい。準備が出来次第試合を始める!!」


王の号令と共に王室の人間達は一斉に動き出した。





俺は1人の騎士に連れられ、個室へと向かった。



個室へと着いたところで騎士が口を開いた。


「アンタみたいなやつは初めてだ!王様は訪れた強そうな奴にはさっきのことを絶対言うんだ。大抵のやつは断るんだけどな。」


「そうか。」


よほどイヴァンは強いと言われているんだろうな。



「じゃあ準備してくれよ。装備のせいで負けました、なんて言えないからな。」


俺は既に鎧等の防具は身に付けていたので準備する必要はなかった。


だが肝心の剣をガレッドに預けたままだった。



突然外で歓声が聞こえた。

向こうの準備が整ったのだろう。


「準備はできたかい?あれ、武器がないじゃないか。大丈夫なのか?」


「別に構わない。勝つ手はいくらでもある。」


冑で顔は見えないが、騎士は俺を疑っているようだ。


「アンタ、見え張ったんじゃないだろうな? まぁ、とにかく訓練場の雰囲気は整っているみたいだ。行こうぜ。」



そして俺は訓練場に出た。


再び歓声が起こる。

訓練場の周辺にはとても大勢の人で賑わっていた。



それでも俺のような旅の者を応援する人は少ない。

しかもそのほとんどは


「兄ちゃん、やってやんなー!」


というものだ。





「フン、剣も持たずに俺に勝つというのか。調子に乗りやがって。すぐに潰してやるよ。」


さすがにイヴァンもおかしいと思ったらしい。



「両者準備は整ったか?」


何故だか王が乗り気だ。



「では開始!!!」


そして再び歓声に包まれた。



開始早々イヴァンは躊躇なく切りかかってきた。


俺はするりと避け、背中に手刀を叩き込む。


金属音がした。

どうやら鉄板のようなものを仕込んでいるらしい。


「効かんな」


あたかもイヴァンは俺の手刀の威力が弱いようにアピールしている。


イヴァンは振り返り様に俺の頭を狙って剣を薙ぐ。


俺はしゃがんでそれを避け、今度は脚に体重をかけた蹴りを叩き込む。


またしても金属音。

どれだけ体に仕込んでいるのか。

まぁ、それでここまで動けるのだから筋力はそれなりにあるのだろう。



イヴァンはニヤリと笑い、俺との間を詰めて体当たりをした。



俺は軽く跳んで地面に倒れる。



そこで歓声が起こる。

体当たりが決まっただけなのだが。



俺はゆっくりと立ち上がり、土を払いながらイヴァンを睨む。


「そういや、お前はこの国で2番目に強いと王妃が言ってたな。一番は誰だ?」


俺は体制を直しながら言ってみる。


「俺の弟だ。だがもういない。どこへいったのだろうな、突然いなくなったのだ。」


「どうせ、お前が何かしたのだろう。最低な兄だな。要するにお前はこの国で1番という称号がほしかっただけか?そんな人間が騎士?笑わせるな。」



「うるさい!お前に何がわかる!?そうだ、俺が別の国へと飛ばした!兄より優れた弟がいて良いものか!!幼い頃から比べられて育ってきた俺の気持ちがお前にわかるか!!」


「わからないな。そして知りたいとも思わない。言っておきたいのは それがどうした? ということだ。弟が優れていようがお前はお前だろうが。」


「黙れ!」



イヴァンは懐から何かを取りだし、俺の方へと投げる。



大きな爆発音と共に視界が土煙に閉ざされる。

爆弾か。


視界は閉ざされたが聴覚は健在だった。

剣が降り下ろされる音、方向を見極めて避けていく。そしてその隙を見計らってイヴァンの顔面へと渾身の右拳を叩き込んだ。


「うぐっ!!」


煙が晴れると倒れているイヴァンの姿があった。

歓声が消え、場が騒然とする。


「わかったか?お前では俺に勝てない。」


それでもイヴァンは立ち上がろうとする。

鼻から出血しているらしい。手で押さえている。


立ち上がるとイヴァンはまた懐からなにかを取り出した。


ボウガンだ。

さすがに矢は避けきる自信がない。


「殺してやる、殺してやるぞ!」


するとイヴァンは矢を張り始めた。

矢はたくさんはあるようだ。とても全部は避けきれないだろう。


「イヴァン、お前は魔法を知っているか?」


俺は雷撃の呪文を唱える。

使うつもりなかったが、流石に今は使うしかない。


闇騎士にやったように雷撃を細く鋭くし、イヴァンへと放つ。



閃光と共にボウガンは木片へと変わる。


「い、今のは何だ!?」


どうやらイヴァンは魔法を見たことがないらしい。


「知らないまま消えろ。」


俺は両手を天にかざし、雷雲から雷撃を呼び寄せる。


「ま、待て!!騎士の勝負は剣で行うものだ!!」


「お前が言えるのか?」


「ぐ、ぐぅ・・・。お、王よ!どうか真剣勝負をさせてください!!!」


とうとう王にすがりだした。

見てられないな。


「ふむ。旅の者よ、真剣勝負を申し付ける。魔法は禁止だ。」


王に言われては仕方がない。俺は魔法を中断した。


「ホラ!剣を貸してやろう。大切に使えよ。」


イヴァンは威勢を取り戻し、剣を俺に投げ渡した。



自分の剣でないからか、違和感を感じる。


しっかりと剣を握り、イヴァンの一太刀目を見極める。



剣と剣が交わる。

力はどうやら俺の方が上らしい。


さらに強く剣に力を込める。押し切れる。



だが剣が軋んだ。


そして、砕けた。


予想しなかった出来事に俺を含め、観客までもが声をあげる。


だがただ一人、イヴァンだけはニヤリと笑った。



「これも仕組んでいたのか。」


「なんのことやら。知らんな。」



イヴァンは高らかに笑う。


もはや観客、王までもがイヴァンの仕業に気づいている。

でもイヴァン自身は周りの変化に気づいていない。

もし、このまま勝ったとしてもイヴァンの評判は地に堕ちるだろう。



そんな中、一人笑うイヴァン。


「勝負あったな!俺の勝ちだ!!」


もはや一人称まで変わっている。


剣を振り上げ、俺を頭から両断するつもりだろう。

だがやられるわけにはいかない。



- 粉砕 -



イヴァンの剣は粉々に粉砕した。


驚きのあまり声すら出ていない。



そして俺の手には剣がある。

他人の剣ではなく、俺の剣だ。

ガレッドが作った剣だ。


振り下ろされる直前に観客の中から投げ渡されたものだ。


俺は感心した。やはりガレッドは名工だ。良い剣を打っている。



「死んだ方がいいと俺は思うぞ。」

 

 イヴァンを諭す。


「あぁぁあァァアアァアァ!!!!」


 イヴァンは狂ったように掴み掛ってきた。 



スパンッ




軽快な音が訓練場に響く



イヴァンの顔が鮮血を散らしながら宙を舞い、王の足元へ転がった。



「最後まで見苦しかったな。」


俺は残された体から滴る、どす黒い血を見つめながら呟く。



「イヴァンよ・・・、やはりお前が、お前がソルティを・・・・・・。」


王がイヴァンの首を見下ろしながら呟いた。



観客もまさか死人が出るとは、そしてまさかイヴァンが死ぬとは思わなかったようだ。どうしようもない雰囲気になっている。



「皆の者!!この試合は旅の者の勝ちとし、終了とする!!イヴァンのことは後程改めて知らせる!!」


 さすが王だ。正しい。

王の号令に従い、ぞろぞろと帰る民たち。顔は暗い。



「旅の者よ。」


王が声をかけてきた。


「イヴァンのことは気にするでない。悲しいがこれも現実。認めねばならぬ。ソルティのこと・・もな。」


「俺はどうすれば?」


「そうだな、後程王室に来るとよい。」


「わかった。」



騎士たちもイヴァンの首を抱え、訓練場から姿を消した。


訓練場に残っているのは一人かと思いきや、観客の居たところにガレッドがいた。


「あんまり、気にするなよ。あれはあの騎士が悪いんだ。殺さなきゃいつかお前が殺されていただろうよ。」


「ガレッド、剣、ありがとう」




陽が傾き始めた空には俺のこの世界に対する誤解が映っていた。

 この世界も良い人ばかりではない。イヴァンのような奴もいる。

 

 空に語っても答えは返ってこなかった。




いかがでしたか?


ではまた。

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