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彼方へのマ・シャンソン  作者: ツマゴイ・E・筆烏
Cinquième mission 「夕映えの誓い」
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第四章 Gurévič - ouvertüre

第四章 Gurévič - ouvertüre


 温かい抱擁の夢を見た。

 優しい腕に抱かれて、そっと頭を撫でながら、誰かが歌を歌っている。なんという歌かはわからない。けれど黄金色に輝く歌を聴く。世界の美しさを説く様な歌を聴く。

 風吹く窓辺。揺れるカーテンがふわふわと目についた。湖畔の様な美しさが、わからずともに感じられる。ここはどこだろう、と訝しむよりも、ここはなんと居心地がよいのだろう、と心が安らいだ。

 頭を撫でる誰かへ手を伸ばす。小さな小さな手を伸ばす。

 誰かは気づくと、嬉しそうに微笑みを零し、小さな手に自分の手を合わせてくれた。優しい感触と温もりに心が満ちる様だった。

 この人は誰だっけ、と心が騒ぐ。

 光の関係か、顔は影が差し込んでわからない。だけれど、風にそよぐ綺麗な紫色の頭髪には、輝くような銀のラインが散りばめられて、なんとも言えず美しい。

 誰なのだろうか、と瞳が潤んだ。

 思い出せない――ならば、これは自分の理想の幻想か。

 かもしれない。何故ならば、少年の人生で、この光景の様な温もりに出会った事などあるわけがないのだから。

 だけれど似た雰囲気を持つ少女が一人いる。

 黄金色の光景がさっと流れて、気づけば一人の少女の夢を見ていた。

 綺麗な陽光のような茶髪を光に輝かせ、同色の瞳を優しさと温かさに満ちさせながら、どこか困った様に眉を下げ、顔を赤らめさせている。いつも彼女を困らせてしまう。もしかしたら怒らせちゃってるのかもしれない。

 しかし、少年はそれでも少女の傍にいたいと願わずにいられなかった。

 全身で彼女の身体にぎゅっと抱き着いて、豊満な胸元に顔を埋めると、いつもの様に怒った声で少女が叱ってくる。我侭を言うと「ほんと、しょうがないわね」と呆れた様な声で自分の頭をこつんと小突く。

 その温かさが心地よく、遠い彼方を想い馳せ、少年は静かに瞳を潤ませた。

 そうして、少女は頭を撫でながら、優しい声音でそっと呟く。

「――ほら、泣かなくて大丈夫だから」


        1


「おい、ユミクロ朝だぞ、起きてるかー」

 軽く響いた扉の開く音。同時に耳に届いたのは、訊き慣れた教育係、批自棄の声だ。

「わうー?」

 ぽにゃんとした寝ぼけ眼でむくりと起き上がる日向の姿に「相変わらずぽわっとしてんなユミクロは」と苦笑を零す。

 目元を片手でくしくしとこする姿は傍目なんとも可愛らしい。普段アップにしてる青色の頭髪は、今は解かれて腰近くまでの長さがあるのも相まって、どうみても女子にしか見えない光景も批自棄にしてみれば見慣れた光景だ。

 それでも毎度。女子にしか見えねー、と感想を抱くのは彼女にしても常の事だが。

「わう……、エリカはー?」

「いねーよ。毎朝のことだが、ここ迎洋園の屋敷だぞ」

 からからとした女性の笑い声。呆れと感心を含んだ様な声音は、寝ぼけ眼だった日向の脳を徐々に覚醒させてゆく。すると日向は「わう……」と、恥ずかし気に顔を赤く染めた。

 このやり取り、実は毎朝である。

 日向は夢の内容を、完全に覚えているわけではないが、それでも夢にみる光景は二つ程度か。一つは誰か優しい人の夢。そしてもう一つは、ここ最近から始まり遂には一日も欠かさず見る様になったエリカの夢だった。

「おーおー、また新橋嬢の夢でも見ちまったのか? 毎朝文字通り夢中だねえ」

「うー、だって毎日、夢に出てくるんだもん」

「夢ってのは本人の願望だぜYA? それで見るって事は相当お熱ってこった。どうしたキスしてくれる夢でも見たのか今日も。昨日は抱き締めてくれて、一昨日はなんだったっけね?」

「……膝枕で、その……」

 撫でてくれたの、と恥ずかし気に零す。

「好きな女の子の夢で興奮しちまう辺りは順当に男の子だな」

 批自棄の言葉に日向は赤くなった顔をシーツで口元まで隠す。

 恥ずかしい夢を見てしまっている自覚は十分にあるのだから、しょうがない。だが同時にこうなったらいいなという自分の願いでもあるのだから、抑えようもない焦がれであった。

(でも今日の夢は何か、あんまり覚えてない感じだ……わうー……)

「もっと見てたいし……」

「夢で満足してたらつまらんぞ? どうせなら現実で満足してこそ生き物だ。夢通りの事が叶う様に学校で頑張りな。日々逢う事が第一歩だぜYA」

「わうー……わかった」

「うしっ。んじゃさっさと着替えしな」

「はーい。むにゃむにゃ……」

「それと言葉遣いな。YA、新橋嬢と関わってからほにゃんと緩んできてっからな。洋園嬢の前ではキチンと芯を伸ばしとけよ。恋愛は構わねーが、それで仕事をおろそかにしちゃあ執事長に怒られるぜ?」

「わ、わう……わかっ――わかりました」

 コンコン、と小さく咳を繰り返して日向は言われた通りに、意識を切り替える。

 それを聞くと満足そうに批自棄は口角を釣り上げて、いつもの様に朝の開始を告げた。

「よーし、それでいい。んじゃ朝の楽しい勤労タイムとシャレ込もうぜYA」


        2


 朝の楽しい勤労タイムは、そうして始まった。

 迎洋園の朝は早い。主のテティスを除いて、原則従者という職業柄、早起きは基本的な習慣の一つであるというのは、ごく自然な事である。

 それは当然、日向にも当てはまり、彼もまた毎朝六時には起床していた。

「わうっ♪ 今日も仕事頑張るし!」

 従僕服に着替えた日向は開口一番、そう気合を整える。

「また、わうってんぞ」

「わうー、ごめんなさい……」

 口調口調、と批自棄が面白がった様子で指摘した。

 何時からか、表れた少年の素の表情、素の口調はどこか微笑ましく、あどけない。幼さのようなものが残るのは批自棄としては別になんとも言わないが、従者である以上は言葉遣いはしっかりさせておかなくてはならないだろう。

「しかし、早起きが得意ってのは毎朝、感心するぜ。寝起きが悪いと少し困るからな」

「眠りが浅くても結構、大丈夫なんですよね僕」

「そこは微妙に心配になるがな。お前若い身空でぶっ倒れたりしてくれんなよ?」

「きっと大丈夫だし!」

「本当か不安になんな。しかし確かに、早起きは習慣づいてるっぽいよな。この時間帯に起きれるって事は良い事だがよくまあ起きれるもんだ。なにか朝のバイトでもやってたのか?」

「バイトなんかしたら僕の年齢じゃ、け、けーさつが来ちゃうし……!」

「YA、どんだけ警察に恐怖意識抱いてんだよ」

 さながら縮こまる子犬のごとし。ぷるぷると震えて涙目な日向に批自棄は困った汗を伝わせた。話を聞く分には父親の無茶の後遺症だか、勘違いによるものだとか諸々ありそうだが、そこも修正しなくてはならないのではなかろうか。

「えと、まあ早起きなのはバイトがあったとかではないんですけど」

「って事は朝のジョギングとかなにかか」

「それは起きる様になってから、時間潰しにするようになりましたね」

「ほー。じゃあ理由は別にあるわけか」

「はい。そんな大した理由じゃないですけど」

 そう言いながら日向は微かに顔を伏せていた。

 前をゆく批自棄からは見えないままに、思い出すかのようなか細い声を零す。

「朝の水は冷たいから、ヤだったの」

「……ん?」

 批自棄は小首を傾げた。

 早起きの理由で、なぜそんなものが浮かび上がるのか。そこに疑問を挟まざるを得ない。批自棄は「なんだ今のどういう理屈――」と、尋ねかけるが「わうー、日差し眩しい」と窓の外を見ながらどこか楽しそうにする日向を見ると「ま、いいか」と肩を竦める。

「どうかしたんですか、ひじきさん?」

 日差しを浴びたからか、少しスッキリした様子で声もよく通っていた。

「いんや、なんでも」

「そーですか? それにしても、今日も快晴ですね。いいお天気です!」

「まーなー。洗濯物が乾きやすいって点ではありがてーけどよ。おかげで花壇の水やりは仕事量増大ってんだから肩がこるぜ」

「僕は水やり好きですよ? 花壇のお花綺麗ですし」

「そりゃまあYAはな。四番の花壇の花に夢中なわけだし」

「わう、だってお花綺麗ですし!」

 ぴこぴこっと日向は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 それは少年にとって、朝の嬉しい一時の始まりだったからだ。


        3


 迎洋園の邸宅の花壇ともなれば、まず規模が違った。果たして何名で廻れば済むのか。おおよそ一邸宅の規模ではなく、どこぞの公園の範囲である。膨大な花々咲き誇る花壇の中で数名の従者である同僚が水やりに奮闘していた。

 幽の倉沢玉喪は、どういう原理か相変わらず日向は知らないが、浮遊を使って上から水まきしており、我那覇蹂凛もまた、特性バズーカ型水遣り器で豪快に花壇を水攻めしていく。

「ひじきさん、アレちゃんと水かかってるんでしょーか……」

「わからん。だが、なんだかんだ育ってる辺り、まけてるんだろ多分」

 花の水遣りは確か根元の土にやるもの、と耳にする日向は不思議に思うも、育っているようだしきっと問題はないのだろう。そんな奇天烈な水遣り組と対比して、執事長と従僕上杉龍之介の組は実直に水まきを熟している様子だった。

「さて、私らもサクッと済ませようぜYA。ちんたらしてたら、朝飯が遅れる」

「あ、はい。わかりました頑張るです!」

「うーし、その意気だ。んじゃ始めようか」

 二人はそうして、仕事を開始する。

 広大な面積の特性上、人の手でやるには限度があり、自動水まき機が稼働する花壇もあるが小さめの花壇では従者がそれぞれ仕事の一つとして熟していた。ホースを使う事もあれば、如雨露も用いるケースもあり、ここでは如雨露を使う。持ってきた荷台の上には複数の如雨露とバケツが用意されており、一々水汲みにいかなくていいよう準備しておいた。

 そこから批自棄と効率的に分担する形で作業を進めてゆき、一番、二番、三番と大きな花壇の仕事を完了させてゆくと、残る四番で日向は「わうっ♪」と、嬉しそうな声を零す。

 四番の花壇にもまた、色亜鮮やかな花が咲き誇っていた。

 迎洋園の数ある花壇の中で、日向はここを一番好んでいる。

「わうー、今日も綺麗ですねー、ひじきさん!」

「んーそだな。快晴だし、やっぱ青空と花は映えるもんだ」

 んー、と背筋を伸ばして気持ちよさげに批自棄は零すと、さてと手にした如雨露を花壇の花々へと向けて水を注いでゆく。

「ほれ、ユミクロもきっちり働け。四番の花壇は、お前の管轄なんだからよ」

「はいです!」

 頷いて嬉しそうに日向も水やりを開始する。

 淡い紫色の小さな蕾を持つ花々が水を浴びて陽光に煌めくさまは、なんとも言えず麗しい。

「相変わらず、ヒースがお気に入りだなYAは」

「わうっ♪」

 犬の尻尾がぱたぱた動くのを連想する程、無邪気に日向の様子は嬉しがっていた。

 日向が迎洋園の屋敷で仕事をするようになってから、この水やりの仕事も当然含まれていた。そうして、数ある花壇の中で日向がこの花を好んだ事から、批自棄はここを任せるようになっている。

(わけだが、まあ)

 好きだねぇ、と批自棄は呆れる程に思っていた。

(ユミクロが、一番綺麗だの懐かしい匂いだの言ってこのヒースの水やりをやりたがったわけになるんだが、とことん好きだよな……)

 どうやら花に詳しいわけではない様子なので、ヒースの別名を知らないままに水やりをしている事から彼女は関係ないのだろうが、それでも無自覚でそんな行動に移るあたり、

(本能って感じかね。ユミクロはどうにもそこが強いみてーだからな)

 潜在的に惹かれまくっているのか、何なのか。

「好きだよなあ、呆れるくらいに」

「わう? ひ、ヒース好きだけど、そんな呆れられちゃうくらいでしたでしょーか僕……?」

「いんや、別の話だ。気にするな」

「わーうー?」

 よくわかんない、と小首を傾げる日向。

 そんな姿に苦笑を浮かべながら、批自棄はおもむろに口を開いた。

「それよか暇だし、話でも聞かせてくれや、ユミクロ。学校はどうだ?」

「わう、凄く楽しいです! 行かせてくれた主様に感謝してますもん♪」

「はは、そりゃ何よりだな」

「うんー♪ 友達がたくさん出来たり、部活でいっぱい絵を描けたりだし!」

「おかげで迎洋園にあるだけあったアトリエが汚れる様になったからな」

「わ、わう。ごめんなさい……!」

「いいさ、気にすんな。アトリエなんて汚れてナンボだ。洋園嬢も、お前の絵見て喜んでたぜ? 本当に絵が上手いんだな、YAは」

「うん。絵は僕が誇れることだし!」

 わうっ! と胸を叩いて自信を見せる日向に批自棄は「ほう」と感心する。

 謙遜せず、堂々とそう言った辺り、本当に誇っているという事だろう。下手に謙遜されるより余程心地よい。

「けど、やっぱり一番はエリカに出会えた事かな! わうー、絵はどこでもやれるけど、エリカとは学校行かなかったら会えなかったし……あんな素敵な娘と出会えた事が今一番、僕が嬉しいなって思う事なんだ、ひじきさん!」

「はは、そうか、そりゃ何よりだな。恋愛ってのは、青春を謳歌する重要なものの一つだし、そんな風に思える出会いがあったてんならいい事だ」

「うん♪ 今度、主様にお礼言うし!」

「ようし、ひじきさんレクチャーだ。それだけは止めろ」

「わうー……?」

 お礼言っちゃいけないの? としゅんとした目が返ってきた。

 批自棄は絶対ダメだ、と目で返す。わう……、としょげた声が返ってきた。そしてなんでだろー? と頭に疑問符を浮かべ始める日向である。

(コイツがもっと鋭かったら、話が早いんだけどなあ……)

 批自棄は知っている。主である迎洋園テティスが日向に恋慕していることを。

 理由は全く知らないが、雇用した時からそうらしい。

 問題は日向がそれに全く気付かず、あっという間に別の少女に陥落しきった事だろう。あまりに見事に落ち切ってしまって、清々しいほどだ。

(ま、洋園嬢には悪いが、本人がこうだし、私も新橋嬢との仲を応援するスタンスなわけだが……かといって、お礼を言わせるわけにもいかんしな)

 不憫この上ない結果しか待っていないのだから、なんとしてでも言わせるわけにはいかないだろう。何時かものの弾みで満面の笑顔で言ったりしそうで不安は絶えないが。

「ひじきさん、お礼どーしてダメなんですかー?」

 そう考えていたら日向がダメ押ししてきた。

 まあ、確かにお礼を言うのをダメと言われたら謎しかないだろう。批自棄は「とにかくダメだ」と言い張るしかない。日向は困惑しながら、

「わうー、エリカに出会える機会くれて、ありがとーございますって言いたかったのに……」

「洋園嬢が永久に石化して戻ってこなそうなお礼はガチで止めてやれ」

 しかしまあ、と腰に手を当てて批自棄は楽し気に苦笑を灯す。

「本気で新橋嬢にべた惚れだな、YAは」

「わう……っ、だ、だって好きなんだもん。大好きになっちゃったんだもん……」

 わうー、と日向が真っ赤な顔で下を向く。

 普段好き好き言ってる割に、しっかり恥じらいは残っている様子で人から言われると真っ赤になったりはするらしい。ただ、それでも好きの方が強いのか、日向は「だって、エリカ、本当に素敵で綺麗なんだもん」と陥落を口にする。

「YAは新橋嬢のこと、いろんなとこが好きだもんな」

「だって、エリカは……なんていうか好きなとこばっかあるの。こんな僕のこともたくさん面倒みてくれるくらい面倒見いいし、明るくて真面目で誰に対しても優しくて陽だまりみたいに温かくて、性格がいいのはもちろんのこと、僕はエリカの容姿もすごく好みで仕方ないんだし。綺麗な顔立ちも、鮮やかな茶髪も、凛とした目元も瞳も、桜色した唇も、スタイルだって抜群で肌スベスベしてて、肩綺麗で仕方ないし、美脚だし、腰も細いし、おっぱい大きいの大好きだし……匂いもすごく好きな匂いしてるんだもん……」

「おーそうかいそうかい。性格良くて、男好みするような美人だもんな新橋嬢は。ただ、それ新橋嬢の前で言ったら真っ赤になって怒られるからな?」

「わう、前に言ったら一回殴られたです……」

 すでに手遅れだったらしい。素直な日向のことだ、包み隠さず漏らした事だろう。

 新橋嬢も大変だな、とつくづく思う批自棄である。

「僕は、エリカの内面も好きだけど、容姿も好きなのは間違いないもん。……容姿も好きってなるのアレでしょーか、ひじきさん? おっぱい大好きだし、エリカの顔立ちとかすごくきれいで好みだし……」

「ん? なわけねぇだろ普通でしかねーよアホ」

「そ、そーなんですか?」

 くぁぁ、と批自棄は欠伸交じりに口を開いた。

「私から言わせりゃ、外見を重視しない奴なんざいねぇって事だ。よく、大切なのは中身だって言葉がある。それは正論だ。外見良くて中身が屑って事例はあるからな」

 ただなユミクロ、と間を置いて、

「どうしたって容姿と好意を切り離せるわきゃねーんだよ。恋愛ってのは大抵、中身から入る事はまず無いからな」

「そういうものなの?」

「大概はな。ユミクロ、お前は初対面で相手の内面が全部わかるか?」

「ううん。全然わかんないです」

「だろう? 全くの初対面。その状態でこの人の心の在り方に自分は惹かれたんだ――なんつう文面が使われる事はまずない。テメェ、その人と何年一緒にいたって話だ」

「そ、それは確かに……!」

「そもそも外見でまず好きになること自体が普通で全く悪くない。まず見た目で、容姿で好きになるのは当然の帰結だ。絵画、動物、小物、ぬいぐるみ――なんだってまず、そいつが見て好ましいと感じたものに興味が湧くんだから、それが恋愛にも関係するのは自然なこと」

「わうー……」

「例えるなら、音楽がいいか? ロックが好きな奴、演歌を好む奴、クラシックを好む奴、人の好みなんざ千差万別だろ? どこまでいこうが、人は自分の好みからは逃げられない。よく、タイプじゃない相手と付き合って周囲に驚かれたって事例もあるが、それにしたってそいつのどこかに愛嬌だか何だかを感じたはずだろうよ」

「愛嬌、ですか?」

「そーそー。そうだな……一概に世の中イケメン美少女がモテるとも言い切らん。例えばパンダみたいな感じがするずんぐりな男が好きとか、クマみたいな強面が好みとか、馬が好きなら馬面に惹かれるとか、特殊な例で言えば脂ぎったおっさんもあるか。男もデブ専とか、ブス専とか一般的な美とは着眼点が違う奴がいるしな。容姿の好みなんざ個々人の差で大分異なるもんだ。んで中身は酷すぎなけりゃ大抵、受け入れられるわけだしな」

 空になった如雨露を荷台へ戻し、次の如雨露を手に取りながら。

「そんな具合に、恋愛はまず相手の容姿で入るのが普通だ。中身なんざそのあとでいい」

「わうー……? でも、それ外見だけしかまだ見れてないわけですよね?」

「おう、その通りだ」

 あっけらかんと批自棄は如雨露片手に頷いた。

「言ったろ、中身なんざそのあとなんだよ。まず外見の好みで惹かれて、それで中身が違った違わないなんざ後の話だ。それに世の中、性悪女に惹かれるダメ男、ヤクザどもの乱暴気質に惹かれる女、そんな具合に容姿で惹かれ、中身が好みかはソイツ次第さ」

「そーいうのもあるんですね……」

「ああ。それになユミクロ。端的な話だが、イケメンってだけで女は食いつかないんだよ。同様に美少女ってだけで男も食いつかない。男も女もバカじゃねぇ。中身が伴わない奴が無造作にモテるほど、世間ってものは阿呆じゃない」

 感心深げに批自棄の言葉を静聴する日向に向けて、なおも批自棄は述べる。

「例えばイケメンだが、浮気を繰り返す様な輩は大抵の奴が願い下げだし、一人を決められず紆余曲折する優柔不断は好まれない。美少女だが裏で同級生をはぶり、詰る様な性悪女も異性同性問わず嫌われる」

「……うん、当然です」

 微かに双眸をすっと鋭くさせ、日向は首肯する。

 確かに顔が良くても、それで素敵な人と巡り合えるとは露ほどにも感じられなかったからだ。

「だからユミクロ。YAは今挙げた事例なんかと比べるまでもなく――新橋って女の子に対して外見も中身も好きになっちまったんだろう? 外見も中身も伴っている。そんな女に男が惹かれない方がよっぽどおかしい」

「はい。とっても素敵で、綺麗な娘なんだエリカっ!」

 語るに嬉しそうに日向は可憐な笑みを浮かべた。

 脳裏に浮かぶ少女の姿。恋慕し愛慕する花に焦がれて止まない想いは否定しようもなく、今なお萌芽し大輪を咲かせ続けているのだから。

 そんな恋する少年――いや、乙女っぽいな……と見た目、考えもしたが言わぬが本人のためだろうと苦慮し批自棄は仄かに微笑ましい気持ちを抱きつつ、言葉をつづける。

「そう。それが自然な流れなんだよユミクロ」

「自然な流れ?」

「おお。今のYAみたいに、触れ合って内面を感じ、より好ましいと思うか好ましくないと感じるか。それが大切な要因なんだよ。その前提に外見で好きになることに悪さはない」

「触れ合って……感じ合う?」

「ああ。まず容姿で恋をして、次に中身に愛を抱く。そこから想いを育むのが恋愛だ」

 私はそんな風に考えてる、と批自棄は厳かにそう零す。

「恋と愛ってのは別物に近い。近くて遠い。だが、どちらにも言えるのは綺麗であり、同時に汚さも併せ持つ――矛盾してるようだが、真実だ。綺麗なものと、汚いものと、どっちか片方だけを信奉する様では恋も愛も語れない。相手の醜さも良さもその目で見なけりゃいけねー」

「わう、むずかしーです……」

「はは、だろうな。本気の恋は誰もが何時かきっと見つけられる。真実の愛は誰もが何時かきっと気付けられる。だが、そのどっちも生憎と若造にゃ語るに早い。人生駆けて、その先にやっと理解するようなもんだ」

 だからんな気にすんな、と批自棄は軽く呟いた。

「YAは、まだ始まったばっかなんだ。私が先に告げた内容全部。小難しい理屈はいらねぇ。難儀な事情も横に置いとけ。若造らしく、恥の一つも晒して、見栄の一つも張って、粋に生きてけ」

「……」

「……どした?」

 日向のじーっと見つめる視線に批自棄は不思議そうに柳眉を潜めた。なんだこの視線は。

「……ひじきさん、今何歳なんでしょーか?」

「ハッハッハ、そりゃあ私にもわかんねーな!」

「むう、誤魔化されましたー」

「誤魔化してねーよ、わかんねぇし。つか、女に年齢訊くと怒られるから、気をつけろよ? 私は気にしねーけどな」

「わう、気を付けます。それで、あの……ひじきさん。ひじきさんは恋した事あるんですか?」

「ん? 知らね」

「わう、その割にすごいつらつら語ってたんですが……」

「まーな。私なりの理屈、思考――ま、自論てやつだ。なんでそう思うのか、なんつったら私だからとしか言いようがねぇが。まあ、アレかね」

 静かに空を仰ぎ見て、批自棄はどこか寂しそうに口を開く。

「私は記憶がありゃしねえ。なら、その記憶があった私が誰かを好いていたりしたのかもしれないが――それも今の私にゃわからん話だ」

「わう……⁉」

 その言葉に日向がびっくり仰天する。

「ひじきさん、記憶ないの……⁉」

「ん? おー、そういや、ユミクロには話してなかったか。ねーぞ、さっぱりとな」

 批自棄は胡乱げに頬をぽりぽり掻きながら、

「まーちょい昔の話だ。そもそも迎洋園に私がいるっつーのも、洋園嬢の祖父のヤバい場面に遭遇して関わっちまって、気づけば何か助けてたって具合でなー」

「す、すごいですねひじきさん……!」

「で、なんかお礼がしてーって言われたもんで、寝床と働く場所とメシ寄こせって事を要求してメイドになったわけだな。まあ、メイド服たりーんで、裂いたら怒られたけどな」

 ボロッ、と所々裂けていて、スカートなどスリットのように露出しているさまを見て日向は赤くなることなどなく、そのまま、やっぱり自分で破いてるんだ……と、諦観した。

「始めは恩人に従者などって敬われたけどな。まあ、適当に過ごしてたらいつの間にか呆れられる様になったり、ツッコミ喰らったりまあ垣根は消えたな、どんなもんでえ」

 ぽちょーん、と汗を浮かべ日向は苦笑するほかにない。

 だがそうか、と日向はしんみりしてしまう。批自棄には記憶が無いのか、と切なく思った。だから歳がわからないとも告げていたのかと納得する。そして何よりも、先ほど彼女が零した通りに――、

(誰かを好きになってたとかも……わからないんだ)

「ひじきさん……」

 それだけ聞くと、批自棄も相当に辛い背景がある。日向は辛そうに眼を潤ませた。

 だが、そんな日向の額をぺちっと叩くと、

「ハ、なーに朝からしんみりフェイスしてんだ辛気くせぇ。いーんだよ、私の事は。今別に誰か好きになってるわけでもねーんだしよ。それよか今は、お前のこったろ」

 批自棄はニッと不敵な笑みを浮かべて日向へ振り返る。

「YAは今恋している。恋に恋してるんじゃなく、新橋嬢に恋してんだ。がっつくわ甘えるわ、とんでもねーくれー行動力が大変な事になってるが、その恋の性質は間違いないと私は見てる。ま、思春期男子の性質も当然含んでるが、それも自然なこった」

「うん……」

「相手のどこを好きになってるかも、お前は自覚してる。容姿を、性格を、相手全部を恋い焦がれてる事を、お前は自己認識出来てるんだから問題ない」

「でもひじきさん。あの、さっき言ってたけど……中身から好きになるとかは無いんでしょーか?」

 日向は自分を高尚に捉える事は出来ない。

 始まりの出会いでは、エリカの顔を見る事が出来なかった。言葉と声、優しさと温もり、そうした内面的な温かさに触れた――が、それは優しい人だと感じる部分で留まっている。

 それが恋へ変わったのは、彼女の内面に更に触れたから。そして彼女の容姿の美しさにも心奪われたからに他ならない。心も体も、好きにならざるえない程に日向にとってエリカという少女は魅力的に映っているのだ。

 ただそれゆえに中身から好きになったとは日向には言えない。

 中身も好きだが、容姿も好きだ。どちらが先かとは自分でも判然としない。気づけばエリカの全部に恋い焦がれていた――それが日向の真実である。

 批自棄は、それはだな、と肩を竦めて。

「そういう例に収まらないのは、さっき言った通りに、長い間知り合っている関係性くらいだよ。幼馴染なんかだな。互いに分かり合っているからこそ、育める関係だ。二カ月そこらで知り合った関係は、中身で恋をするなんて大人びた理屈はまだ早い。下心あっての、起因だろうが恥じるな。自分はお前の容姿が好きだと胸を張れ。今ではお前の心も好きだと自信を持って想いを誇れ。――私は、そういう恋路をYAに期待するとするさ」

「……」

「どうだ? まだ告白には早いだろうが、ユミクロ。お前はそういう言葉を胸に誇れるか?」

 試す様なニヤッとした不遜な表情。実に彼女らしい不敵な笑み。

 ああ、これが親不孝通り批自棄なのだと感じ入る、彼女らしい鼓舞だった。

「――そんなの当たり前」

 だから日向は真っ赤な表情だが自信を持って即答出来る。

「エリカの全部、すごく大好きっ!」

 無垢に可憐に表情を綻ばせ、弦巻日向は確かに頷く、彼の中の真実なのだから。

 その表情に満足げな顔をみせると、トンと拳で彼の胸を小突く。

「その意気だ。そういう真摯な気持ち向け続けてな。好きな女を射止めたいってんなら、飾るな、格好つけろ、その女の前ではな」

「はい! ……あ、でも僕凄くエリカに甘えちゃってる……」

「まあ、別にそこもいいさ。甘えるなとは言わんしな。つーか、イチャイチャラブラブの一つもなけりゃそりゃ嘘だ。恋人、夫婦間の中でそれがなきゃ関係なんざ破綻してるだろが。つーかそれねーと夫婦とか離婚案件だしな。年間、何組の夫婦がそれで離婚すると思ってやがる」

「え、そ、そーなんだ……⁉」

「ああ。つってもまあ、結婚とか考えるのは早すぎるから気にするな。今目指すべきは恋仲になるってことだしな」

「う、うん。頑張るし……!」

「そっか。なら、まずは告白だな。いつになったらやる気なんだYAは?」

「わうー、まだ決めてないです。タイミングが来たら、その時言おうと決めてるんだけど……」

「ふむ。まあ、そんなもんか」

「それとやっぱり不安でたまらないから……少しだけ、ヘタレちゃってるし」

「ほう?」

 話してみな、と別の花壇に水をやりつつ耳だけは日向の言葉へ傾ける。

 日向は少し間を置いた後に、ぽつぽつと呟きだした。

「僕はエリカ大好きだけど……エリカはきっとまだ僕の事、意識なんかしてないだろうし……。なによりあんな綺麗な娘を好きになってもへーきかなって思う事もあるし」

「そりゃあどういう意味だ?」

「……いつもね。迷惑じゃないかなって思う事はあるんだし。でも、僕は恋愛なんか経験ないし、やれる事は思いのたけをぶつけるくらい……ううん、恥も外聞も取っ払って言ってしまうなら、僕は凄くエリカと一緒にいたいんだ」

「なるほど。それで?」

「うん。それで、一緒にいたいけど、それは僕の方からの一方的な感情だから、エリカに迷惑かけちゃうなって気持ちは当然あるんだし。でも、抑えきれないくらい好きなの。エリカが目につくと駆け寄って飛びつきたい。エリカ好きって言い続けたい」

 そんな日向の言葉を聞き終えると批自棄は静かに「なるほどな」と頷いて返す。

「要するに、ユミクロはそこが怖いわけか。自分が好きになって平気なのか。告白してもダメなんじゃないのか。――そういう、誰しも抱く不安っつーやつだな」

「うん……でも、エリカは本当すごい素敵な娘だから……」

「んー、フィルターが、かかってるのは、まあしょうがねぇか」

「フィルター?」

「おお。YAは実物以上に相手を美化してる部分があんのさ。新橋嬢が美人じゃねーとか、素敵じゃないって事じゃないぜ? お前がちょい理想を強め過ぎてるんだ」

「……わう、エリカに圧しつけちゃってるのかな、僕……」

「かもな。けど、それも普通だ。好いた相手を人よりよく見えてしまうってのも、当然の話だろ。だからそうだな――私から言える事は少ない。お前が好いても平気なのかという事も告白してもダメじゃないかって不安も、お前がいずれ自分で納得して乗り越えるべき事だ」

 批自棄は水やりを終えると、ぽんと如雨露を軽くたたいて、

「だからその時だろうな。そういったもの全部に納得して、乗り越えた時に多分、ユミクロの目にしっかり映るはずだ。恋した相手の――いや、これはいいか」

「わう? 今のすごく重要そーだったのに……」

「おー、重要だぜ」

 なら、と教えてほしそうにする日向に対して批自棄はぴっと告げる。

「そっから先は、お前の目で確認しな。その時、廻りくるその瞬間が訪れたなら、ユミクロに今の言葉の先がわかることだ」

「言葉の先?」

「ああ。それを見つけようと努力する事が大事なんだよ。わかるか?」

 日向は、普段よりもずっと穏やかで優し気な批自棄の瞳を見て問いかけようとした言葉を閉じた。頑張れ、と言われている気がして。

「……ん。多分、なんとなく、だけど」

 僕バカだから不安だけど、と零すと「はは、そりゃ大変だな」と可笑しそうに批自棄は微笑みながら、一度ゆっくりと頭を縦に振った。

「けど、大丈夫そうでもあるな。ならよしってことにしとくか」

「うん。頑張る。エリカが好きになってくれるよーに頑張るし!」

 日向がそう断言すると満足そうに批自棄は再度頷くと、ぴっと右手の人差し指を立てると、

「最後に二つだけYAに尋ねておくか」

「何をでしょーか?」

「あのな、ユミクロ。世にリア充なんて呼ばれてる輩は、なんでそう呼ばれてると思う? 恋人が出来る奴と出来ない奴の決定的な差は何だと思うよ?」

「わう? うー……」

 日向は思考する。

 リア充――確かリアルが充実しているという意味のネットスラングであり、要するに現実世界において交友関係、恋愛関係、対人関係、勉強運動諸々が良い結果を生み出している人を指す言葉――のようなものと聞いている。

 そして恋人が出来る出来ないの差と言うと……、

「別に顔がいいから、とかそういう理由は答えにならねぇぜ?」

「わう、そーなんですか?」

「あたぼうよ。いやまあ、理由として強いけどな。顔がいいってのは普通に利点だ。だが、私が求める回答はそこじゃない」

「っていうと、よくわかんないです。恋人の有無は告白次第でしょーし……」

「はは、正解だ。流石、YAだな。そっちはよく理解ってやがる」

「わう?」

 からからと笑った批自棄の言葉に日向は思わずきょとんと眼をしばたかせた。

「あのな、ユミクロ。リア充がリア充足る由縁はさ――努力を続けたからだ」

「努力?」

「ああ。努力だ。何の嘘偽りもなく、それが汚かろうが高潔だろうが、努力を怠らなかったからなんだよ。大小差はあれど、努力を怠った奴は存外普通に転落してくもんなんだぜ? だが、努力してきた奴は這い上がれる気力を持つ。食い下がらず戦える胆力を持つ。――リア充と呼ばれる奴らは何だかんだ言って踏ん張ってんのさ、人生を」

 相変わらず批自棄らしい豪胆な内容だった。

 だが、しっくりくる。現実に充足感を感じる人々は確かに、生きる日々に奮闘を重ねてきていると日向は思った。事実、知り合いにそういう人物は多い。

「大それた努力とかじゃあない。例えば毎日筋肉痛にむしばまれる様な過酷なトレーニングをしてる奴がって話しじゃないぞ? 微々でいい。僅かでいいんだ。一日に腹筋とかを欠かさずやるようなもの。それくらいで結構現実ってやつは充足していく要素を持つもんだ」

「小さな努力って事ですか?」

「そうだな。そういう事だ」

 んで、と一拍間を置いて、

「恋人が出来る出来ないの条件。んなもんは簡単だ。告白したか、しないか。それだけのこと」

「やっぱり、そーなんですか?」

「ユミクロはこっちの方がわかりやすかったみたいだな。ああ、それだけだ。恋仲なんてな――棚から牡丹餅はありえねぇんだよ。告白せず、ただ待つだけ。何時か自分を、何もしてないのに気づけば好いてくれて、気づけば告白してくれる――そんな幻想がありえるか、バカたれ。特に男にそう言える」

 へっ、とかなりバカにしたような表情で批自棄は断言した。その顔にぽちょーんと汗が頬を伝い頬をひきつらせる日向である。

「恋人が出来ない奴ってのは、行動を起こした事が無い奴が大半だ。恋人ってのはイコール別の命だぜ? 思考を持つ別生命だ。複雑難儀この上ねぇ。行動を起こさない奴は、高校生になろうと大学生になろうと、恋人なんぞ自然に出来るものじゃあねーのさ。恋人が自然に出来ると思ってるようでは、絶対将来独り身になっちまうだろーよ」

 若干欠伸を噛み殺しながら、

「恋人がいる奴の大半は、どんな形であれ想いを伝える努力をした連中だ。お前が好きだ、君に恋してる、付き合ってくれ――ま、なんでもいい。なんでもいいから、そいつを恋人にしたいと、なってほしいと行動を起こした連中なんだよ」

「わう……」

「ユミクロも、恋心を自覚した今なら想像つくだろ?」

「なにをでしょーか?」

「王道だが、体育館裏に意中の相手を呼び出した奴の気持ちってやつがだよ」

「……あ」

 日向は目を見開いて、その言葉を理解する事が叶った。

 体育館裏。好きな相手を呼び出す。

 果たしてそこにどれだけの想いを、どれほどの緊張を伴うのだろうか、と。自分がエリカと同じシチュエーションになったのなら、それはきっと、

「……凄いドキドキする。っていうか、絶対物凄い勇気いるし」

 顔を真っ赤にしてこくりと唾を呑み込んだ。

 自分にそれが出来るだろうかと、心臓が張り裂けそうになるほどに。そんな日向の姿を見て満足そうに批自棄は頷く。

「だろう? 恋人を作った奴ってのはさ。どんな形であれ、それを乗り越えてんだと私は考えている。それが恋人を作れる奴と作れない奴の差――小さな勇気ってやつだな」

「小さな勇気……」

「だからなユミクロ」

「は、はい」

「ちっぽけでもいい。YAもそれを胸に秘めとけ。自分と別種の思考と理念を持つ命一つ――男一人、女一人。その存在一つ射止める事がどんだけ手強いか頭にとどめておきな。恋愛ってのは世界で最も難儀する命題だ。しかし至上の命題でもある。――だからこそ、多くの老若男女はそれを人生の命題とし生きてゆくのさ」

 そして最後に批自棄はいつものように不敵な笑みを携えて、

「頑張れよユミクロ。お前が好いた新橋嬢ってのは、その至上の命題なんだと。最も難しく、最も愛しく、最も簡単な真実を秘めるが故に、最も解き明かしたい――【新橋エリカ】、それがYAの命題だ」

「……」

「おんやあ? 臆させちまったか?」

「……そんな事ないです。むしろ、うん。気持ちがもっとしっかり定まった気分だし」

 日向が力強くそう答えると「ならよし」と批自棄は口角を釣り上げた。

「だったらもう、自分が好いていいとかどうとかくだらん問答は止せ。恋なんざ、するもんじゃない。――恋なんざ勝手になっちまうもんだ。抑制なんて訊かない一生患ってく永久の病みてーなもんよ。だから一生患って生きてゆけ。この世界で唯一、ずっと抱えられる、万人が一生抱えていきたいと願う病が、恋愛なんだからな」

「――はいです!」

 日向は清々しい想いを胸に頷く。

 気付けば胸のもやもやはすっと晴れ空に溶けていた。呼吸するだけで、心地よい。身体は恋と言う病に冒しつくされ手の施しようはとうにない――だが、それでいいのだと理解する。

 批自棄は最後の花壇に水を撒き終えると、残った如雨露をひょいと日向に手渡した。

「朝っぱらから人に長々ご高説垂れ流させやがってからに。キャラじゃねーんだよ、んとに面倒かかる後輩だなユミクロは」

「えへへ、僕はひじきさんが上司で良かったって心から想ってるし!」

「んな恥ずかしいセリフは私相手じゃなく、新橋嬢だけにしとけ」

 少しだけ照れたのか、ふっと顔を背けると「さて」と呟いて、

「んじゃ、学校行かないとだし、片づけてさっさと戻るぜー」

「わかりましたー♪」

 言って元気よく駆け出す日向。朝はこのくらい元気じゃなきゃいかんよな、と批自棄が振り向いた顔をそっと戻しかけたその時、ふと漠然と何か嫌な予感が過った。

「あー、バケツ重いし、転んだりしねーよう気を付けろよ、ユミク――」

 バシャッ。どべちゃっ。……ふぇっ。

「……」

 さて、と批自棄は問答した。いや、問答するまでもないのだが、問答したくなった。なんだろ今の音、とか思ってふっと乾いた笑みを漏らす。

 わう、わううう……!

 すすり泣く様な少年の鳴き声が全てを如実に語っている事を理解しながら、批自棄は静かに後ろを振り向く。するとそこには、ぶちまけたバケツの水の上に体全体を突っ伏して涙を浮かべる日向の姿があった。

「……バケツ落として、その上に転んだな?」

「……うん」

「……」

「……」

 なんとも言えない沈黙の末に批自棄は重々しく嘆息を零して、

「……時間は平気だから、風呂入って綺麗にしてこい」

「……わかりましたぁ……」

 日に一度は確実に何かやらかす日向に対して批自棄の懐は実に広々としていた。従者服がまた汚れてしまった事を嘆きつつ、片づけを行う小柄な少年の後姿を見守りながら、

「恋路も前途多難じゃねぇといいんだがなあ……」

 迎洋園家一のドジっ子の称号を手に入れつつある日向の恋愛事情に関して深い心配は拭えない批自棄であった。


        3


 迎洋園家大浴場。

 かの迎洋園ともなれば、もとい大金持ちの家ともなれば、相応しい浴場が存在するのは当然のような事だった。一流旅館にも負けぬであろう荘厳なお風呂場に天然の温泉。初めて入浴した時の身体を包み込む、この温かさが日向はたまらず天国にいるような気分になれる程である。お風呂の経験が少なく、水浴びくらいしか体験のなかった日向からしてみれば贅沢三昧という他にない。

 そんなお風呂に今は一人。独り占めだ。極上の贅沢である。ついた汚泥もしっかり洗い落として身体も清らか、完璧わう! な気分だ。

「わうー……♪」

 湯船に首から下を全て静めてのほほんと日向は鼻歌を歌う。

 反響する自分の声が面白くて、気分きままに歌を紡ぐ。そんな日向だったが歌いながら、ぴくっと何か反応をみせる。

「はっはっは、愉快な事になっているな上杉も」

「愉快なことではないんですけどね……」

「まあ愚痴くらいは訊いてやろう――と、」

 壮年の男性は、ふと風呂場にいる先客に気付くとにこやかに笑みを浮かべた。

「おや、楽しそうですな日向君」

「あ。バトラー執事長。上杉君も」

 浴場の床をぺたぺたとした音を響かせ、二人の男性が姿を現す。上司であるバーガンディ=バトラーに、同僚の上杉龍之介だ。

「相変わらず綺麗な歌声ですな」

「自分も同感です」

「わうっ、ありがとーございますっ」

 二人の賛辞を嬉しそうに日向は表情を綻ばせた。

「歌声を聴いていたいが、まずは体を洗わんとな。上杉、お前も」

 バトラーがそう促すと、二人は揃って一度、シャワーのある方へと歩いていった。日向は折角なので二人とお風呂一緒しようと考えると、一旦湯船から立ち上がり、縁のところへ腰を下ろして、わうーっと背伸びして、景色を楽しみながら待つ事とする。

 そして数分後、身体を洗い終えた二人が戻ってきた。

「おや、今度は景色を満喫ですかな?」

「あ、おかえりなさい執事長、上杉君!」

「ははは、のぼせないように待っていたのか?」

「だってお風呂大勢の方が楽しいですもん!」

 わうっ! と、湯船をすらっとした白い足でちゃぷちゃぷして嬉しそうに口にする日向を見て、無邪気なものだな、とバトラーは微笑ましそうに笑みを深めた。

「では男三人、風呂で友情を育むとしよう」

「弦巻君をお風呂場で見てると、普段以上に女の子にしか見えなくてアレなんですけどね」

「あー、また上杉君、風呂場だと僕の事、男扱いしないし!」

「はは、すまない。でも、弦巻君本当に女子に見えるから驚きだよ」

 バトラーも、そこは同感だ。

 肩幅は狭く、腰はくびれ、全体的に丸みを帯びたボディラインであり、青い頭髪がさらりと解かれ腰元まで伸びているさまは、パッと見だと少女にしか見えない。じっくり見ても見紛う程の容姿をしているのだから。

 日向はそれが不服だったのか、湯船にちゃぷんと沈むと「がるるー」と、ジト目でいじけはじめてしまった。

「上杉。弦巻が不満そうだぞ?」

「あはは……、すみません」

 小さく苦笑を浮かべる龍之助。否定もし辛い事である。

 ここは機嫌を直すか、と龍之助は先ほどの話題を口にした。

「にしても、弦巻君。お風呂場なんかで時々耳にしますが、弦巻君は歌が上手そうですよね」

「実際、上手いのだと私は思うよ。何気ない鼻歌にも、しっかりとした響きがある。素人のそれではなく、実際に稽古を知ってる者の呼吸法があるからな。違うかね?」

「執事長凄いです。そこまでわかるんですか?」

 ふわー、と湯船から首だけ出てる日向が感嘆の声を上げる。

 バトラーは「当然です。執事ですからな」と朗らかに頷いた。

「執事ってすごいですね、上杉君」

「自分も都度そう思う事がありますので同感ですよ。それで実際どうなんですか、弦巻君としては。習った経験があるんですか?」

「昔、少しだけですけど」

 可憐な笑みを零して日向は嬉しそうに首肯した。基本、どこか陰鬱な影がにじむ過去を持つこの少年にとって、過去を語る上でこうした表情を浮かべるという事は、幸福な記憶なのだろう。バトラーと龍之助はそう理解した小さな笑みを浮かべていた。

「そうでしたか。弦巻は中々の美声を持っているようですな」

「えへへー♪」

「では、折角です。何か一曲、歌っていただけませんかな?」

「歌ですか? 喜んでです♪」

「では、風呂に浸かりながら贅沢といこうか上杉」

「ええ。いいですね」

「わう、早く入らないと体冷えちゃいますよ二人とも」

 そして入って歌訊いてほしそうな日向の喜色を微笑ましく思いながら龍之助とバトラーは静かに湯船へ体を沈めた。

「では、失礼して……ふー……朝の勤労の後の風呂は最高だ。錆が落ちる……」

「ですねー……自分もやはり朝のひと風呂は極楽気分です執事長……」

「わうー……♪」

 男三人のほほんと、肩までつかって心地よい気分に浸る。日向も二人に感化されたのか、ほにゃーっと心地よさそうに揺蕩っていた。そうして、少しの間ほんのりと時を過ごした頃に、澄み切った声が音楽を奏で出す。

 お腹の底から出されるしっかりとした歌声は、お風呂場で反響し、殊更その音色を増してゆく。異国の民謡と思しき、その調べに耳を傾けながら、湯船につかる。龍之助もバトラーも、それが極上の至福であると断言出来た。

 そうして穏やかな時が流れてゆき、厳かに日向の歌が終わりを告げると、

「ふむ。ブラボー。素晴らしかったですぞ、弦巻君」

「ええ。本当に」

 パチパチと二人の観客から拍手が日向へ手向けられた。日向は嬉しそうに「わうっ♪」と口角を釣り上げて少し照れたように、はにかんだ笑みを浮かべる。だが、どこか誇らしげな表情は日向が歌を好いているからなのだろう。

「ふう、いい歌が聴けましたな」

「ですねー」

 小さく頷き合うと「さて」と呟き、バトラーが腰を上げた。

「何時までものんびりしているわけにもいきませんからな。私はサウナにも入りたいので一旦失礼するとしましょうかな」

「む、では自分も。サウナとは男の本懐ですからね!」

「ははは、汗を垂れ流すとしようか上杉!」

「わうー、僕そこそこ入ってるから、サウナは危険そーだし……。もーそろそろ出ないと」

 今回は止めておこう、と日向は少し残念に思いながら二人を見送る事とした。

 そうして、二人は湯船からザバーッと立ち上がった。

 水しぶきを跳ねさせ、風呂の中から鍛え上げられた屈強な肉体が出現する。

「わう……っ」

「ん?」

 ガーン、と日向はショックを受けていた。

 何が、と尋ねられれば、自らの体躯の華奢っぷりに他ならない。湯船から立ち上がったバトラーと龍之助の体躯はそれはもう見事なものだった。まさしく男と断言しうる逞しい筋肉の付き加減。日向の叶わぬ理想の体現がそこにはあったからである。

「……」

 無言で自分の両腕をぺたぺた触ってみた。すべすべで実にしなやかこの上ない。

「わう……」

「……どうかしましたかな?」

 不思議そうなバトラーに対して日向は「わうー」と唸る。

「うー、バトラー執事長も上杉君も羨ましいです。どーしたら、そんなにかっこういい筋肉つくんでしょーか?」

「はい?」、「ふむう?」

 二人揃って一瞬きょとんとした後に、なるほどと頷く。

「やはり見る目がありますな弦巻は。ええ、そうであろうとも、この肉体。老いさらばえても自負するだけのものを鍛えていると私は自信をもっておりますからな」

 ぐぐっとポーズをとって筋肉を強調するバトラー執事長。ムキッとした逞しい筋肉。日向が頑張っても出来ない力瘤が日向の心にズドンと衝撃をもたらす。

「いやあ、日々の鍛錬としか言えませんね、筋肉は。ですがそう! 従者として、自分も誇れる肉体づくりに励んだ成果がありましたあ!」

 片腕腕立て伏せをして、逞しさに吼える上杉龍之介。

「いいなー」

 うー、と日向は涙目で唸った。

「僕だって毎日腹筋も腕立ても小さい頃からやってたもん……!」

 だが、神は無情にも日向に筋肉を寄こす気は無かったらしい。

 痩せているわけではない、筋肉はしっかりついているのだ。ただ、それの付き方が男性のそれと乖離しているというだけで。

「なんで僕は筋肉全然つかないんでしょーか。昔から結構一生懸命頑張ってるんですよ?」

 わうー、と自分の筋肉のつかなさに愕然とする日向。

 中学生までは同級生との絡みなんて皆無に等しかった事から、同年代の肉体基準など知らなかったから気にしていなかったが、高校に入学して親交が増えて以降日向は気づいた。自分の体つきが華奢なのだと。鍛えているはずなのに筋肉らしい太さは皆無で未だに子女のごとき線の細さのままだ。

 細いだけならともかく、日向の体つきはほぼ女性のそれである。

 日向は湯船の中で体育座りして、嘆きを零していた。

「お肉でしょーか? お肉食べる頻度が少なかったからでしょーか? 食生活の問題っていうのがここにきて災いしてるんでしょーか?」

「まあ肉類も大事だと自分も思いますが……」

 龍之助は若干言葉を濁す。

 確かに鍛えている割に日向の体形は女性のそれに近い。なにせ初めてお風呂を共にした時など異性に見えるものだから微妙に落ち着かなかったことを覚えている。今では普通に慣れ親しんだわけだが、やはり未だに男性の体形からは程遠い。肩は細く、腰はくびれており、全体的に女性らしい柔らかな曲線美を持つのだから内心相当驚いたくらいだ。

「まあ、私個人の考察で言わせてもらえばの話ですが、おそらく女性ホルモンが日向君は、かなり多いんでしょうな」

「じょせーほるもん?」

「わかりやすく言えば、日向君は初めから構造的に女性に近い体を持つということですな」

「わうっ!?」

 日向が絶望で完全に石化した。

「で、でも僕男の子だし!」

 だが現実を認めたくなくて早期復活を果たす。人、それを逃避という。

「ええ、だから実質的な問題は無いのだよ弦巻。身体つきが女性らしさに富むというだけ」

「確かに女性は筋肉がつきにくいですからね。成長ホルモンは出ますが、男性ホルモンが極小ですから、全体的に筋肉がつかないそうですし」

「ああ。仮定だが弦巻が筋肉がつきにくいのは女性ホルモンの多さが原因なのだろうな」

「……」

「……執事長、弦巻君がショックのあまり、ものすごいいじけているのですが。ジト目で我々を恨みがましく見ていますが……」

「耐えろ、上杉。真実は時に残酷であり、それを伝えた者たちはその恨みを背負わねばならんものなのだからな」

「……別に恨んでないし。ちょっといじけただけだし」

「「はは、知ってる。冗談」」

「声揃えなくていいし!」

 わうー! と、日向は湯船でぱっしゃーんと大きな音を立てて鬱憤を爆発させた。

 どうやら自分は鍛えても男らしい体には恵まれないらしい。正直かなりショックである。

「まあ、正直弦巻君はそれでも別に問題はないと思いますよ。これを言うと機嫌を損ねるかもしれませんが、女性の様な可憐な顔立ちですし」

「可憐な顔立ちって複雑だし。可愛いものは好きだけどさ。わうー、でも兄さんも父さんも一応イケメンだったし。お母さんにも似てないって兄さんに訊いてるし……」

「という事は隔世遺伝なのかもしれませんね」

「それもありえそうだな」

「かくせーいでん?」

「先祖の面影が現れるというやつだよ。祖父や祖母といったな。例えば両親が日本人なのに金髪碧眼だったら、曾祖父が外国人だった、とかいう事例がわかりやすいか」

「僕、おじーちゃんもおばーちゃんも知らないです」

「ふむ、そうか。あるいは単純に弦巻自体の特徴というのもありえる。まあ、個々人の差が出たと思っておくのが道理だろう」

「わうー……イケメンの人ずるいし」

 それを言えば日向の様な美しい顔立ちも相当世の中で好まれる美貌なのだが、本人はどうやら複雑のようだ。バトラーは「そうかそうか」と朗らかに笑った。

「しかし弦巻君。一応イケメンっていったい……」

「わう? ……逢えばわかると思うし。そんな逢いたいわけではないけど」

 ぷぃっとそっぽむく日向。

 純真無垢な日向にしてはつんとした態度だが、ふと気づく。

 そういえば父親に戦場に置き去りにされたわけだしなあ、と事情を知る二人は冷や汗を浮かべる。しかし兄に対しても色々あるのだろうか、と疑問を感じるも深く追求するのも酷に感じてそれ以上の事は訊かずにおいた。

「ま、まあそれで言えば、今後可能性があるかもしれないですよ、弦巻君! 二人がイケメンということなら、成長すればイケメンになる可能性もありますし! まだ自分たちは成長と宙なわけですから!」

「でも、父さんと兄さんに似るのヤだ……」

(めんどうくさい! どっちだ!)

 イケメンの定義にもこだわりがあるらしい。凄くしんみりと父兄に似るのは嫌というあたり、本当に嫌なのだろう。きっと羨ましく思うのは友人の陽皐や鍵森先輩のような枠を指すのだろうなあ、と漠然と思う龍之助である。

(まあ、父親に戦場に置き去りにされてますからな)

(お兄さんの方もこの分だと関係はよくなさそうですしね……)

 相変わらずいじけて湯船につかる日向に苦笑を浮かべる二人だが、

「とにかく弦巻も、まだまだ伸びしろというか可能性みたいなものはあるのですから、そう落ち込まない事ですな」

「ほんと? 僕も執事長みたいにだんでぃーになれるでしょーか?」

「……」

「バトラー執事長。視線を合わせてあげてください」

 気まずそうに顔を逸らすバトラーに対して龍之助は内心執事長と同感で、気持ちはわかるのだが目を合わせるやさしさを見せてあげてほしかった。日向は「目、逸らしてるもん……」と涙目でぐずっていたが、ぶんぶんと首を振って、パンパンと頬を両手で叩いた。

「むー、もーいーし! 頑張って格好良くなるし! なり方はわかんないけどさ!」

「うむ、その意気ですぞ弦巻」

 わう! と吼える日向。そんな日向だったが、ふと思い出した様に口を開いた。

「ところで上杉君と執事長は何の話をしてたんですか? なんか入って来たときにお話ししてたみたいですけど」

「おや、聞こえておりましたか。相変わらず耳が良い」

 言いながらバトラーはふと龍之助を一瞥する。龍之助は困った様に苦笑を零し、

「なんと言いますか……女性の扱い方、といったところでしょうか」

「わう? 上杉君誰か好きな人がいるんですか?」

「ああいえ、そういうのではないんです」

 頭を振る龍之助。すると次の瞬間にはふっと影の差した表情に変わり、

「実は物凄く我侭な女性に遭遇しましてね……」

「上杉、影で女性への悪口はいかんぞ?」

「ですが執事長……、椅子になれだとか、肩を揉めだとか、水たまりの上で橋になれだとか、酷いんです、あの人は……」

「椅子になったの……?」

 日向が、驚いた様に呟くと「ぐはっ」と絶命の響きが発せられる。どうやら椅子になったらしい。それは中々に男のプライドが吹っ飛んだことだろう。

「なるほど、我侭と言うだけある女性のようだな、はっはっは」

「笑いごとじゃないですよ執事長! 気品はある感じなのですが、言動が傲慢といいますか、本当に我侭で困った方なんです」

「女性の我侭を受け入れるのも男の本分だぞ、上杉」

「それはそうかもしれないんですが……」

「まあ、お前の周囲には今までいなかっただろう相手かもしれんな。テティス様、土御門と我那覇……強いて挙げれば親不孝通りだが彼女は我侭というより我が道を行く奴だ。そんな彼女もアレで凶暴性の中に気品を秘めている」

「ええ。それでいえばあの方も確かにお嬢様っぽいのですが、我侭がつよくて……」

「はは、女性関係で上杉も悩む時がついに来たか、という感じだな私としては!」

「笑いごとではないですよ執事長……」

「上杉君も大変なんですねー……」

「おや、弦巻君もなにか悩み事が?」

「なんですかな。ここは今は男しかいない場所。なんなら愚痴の一つ、悩みの二つでも相談にのりますが?」

「んーん、そういうのじゃないんですけどね……」

 わうー、と日向は苦笑してお湯の中へ顔半分を沈めぶくぶくと泡を吹く。

 脳裏に過るは一人の少女の姿。

 終始、脳裏に焼き付いて離れない(エリカ)とは別の、時折思い出す花《聖紫花》の存在。だが、それは二人に相談出来ない。きっと自分で考える事に意味があると漠然ながら理解するが故に、思うところがたくさんある。

「女の人は、むずかしーです」

 どうすればいいのかな、と日向は湯船の中で悶々と悩みを浮かべるのであった。


        4


 名家の朝となれば優雅。その一言に尽きる話し。

 豪華な装飾が施された部屋、縦長のテーブルには真っ白な布が被せられ、テーブルの上には鮮やかな花々が咲き誇り、そんな場所の主役として食欲そそる朝を飾る料理が、ずらりと並んでいる。テティス一人、という事もあれど、それでも一人で食べ切るには多い量の品々と言えるほどだ。

 その中で輝くような黄色が眩いコーンスープを一口運び、満足そうにテティスは頷く。

「うん。今日も素晴らしい味わいですわ、睡蓮」

「ありがとうございますテティス様」

 実に優美な佇まいで彼女の従者、睡蓮が恭しく頭を下げた。

 日頃、優秀な彼女は料理も当然そつなく熟す万能メイドである。そんな彼女の腕前を毎朝堪能できる事を、テティスは幸福と感じる他にないと断言出来る。そうして次の料理をナイフとフォークで綺麗に切り分け、口に一口分含み味を楽しんだ後に、テティスはおもむろに問いかけた。

「ところで日向の方は大丈夫なのかしら? バトラー。のぼせたと訊いておりますが」

「ええ、ご心配なく湯船に浮く前に救出しましたからな」

「朝からお風呂でのぼせそうになるとは日向君……本当にドジっ子ですね」

「正確にはのぼせそう、というより考えすぎで頭がヒートしたようですな」

「何をそんなに考えていたのかしら日向は? なにか悩み事でも?」

「あるようですな。女性関係の様ですが」

「へぇ――」

「テティス様。目が怖いです。そんな目玉焼きの目をフォークで突き刺して、ぐちゃぐちゃになさらないでください」

「スクランブルエッグが食べたかっただけで、何も関係ありませんわ」

「テティス様、目玉焼きはスクランブルエッグにはなりませんよ……」

 睡蓮が呆れる中、テティスは不機嫌そうにむすっとしてしまう。

 女性関係――さて、誰の事を考えていたのやら。

(日向のいけずですわ。私は再会した時からときめいてますのに……)

 その相手は自分に見向きもせず、他の女性の事ばかり。

「女の事ばかり考えて仕方ない限りですわ」

「テティス様、その言い方だと女好きみたいに聞こえますけど、実際は新橋さんの事しか頭にないだけですよ、日向君は」

 ザグンッ! と、テティスの身体に何かが突き刺さった。

「そのフォローはフォローになっていないぞ睡蓮。確かに、その通りのようだが」

 ドゴスッ! と、更に上から何かが落ちてくるようだった。

 二重に事実が襲い掛かってきたが、不屈の意思で立ち上がり、

「も、もう反応などしなくていいですわ! 英雄、色を好むといいますもの! 日向が何人女を侍らせていようと私が最後に勝利すればいいだけですもの!」

「テティス様、日向君侍らせるとか無縁の子だと思うんですが……」

「……昔の彼は将来そうなるオーラを感じたのですわ」

 むぅ、と呟くテティスに対してバトラーは風呂場での事を思い浮かべて「……想像つかんな」と難しそうな顔を浮かべる。なにせ、侍らせるとかそういう気質とは無縁で、むしろ意中の相手一人に懐いて止まないタイプだ。根底が違うとしか思えない。

(そのうえ、アレはドジっ子というタイプですしなあ……)

 ふぅ、と嘆息を零しながら、さて今彼はどうしているかなと主の背中を見ながら思うバトラーであった。



 そんな執事長の心配する従僕はといえば、毎朝の練習に励む最中である。

 教育係の批自棄指導のもと、いつもの様に朝食づくりの真っ最中だ。

 そして、毎度の様に批自棄は呆れた様な顔を浮かべていた。

「なあYAよ。朝にどろんこでべちゃべちゃになったり、風呂場でのぼせかけたり、なんでそう朝からピンチに陥りまくるのか、私は驚き呆れるんだが」

「わ、わう。わかってるもん」

 朝食の試作をしながら、日向は恥ずかしそうに顔を赤くしていた。

 あの後――、風呂場で悶々と悩んでいた日向はお風呂につかりすぎた結果、のぼせる間際までいってしまっていた。結果、寸前で龍之助とバトラーにより「上杉急げ! ふにゃふにゃになりかけているぞ!」、「弦巻君! すぐ上がるんです!」と即座の対応により湯船から離脱し無事のぼせる寸前で意識を取り戻した。

 結果、こうして今は教育係の批自棄によるジト目が注がれているというわけだ。

「アレか。風呂場で新橋嬢の妄想でもしてたかエロ小僧」

「わにゃ!? きょ、今日は違うし!」

「今日はってことは普段は妄想してるわけか、やるなエロYA」

「え、エロYAは何かヤだし! ……ただその、え、エリカと一緒にお風呂入りたいなーとか、その……」

 男の子だねぇ、と批自棄はしみじみそう思う。

 容姿は女の子だが、中身はしっかり男の子な日向である。

「ま、からかうのはこんくらいにしとくか」

「うー、またからかってたんだし……」

「ひじきさん特権だから、諦めろ」

「本当に諦めるしかないものを感じるし……!」

 戦慄する日向に対して「いーからテキパキ手を動かせー」と指図する批自棄。仕方ないので一生懸命、フライパンを動かして、米を宙に舞わせ格闘する。その際に批自棄が「……フライパン? ……米?」と不思議そうな声を出していたが、日向はわき目も振らず一生懸命になってフライパンの中のピーマンと肉の細切れに塩を振って、調理を進める。「ん、今ピーマンみてーのが見えた様な……」と、批自棄が目を擦った、その二分後。

 遂に料理が完成した。

「出来たーっ!」

 嬉しそうな日向の声とは裏腹に無言の批自棄。

「ひじきさん、見て見てー♪ 今日は上手にお味噌汁作れましたー♪」

「……」

 批自棄は、彼女に似合わぬ満面の笑顔でジャガイモとワカメが程よく整えられた美味しそうな味噌汁を一瞥し、箸で軽く中身をかき混ぜ、様子を確認すると一口くっと呷る。

「……確かに味噌汁だな」

「でしょでしょ? じょーずに作れたと思うんです!」

 わうー、と嬉しそうにはしゃぐ日向。余程、味噌汁の出来栄えに自信があるのだろう。

 実際、なかなかのおいしさだ。そこは認めよう。

「でもな、ユミクロ」

 トン、と味噌汁の椀をテーブルの上に置いて、批自棄は複雑な表情でこう零す。

「ベーコン、モッツァレラチーズ、玉ねぎ、自家製ピザソース、パン――私が渡したのは、確かピザトーストの具材だったはずなんだが、それどこやった? つーか、フライパンとか利用する意味はあったのか、ああ?」

「わう?」

 こてんと、小首を傾げる日向。

「ユミクロ。今述べた具材じゃ、味噌汁は出来ないんだが、その具材はどこやったよYA?」

「うー、ちゃんと使ったら味噌汁出来たんだもん」

「うん、おかしいよな。会話がおかしいよな。ようし、一連の流れをちょい言ってみな」

「えとね。パンにソース塗って焼いた玉葱とベーコンをトッピングしてから、モッツァレラチーズを乗せてオーブンでこんがり程よく焼くと、美味しいお米が出来るからそれを加熱してるとピーマンと細切り肉がいい匂いしてくるでしょ? ――ほら、お味噌汁の完成でした!」

 聞いていると頭がぐんにゃりしてきそうだった。

 おかしい。何がおかしいって全部おかしい。オーブンを開いた後に何が等価交換されて、最終的に味噌汁が出現したのか過程がわからない。そもそも具材が全部違うし。

「YAの料理は本当に錬金術の域だな……」

「わ、わうー……」

 こと料理に関してのみ、常識がぐんにゃりする現象を前に批自棄は珍しく屈しそうだった。現実が屈しているのだからしょうがない。食材になにが起こったというのか。

「ま、凹んでる暇はねーぜユミクロ。ほれ、時間あるうちに次の料理に手、かかれ」

「うん! じゃあまた頑張ってみるし! うー、今度こそ認められる料理作りたいな……」

(こりゃ、食卓に並べられる日はまだまだ遠いな)

 一生懸命にまた調理を開始しようと頑張る少年の後姿を見ながら、批自棄は困った様子で嘆息を浮かべていた。



 ところ戻ってテティス達はと言えば、

「――今は普通に回復して朝の料理練習しているようですよ、親不孝通りと一緒に」

「そうでしたか。ふふ、頑張っているようですわね」

「ええ。あの子、頑張り屋さんですから」

「美徳ですわね。……しかし、何時か日向の料理も食べてみたいものですわ……はぁ」

 焦がれる様に物憂げな嘆息を零すテティス。

 彼を待つ少女の身の上としては、彼の手料理を待ち侘びる気持ちが強かったのだ。しかし睡蓮は「それは少し時間がかかりそうですね」と汗を伝わせ、苦笑を浮かべ言葉を濁す。

「むぅ、ちゃんと美味しそうな料理が仕上がっていると聞いていますのに」

「それは間違いないのですがなあ……お嬢様に差し出すとなれば、私としてはどうしても過程が気がかりになってしまいまして許可を下せんのです」

 バトラーが苦悶の表情で言葉を濁す。

 彼として上手に出来上がった品をテーブルに並べてやりたいという気持ちはある。しかし、日向の料理はほとんど錬金術の領域であるのがネックだった。なにせ目玉焼きを作ろうとしてビーフシチューが、パンを焼いていたらお寿司が出てきたなんていう超常現象の使い手だ。食材と過程はどこへ吹っ飛んだのか全く見当つかない。

 そのせいでお嬢様に食べさせるには不安が尽きない――という、至極真っ当な見解を出さざるえない始末である。

 だが、テティスは不満そうに、

「いいえ、主足るもの、従者の料理受け入れてみせますわ! そんな事気にしませんから、ドンと持ってきてかまいませんわ睡蓮! カモン日向の手料理!」

「そうですか、ではご自身でどうぞお願いしてきてくださいな」

「恥ずかしくて言えるわけがないでしょう!?」

 さらっと返した返答に、かかっと真っ赤になるテティス。この場ではとことんイケイケな乙女なのに、どうしていざ言おうと促せばヘタレるのか。睡蓮にはそんな感想、自爆になるので言えるわけもなかったりするのだが。

「乙女ですなあご両人」

 そんな想い人がいる二人を孫でも見るような表情でほわんと見守るバトラーだ。視線を浴びる両名は微かに頬を染めて、お互い、同じ事を思っていた。

 ――そりゃなりますよ、と。

 睡蓮は、然り。テティスも、然り。

 テティスの脳裏に景色が過る。

 一面、澄み切った乖離の世界。

 美しくあれど、寂しい底の底。

 そこに現れ、自分を導いた幼き英雄の背中を知るからこそ。

(まったく――、本当にあの一度で惚れ込んでしまいましたわね)

 だからこそ、今の日向の幼さには驚いた。いったい何があってああなったのかはわからない。しかし、きっとまた何時かあの日の様に輝きを放つに違いない。だから、テティスはその瞬間を静かに待ち侘びている。あの姿を知るからこそ、日向が今、他の誰かに恋慕していようと諦めるという選択肢はないのだから。

「まだ焦る時じゃありませんわ。日向が我が家へ来てからまだ二カ月そこら。仮に日向が新橋さんとやらに恋慕を抱こうが、勝利の目はまだ十分にありますもの」

(話し聞いた感じだと戦わずして敗北状態な気がしますけどね)

 流石に言うのは、かわいそう過ぎて言えない睡蓮である。

 自分も恋は前途多難――主に本人が鈍感過ぎるせいで――だが、テティスの方は勝ち目があるのかすら怪しいが。それでも応援するのもまた従者の役割というものだろう。

「しかし、テティス様。勝利の目とは?」

「わかりませんの? 丁度、時期もよい事に学院では【大体育祭】が行われますもの。こうしたイベントごとでは、必ずカップルの芽が生まれるものですわ。違いまして、睡蓮?」

「まあ、あながち否定はできませんね。普段交流のない相手とも交流が生まれる事も多々あるでしょうし、種目で目を惹く生徒は好感的に映る事もあるでしょうし」

「ええ。ですから、私もここは一つ日向の目を惹く様な活躍を見せてやりたいものです。主としても、女としても、ね」

「それを言うと新橋さんも、スポーツ万能という話ですから日向君、そっちに目が移っちゃう可能性も大いにありますけどね」

 ビキッ、とテティスが硬直した。

 そうして口元からは「やはり新橋さん……貴女は目下最大の壁のようですわね、いいでしょうどちらが女として輝けるか勝負といきましょうか……!」ブツブツと燃え滾る様な戦いの言葉が溢れ出す。

 一度も会話した事もないのに、なぜこうもライバル関係もとい一方的な敵視が発生しているのやら、と睡蓮は困った様に肩を竦める。

 普段、この主は冷静沈着なのだが、どうにもこと日向関係では加熱しがちだ。

「まあ、迷惑かけないように頑張ってくださいね、テティス様」

「わかっていますわ。女の勝負――正々堂々以外にありえませんもの。新橋エリカさん――待っていなさい。【夏軍】にて、どちらが日向の目を惹く女傑となり得るか。勝負ですわ」

 と言ってドスッとフォークがレタスの葉っぱを貫いた。

 なにそのテンプレ表現、と睡蓮は若干額を抑える。というより、今の発言には少し疑問が浮かんだ。なにせ、テティスはまだ【夏軍】じゃないのだから。

「えー……テティス様、記憶ではまだ美花赤の【軍】決めは今日の放課後なのですが」

「ええ、わかっていますわよ?」

 あっけらかんとそう返すテティス。

 なんだろうか、この自信は。

「ですが、なれるんですか【夏軍】に? 公正なくじ引きですよ?」

「ふふ、睡蓮。何を呆けた事を言っているのですか?」

「はい?」

 やたら自信に満ちた物言いに睡蓮は眉をひそめる。そんな睡蓮を何を心配しているの、とばかりに気楽な所作でテティスは言った。

「夏と言えば海。海と言えば迎洋園ですわ。その迎洋園の娘が夏軍にならぬ道理がないというものでしょう?」

「は、はあ……」

 本当に、どこから溢れてきたんだろうかその自信は、と睡蓮は内心汗を零す。

「……まあ、迎洋園家は海を家紋とする程に海と関連深い家柄ですからな。その恩寵が訪れる事を願うというものでしょうか」

 バトラーが気まずげにそう呟く。

 睡蓮はああなるほど、と納得した。確かに迎洋園は海を象徴とした家柄である側面を持つ。テティスの自信はそこに起因しているのだろう。

 精々その願いが成就される事を祈るばかりである。

「とりあえず、頑張ってくださいねテティス様」

「当然ですわ。私の魅力で、日向の視線をくぎ付けにしてみせましょう」

 ふふん、と自信を漲らせたテティス。

 その姿に従者足る二人はどうなることやら、と思いながらも見守る事を決めたところで、バトラーはおもむろに口を開いた。

「では、話が一段落したところでアレですが、お嬢様」

「あら、なにかしらバトラー?」

「今年も七月に迎洋園に来る、とアイスレーベン家、ハイデ家の両名ご令嬢から電話を預かっております旨をお伝えしておきます」

「ヴィニベルガ……今年も来ますのね……」

「テティス様、そんな疲れた顔をされなくても」

 ふぅ、と嘆息を零すテティスに睡蓮は軽く苦笑して「にしても七月……【大体育祭】が終わっても、そちらもありましたね」と懐かしむ様に口を開いた。

「そうですわね。さて、ヴィニベルガが来るとなれば、親不孝通りには日向の教育をもう少し早めてもらわなくては。下手したら、彼も私も笑われてしまいますわ」

「あの方は、従者教育厳しいですしね」

「ええ、まったく」

 さて、とテティスは少し遠い七月へ想いを馳せる。

 どうやら【大体育祭】が始まる前から、色々と忙しくなりそうだ――と。


第四章 Gurévič - ouvertüre

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