五十三話 (視点ナサン)
第二候補地は第一候補地に比べて川の流れがいくらか穏やかなようだった。
「……周辺に木が生えていたんでしょう、根がまだ残っていて地盤もしっかりしているし。巨石と根の影響で川の流れは第一候補地よりも強くないようですね。」とマルケスが枯れ枝で水面の油をかき分けながら話す。
「では、ここになら設置できそうということですね!」とクィムは嬉しそうだ。
「おーい!どこだー?」と巨石の向こうからガブリエルの声が聞こえてくる。俺は岩の上に登って「こっちだ!回り込んできてくれ!」とガブリエルに声をかける。
ガブリエルとマルセラが大きな木箱を抱えて歩いてくる。
「はぁ、荷物が大きいとここまで来るのも大変になるな……。団長、運搬役をもう少し増やしたんだが……。」とガブリエルはどさりと荷物を下ろした。
「そこは運ぶ荷物の大きさによって私が運んだり調節をしよう。
では、建設予定地はここで決定としよう、マルケス。」とイゴールの言葉にマルケスをはじめ全員が頷いた。
「では、騎士団に仮設用の囲いを設置してもらおう。クィムたちは……何か作業があるのか?俺にも手伝えることはないか?」とジョアンは辺りを見回している。
「じゃあ、この木箱を開けるの手伝ってください!ここに仮設用の囲いの道具とか入ってるので!」とマルセラはバールをジョアンに手渡した。
ジョアンは頷いてバールを手に取り、慣れない手つきで木箱を開けていく。
クィムとイゴールとマルケスは設計図を広げて計画を立て、その間に俺は組み立ててきたパーツ同士を組み合わせる作業を始める。
夢中で組み立てていると「ナサン……ナサン!もう夕方ですよ!戻りましょう!」とクィムに大きな声で話しかけられて、我に返る。
時間が経っていたことにも気づかずに、クィムとイゴール以外は皆戻ってしまっていたらしい。
「そこまでの集中力があれば、いざ読み書きを覚えるとなると早いだろうな。」とイゴールは歩き出しながら話し始める。
俺も立ち上がって後を歩きながら「だから、俺は魔法使いの素質があるんだから、読み書きを覚えちまったら余計生きにくくなるだろ?」と返す。しかし、クィムも「でも、読み書きができれば城でも仕事ができますし、私ともたくさん話せますし!」とイゴールと同意見のようで、俺はどうにも言えない気持ちになった。




