六十話 (視点クィム)
「……ということなんだが、マルケス、どう思う?」と合流したマルケスに預かったボルトを見せてみる。
マルケスはモノクルを取り出してしばらくボルトを眺めた後「これは……ピッチが狂っていますね。」
マルケスはカバンからもう一本ボルトを取り出し、並べて見せた。
「こちらが規格通りのものです。」
二本を指先で転がしながら、わずかに目を細める。
「見ての通り、ネジ山の間隔が合っていない。」
一拍置いて、静かに続けた。
「潰されたか、意図的に歪められたか……いずれにせよ、不自然です。」
私は二本のボルトを見比べながら「このまま、ナサンが気付かずに規格に合って無いボルトで作り続けていたらどうなっていた?」と聞いてみる。
マルケスは神妙な顔で「無理に締めていれば、土台から歪んで最終的には崩れてしまっていたかもしれませんね。」と答える。
私はゾッとした。
「……それって」
言いかけて、言葉が止まる。
手の中のボルトが、やけに重く感じた。
「……最初から、壊れるように?」
マルケスは私に新しいボルトを手渡し「可能性の話です。」そう言って、マルケスはわずかに視線を落とす。
「……断定はできませんが。」
そしてマルケスは、私が仕分けしていたボルトの山を見つめた。
「……もしかして、この山のなかにも?」
思わずマルケスの視線を追って、積み上げられたボルトの山に目を向ける。
さっきまでただの金属の塊にしか見えなかったそれが、
急に別のもののように思えてくる。
――どれが、まともで。
――どれが、仕込まれているのか。
私一人では見分けがつかない。
――つまり、ナサンでなければ気付けなかった。
マルケスと見ると、マルケスはモノクルを握り締め「……とにかく、選別を進めましょう。わたくしはこちらの山を……。」とだけ言って、マルケスも作業に入った。
今はただ表沙汰にせず、しかし的確に証拠を集めること……。
マルケスのその意図は、言葉にしなくても伝わった。
私はただ、小さく頷いて作業に戻った。




