類は友を呼んだ
ところ変わってサダルスード公爵家本邸、フリージア自室。
「……」
「な、なんだよ」
にこにこと微笑みながら自身を凝視してくる少女に、ムリフェインの少年がビクつきながら声を掛ける。どこか逃げ腰になっているところを見ると先ほどの捕獲劇が余程恐ろしかったのだろう。だがそんな彼の気持ちなど露知らず。フリージアは少年の座るテーブルへと身を乗り出すと弾む声で尋ねる。
「ね、あの花の手入れってどうしてるの?」
「……は?」
「だーかーらー! ていえんの花、どうやって育ててるの? あなたたちが手入れしてるんでしょ?」
「え、あ、うん。そーだけど……?」
「あのみずみずしい花びら! のびのびーっと広がる葉! りんとした茎! すべてにおいてかんぺき! 教えて、育て方!」
たどたどしい口調ながらも両腕を振り回しながら称賛の言葉をまくし立てる少女を前にして、小柄な少年は目をぱちぱちさせる。
「……怒ってねーの?」
「へ? 何かおこられるよーなことしたの? じゃあおころーか?」
今度は二人して目をぱちぱち。暫く互いを見つめ合った後、今度は同時に小首を傾げる。
「いやほら、悪戯した、じゃん? いっつも人間に悪戯仕掛けてバレたらこっぴどく怒られるからさー。てっきりあんたも怒ってんのかと」
『もう懲りろよ』
パタパタと忙しなく羽を動かしながら話す彼には、当然レンの突っ込みなど聞こえてはいない。フリージアはと言えば興味深げに少年の羽を見つめながら何気ない調子で応える。
「んーん。おこってないよ。いたずらは私もだいっすきだし。あ、そーだ。じゃあ今度いっしょにいたずらしかけよーよ。ターゲットはアザレア。やさしーからめったにおこんないし。どう?」
「乗った!」
『(あぁ、同類だ。こいつ等絶対同類だ……!!)』
途端に瞳をキラキラと輝かせ打ち合わせを始める二人に危機感を感じたレンは、ターゲットが庭師にまで及びそうになったのもあり慌てて声をかける。
『ほ、ほら、そんなことよりフリージア。花の、花の育て方! 聞くんだろ』
『なんでそんな焦ってんの? あぁ、でもそうだったそうだった』
なんとか話を戻せそうでレンは思わず安堵のため息を零す。
「打ち合わせはまた今度じっくりするってことで。ね、それで花の育て方、教えて?」
『(あ、悪戯実行はもう確定なんだ。もういーや、俺知らね)』
唯一の常識人レンも存外薄情者である。フリージアの楽しい事には全力投球という性格を知っているためなおさら諦めが早い。フリージアに加えて悪戯大好きのムリフェインまでいるのだ、止めようもないだろう、と自分に言い訳をしてみる。一方その悪戯大好き少年は羽を使いふわふわと浮きあがると悩ましげに呟く。
「あぁ育て方、ね」
机の数十センチを漂いながらゆったりと腕を組むと少年は言い放った。
「無理だよ」