五十六章 (視点クィム)
マルセラ殿に姉妹の分のテ・コン・レチェを渡し、私たちは三人でイゴールの帰りを待っていた。
月が真上に来た頃、イゴールとエルメネジルドたちは帰ってきた。
「待たせて悪かった、男たちを捕らえて引き渡していたら遅くなったんだ。」
そう言いながらテントに入ってくるイゴールにナサンもガブリエル殿も驚いた顔をしていた。
「おいおい、守衛団に引き渡したのか?
あいつらは壁の街のことは我関せずだから、どうせまたすぐに出てくるぞ?
それに……」と続けるガブリエル殿を止めるようにイゴールは首を振った。
「守衛団のことはよく知っている。
引き渡したのは治安監察局に、だ……。
もちろん、あいつらが魔法使いの少女を襲っていたとは言ってない。
でも、ああいった連中に余罪がたくさんあることはよぉく知っているから、今頃きっちりと搾り取られてるだろうな。」と言いながら、鍋の中のテ・コン・レチェを温めなおし始めた。
「ですが、治安監察局が男たちの証言を信じたらどうするんです……?」と聞くと、エルメネジルドが手を上げた。
「それに関しては問題ないかと……治安監察局は国王陛下の管理下に置かれ、いかなる場合でも中立であることを強いられますので。
ただ、どう転ぶかは、我々と少女たち次第でしょうな……。」
その言葉を聞いた瞬間、私はエルメネジルドの言いたいことを理解した。
つまり――
「“少女たちが襲われていた”そのことだけを、私たちが証言すればいい……というわけですね?」
イゴールがカップを置いた。
「そういうことだ……クィムは理解が早くて助かる。
ナサン、ガブリエル、お前たちは理解したか?」と二人に目を向けた。
「あー……まぁ、なんとなく?」と首をかしげるナサンとは対照的に、ガブリエル殿は「俺は、あの二人がテントについてからのことしか知らねぇから、だいたいのことだけ話すよ……。
それでいいだろ?」と首を搔く。
イゴールは、カップに残ったテ・コン・レチェを飲み干して席を立った。
「朝になったら治安監察局のやつが来ることになっている。
お前たちももう寝ろ、あの計画もまだ途中だからな。」
そう言って、エルメネジルドたちを引き連れてテントを出ていった。




