五十一話 (視点ナサン)
夢中で小さな部品を組み立てていたら、気づけば朝になっていた。
クィムが珍しく大きな声を出し「もう朝ではないですか!ナサン!マルケス!朝ですよ!?作業を止めて、ほら早く!荷物をまとめてください!」と勝手に道具を片付け始める。
「こら!勝手に触るな!素人が下手に扱っちゃいけない道具があるんだよ!」俺はクィムを追いかけて道具を奪い返す。
クィムは道具から手を離して腕を組み「じゃあ、早く片付けて荷物をまとめてください!私は設計図をしまった杖を持っていくという仕事がありますから!」と得意げな顔をする。
「だったらお前も、さっさと設計図をしまって用意しろって。」なんだかんだ言い合いながら支度を済ませ、劇団の一番大きなテントへ向かった。
テントに入ると、ガブリエルが呆れた顔で俺たちを見た。
「おいおい、お前たち一晩中起きてたのかよ。」そう言って、ガブリエルはパンを手渡してきた。
「プレズントかモルタデッラ、好きなほう挟め。
あと、嫌いじゃなかったらケイジョもあるって、団長が。」と、ガブリエルはパンをかじりながらテントを出ようとした。
クィムが振り返って「ガブリエル殿!もう食べないのですか?」と声をかけると「もう腹いっぱいだし、俺は巡業の中に紛れて資材運ぶ役割があっから忙しいの!」そう言うと、ガブリエルは走って行ってしまった。
ボーっとしているマルケスのところへロドリゴが近づき「ほらマルケス、モルタデッラでいいか?とりあえず三枚でいいよな?」と強引にパンに挟もうとする。
マルケスは「いやいや!一枚でいいですって……それよりもケイジョの方が……」としどろもどろになりながら席に着く。
暫くすると、テントの外が騒がしくなる。外に出ようと立ち上がったところで第一王子がテントに入ってきた。
テントのなかが急に静まり返った。
するとクィムが立ち上がって、「兄上、一緒にいかがですか?
ほら、城では出来立ての食事なんて滅多にありませんし。それに、温かい食事もいいものですよ?」とパンを差し出した。
ジョアンは一瞬驚いた顔をしてから「……そうだな、食べてみよう。」とクィムからパンを受け取り、クィムの隣に座った。
なんだかその表情は、どこにでもいる普通の優しいお兄ちゃんという感じがした。




