宇宙の猛威
西暦2234年銀河系内辺地区某所―
宇宙空間は、漆黒で何の色もないというのが常識だ。しかし、もしそこに観測者がいたとしたら宇宙空間が黒だというのが真っ赤な嘘だといっていたかもしれない。技術の低い文明なら神の降臨と思い、驚愕するかもしれない。
宇宙空間に突然まばゆい光が現れ、それが現れた時と同様に消え去るとそこには巨大な人工物があった。
全長は数百メートルとビルにも達するほどの大きさで、気密が施され真空空間と直接触れ合わないようになっているそれは紛れもなく宇宙空間で行動することを目的にして作られたものに他ならない。
船体には、SpacecRescue&SpaceMilitaryCompanyAsgard(スペースレスキュー&スペースミリタリーアースガルド号)と書かれている。
この船は、民間籍だが一応は軍艦と同等の行動能力を備えている船で、巡洋艦の能力とある程度揚陸艦の能力の二つを併せ持っているハイブリット艦だ。
「アテンション、アテンション。目標惑星の衛星軌道までまもなく。第一小隊と科学調査生物班のメンバーは揚陸ブロックに集合せよ。」
艦内に極めて事務的な口調でなされる命令が流され、それを聞いた俺は今まで行っていた読書をやめると戦闘用の簡易宇宙服の機能を備えたタクティカルベストを纏い軍でも正式採用されているビームアサルトライフルBM-25を取りながら揚陸ブロックへと向かっている。
第一小隊に属するものと科学調査生物班のメンバーがあわただしく揚陸ブロックへ向かっていく。俺もその中の一人だ。
俺は一応スペースレスキュー&スペースミリタリーカンパニーと雇用契約を学んでいる社員だ。この会社は、地球時代に誕生した民間軍事会社という正規軍でないがテロ掃討など金銭的な契約を結んでの戦闘業務の請け負いと宇宙空間での宇宙船の救助や捜索活動、惑星開拓といったものを幅広く手掛けている総合会社で俺はそこの戦闘部門に属している。元は軍人だったんだが、軍法会議にかけられるような別に裏切ったとかじゃないが事態を起こして軍から放り出されたために入社したんだ。
今から約2世紀前の21世紀に太陽系内の各惑星や衛星の移住を果たした人類は、その後も宇宙への拡張を続け亜空間跳躍航法によって恒星間の間を飛び越えれるようになった。
銀河系内に進出しても人間の本心は変わらず大規模な戦争やさらに存在の確認された友好的なものとそうでないものを含めてのエイリアンとの戦争や公益機関が宇宙空間で行方不明となった宇宙船の捜索を費用の無駄と止めることからこのような何でも屋のような企業が誕生し、それなりに収益を上げている。
他に同じような企業がそれこそ星の数ほどある。
今回の依頼は、ある惑星での資源開拓を行うために派遣されたのちに音信不通となった某資源開発企業の開拓団の安否調査。辺境惑星であるのと開拓団が壊滅したためわが社にお鉢が回ってきたのだ。
まあよくある話だし、大体原因も八割がた予測がついているから楽な任務以外の何物でもない。
それにしてもこいつの乗り心地はいつも最悪だ。軍用のものだから乗り心地ではなく性能重視だから仕方ないとはいえもうちょっと何とかならないだろうかと俺はこいつ、強襲揚陸艇に乗るたびに思う。
強襲揚陸艇といっても数十メートルの巨漢で、軍のちょっとした部隊を惑星へ降下させることもできるだけの容積を誇っている。正規軍だと俺の乗ってきた船もそうだが、宇宙航行能力の増強のため惑星へ離着陸できないようになっている。そのため揚陸艦によって直接上陸したり揚陸艦に搭載された揚陸艇によって降下するのだが、うちのような民間では揚陸艦をいちいち同行させることはない。
そのため惑星への効果のために揚陸艦は、豊富な物量を持つからできる軍と違って巡洋艦へと搭載されている。効率の面から言えばいいのだが、それでも嫌なものは嫌だ。
女もいないわけではないが、男性のほうが仕事の性質上多くむさくるしい男どもと詰め込まれ、外見は別で中身がいいといってもエイリアンと狭い中長期間過ごす羽目になってみたくはない。
俺がそんな風に思っていながらも順調に揚陸艇は降下を続け、目的地の開拓基地のあるところへとつくと俺は頭を仕事用に切り替える。
超光速通信技術があるというのに、音信不通になったのならその事情は地球の常識で測れない獰猛な肉食生物に殺されたかでなかったらー理由はただ一つしかない。
小隊長の命令のもと、小隊のメンバーは揚陸艇から降りながら周囲に散開し展開する。科学調査生物班の人間も戦闘訓練を積んでいるとはいえ所詮書斎の人間だ。戦闘という名のアウトドアは、俺たちアウトドア派に任せてくれないと困る。
周囲へとりあえず危険がないとわかると、科学調査生物班の人間と合わせ宇宙服を着込んだ俺たちの一隊は基地へと向けて向かっている。宇宙服を着込んでいるといってもある理由からだ、別に大気の呼吸はできる。
人気はない。そして過去に幾多の戦場で嗅いだ物理的な臭さではない死のにおいというものがプンプン近寄るたびに漂ってくる。
だが、そこに明確な悪意というものではない。たとえ肉食獣だったとしても悪意というものは残る。だとしたらやはりあれだろう。
基地内には、死体がごろごろ転がっていた。音信不通になってから数か月後、俺たちに依頼がなされたからほとんどが白骨死体になっているがまだ原形をとどめているものもある。
今のところ乾いた血や体に危害を加えられた痕跡はない。
ウィルス感染で死んだのだろう。ウィルス感染とは、銀河系におけるもっともひどい脅威だ。アニメや漫画じゃ簡単に他の環境の整った惑星に移住しているが、現実はそう簡単ではない。
たとえば2020年にはやり死者数千万を出した鳥インフルエンザがそれだ。鳥インフルエンザという名の通り元々は鳥に感染するウィルスなのだが、それが人間に感染してしまえば免疫は人間は持っていない。
全ての生物は自分の体に合わせた免疫を持っており、まったく異種に感染するウィルスに感染すれば免疫は役に立たないから鳥インフルエンザが猛威をふるえたのだ。それが他の惑星となればDNAの似通りがあるものもないものも勿論、DNAの異なりで免疫は役に立たない。
エイリアンとの接触でも気を付けなければいけないことだし、惑星開拓でも同様だ。どうやら開拓団の設備が不十分か、対策をろくに取れなかったのだろう。
それから数週間、この惑星での調査を進めた俺たちは死亡した資源開拓団のメンバーはこの惑星のねずみににた生物に感染するウィルスを基地内に潜り込んだネズミ状生物から感染し、基地のエアダクトを通じて急速に広がったたために死亡したということが判明した。
ワクチン開発ということで売りつければ金になるウィルスサンプルを採取した俺たちは、遺体を回収するとその惑星を立ち去るのだった。
宇宙は厳しく、残酷だ。




