四十三話 (視点ナサン)
そんな話をしていれば、外から慌ただしい物音が聞こえてくる。
劇団員の男がテントに駆け込んできて「団長!大変だ、第一王子の兵が戻ってきやがった!団長を出してくれって!」そう大声で言っているのに、イゴールは落ち着いていた。
全員イゴールの後についてテントを出た。
どこか嗅ぎなれた匂いが漂ってくる。まるで、雨が降ったときに街に立ち込めるあの匂い……。
視線をたどると、劇団員と城の兵たちが揉めている様子が目に飛び込んできた。
「ちょうどいいところに戻ってきたな、エルメネジルド。
設置できそうな場所はあったか?」イゴールは揉めているのも全く気にしていない様子で聞いた。
エルメネジルド、そう呼ばれた老騎士はきっちりと姿勢を正して「は、川の中腹あたりに地盤の固い場所がございました……。
しかし、問題が発生いたしまして……。」と口ごもる。
「どういうことです……?」クィムがイゴールに聞いた。俺たちも全員、どういうことなのか状況がつかめていない。
「言ってなかったか、こいつらに川の調査に行かせていた。
第一王子の兵であることを辞退した今、こいつらは暇でしょうがないだろうと思って夜のうちに頼んでおいてな。
それで?問題というのは?」そうイゴールは思い出したかのように答えた。
エルメネジルドは俯き「第二王子殿下、すなわちクィム殿下のご不在がすでに国王陛下に知られております。
それにジョアン殿下の一件もあり、陛下がクィム殿下、そしてイグナシオ殿下ご一行を城へと連れてくるようにと命令を下されました……。
王命ですので……どうかご理解を……。」そう言って兵全員が頭を下げる。
俺たちは全員で顔を見合わせる。イゴールも「さすがに、これは計算外だったな……。」とこめかみを押さえていた。




