第一話 兄と妹と魔法と
12歳になった今でもこう思う。
「どうしてこうなったッ!!」
せっかく生まれかわったのに。せっかく王族に生まれたのに!なんで王女なんだっ!!
……いやすまない、けっして女性差別しているわけじゃないんだ。ただ聞いてほしい。今俺は女性のなりをしているが、心は完璧に前世の男を引き継いでいるんだ。そして前世の俺はゲイじゃなかったんだ!
いつか男と結婚させられるなんて……。
アーーーーーーーーッ!
「どうしたソフィア、大丈夫かっ!」
「ノックもなしに入ってくるなロク兄!」
扉の前に立っている衛兵より早く部屋に突入してくる兄貴にとび蹴りを放つ。
「ぐふっ、相変わらずいい蹴りだな……」
白い歯を光らせて倒れるこの男は、ゼノーシス国の第二王子、ロクフェル・シン・アリアロス・ゼノーシス。俺の二番目の兄貴だ。
現在17歳。俺の5つ上だ。なにかと俺にまとわりついてくるシスコンのロリコンだ。
……自分で言っておいてなんだがへこむ。
「まったく、なんでこんなに反応が早いんだよ……」
「我らが愛しの妹の身になにが起きても大丈夫なように、常に見守っているのsうぶあっ!」
「俺のプライベートをかえせっ!」
ロク兄の腹に再び蹴りをたたきこむ。
この世界には六つの王国があり、そのうちのひとつであるゼノーシス国の第一王女として俺は生まれた。
腰までとどく黒髪に黒瞳。華奢な体つき、そして俺から見ても圧倒的な美少女だった。
自分にほれそうになったあと、いままでにないほどへこんだ。その上俺には三人の兄がいるから、政略結婚に使われると気付き、本気で自殺を考えた。
でも、その兄三人が異常にいいやつで、俺をからかいはするが心から俺の心配をしてくれる。だからひきこもることもなかった。
ああ、兄弟っていいなあ……。
そして俺が産まれた4年後、妹ができた。名をアリシア・リン・アリアロス・ゼノーシスという。
正直、かなりうれしかった。なにを隠そう、前世で俺は妹萌えだったのだ!
そのうえ俺になついてくれたとなればもう……。
目に入れても痛くないね!かわいいよアリシアー!
とまあこんな感じで今にいたるんだが……。
「まったく、ソフィア、お前はもう少し女の子らしくできないのか?」
「そんなことソフィアに期待することのほうが無駄ですよ、リゼル兄様」
うわ、なんか集まってきたよ……。
俺によく説教をする一番上の兄のリゼル(18)と、メガネをかけたとげのある三番目の兄のフレン(15)だ。
「ちがうよリゼル兄さんにフレン、ソフィアはそこがいいんじゃないか!」
「まったくロクフェルは……。いくらソフィアがかわいいからって、もっと淑女になるようにすべきだろう!」
「兄様たち、それはちがいます。ソフィアはもっと妹属性全開にするべきなのです!」
ま、もう慣れたけどね。この人たちの醜い争いは。気持ちが分からなくもないってのもあるが。
「わぁ、みんなそろってる!アリシアもまぜて!」
騒ぎをききつけたのか、アリシアが扉から顔をのぞかせている。
「「「もちろんだよアリシア!」」」
「アリシア、こっちおいで、はやく!」
あんな変態どものそばにアリシアはおけない!
「なーに、おねえさま?」
とてとてとて、ぱふ。
あああああああああ!かわいすぎんだよアリシアーーッ!!
アリシアはよく俺に抱きつく。母さんや父さんに甘える機会がないからだろうか。まあなんであろうと大歓迎だ。
「あんな兄貴たちのところにいっちゃだめだよ、アリシア」
「どおして?」
「どーしてって……、あ、あぶないからだよ」
貞操とか貞操とか貞操とか。まあさすがにないとはおもうんだけどね。
「リゼルおにいさまもロクフェルおにいさまもフレンおにいさまもみんなやさしいよ?もしかしておねえちゃん、きらいになっちゃったの……?」
泣きそうな目で俺を見上げるアリシア。反則だよそんなの……ッ!
「そ、そんなことないよアリシア」
「じゃあ、好き?」
う……。
「あ、ああ、す、好きだよ……?」
「「「ソフィアもアリシアも大好きだー!」」」
「だから危ないっていったんだよー!」
まったく、あの変態兄貴どもめ……。いつか制裁くれてやる。
ところかわって訓練所。今俺は、魔法の練習をしている。
そう、魔法だ、魔法なんだ!(大事なとこなんで二回言いました)
この世界でははるか昔から魔法というものがあるらしい。今では生活にまで浸透しているとのことだ。
理論は、空気中にあるマナに自分の内にある魔力を作用させるだかなんだか……。
すまん、正直めんどくさくてそこいらへん憶えてない。
そんなことはまあいいんだ。そのうち憶える、かもしれない。
なんと俺は、魔力を使う才能があるらしい。教えてくれなかったけど、魔力量を調べた神官が呆けた顔をしていたから、きっとすごい量なのだろう。
ふ、ふふ、ふはははははは、俺の時代がきたな!きっと俺は最強だ!
魔法の訓練をすることが決まった日から、興奮が止まらなかった。
そして当日。本当にあっけなく魔法を使えてしまった。使ったのはファイアーボールという、誰もが想像つくであろう火の塊だ。
俺がだしたのはサッカーボールぐらいの大きさ。普通、最初は手のひらサイズだという。
そうなったら調子にのるのはしょうがないと思わないか?
ええ、教官にけんかを売ってしまいました。俺に教えることなんてあるのか、と。
「ソフィア様といえど、教え子には手を抜きませんぞ?」
背筋まっすぐな白ひげが似合う初老のおじさまに、みごとぼこぼこにされてしまった。
火球の大きさが一軒家並みにあるなんて、それなんてチート?
それからはもうしごくまじめに取り組んでます。いつかあのおじさまをつぶすために。
そして今。
「今日こそぶっつぶしてやるぜ、じじい!」
「ふふふ、かかってきなさいソフィア様。……その前に、その言葉使いなんとかならないのですか?」
「がはっ!」
「ずいぶんお強くなられましたな」
なーにがお強くなられましたね、だ。全然ぜんぜんダメージ喰らわなかったくせに!
戦闘の内容は聞かないでくれ。……言えないくらい一方的だったんだ。
ほんとうに強くなれてんのかな……?
魔法についてはそのうち説明するかもしれません。あんまり考えてないんだよね・・・(焦)
どうでもいいけど、まほうをまふぉうと入力しちゃうのは俺だけじゃないよね・・・?