三十九話 (視点ナサン)
「ここだ、間違いない。」ガブリエルの案内で直し屋に到着した。
ボロボロで、廃材の寄せ集めでできているこの街の中でも目立つほど手入れのされていない店だ。まあ、この街じゃどこが廃墟になろうと誰も気にしないわけだが。
「俺とクィムがまず中に入る。いいな?」そう言えば皆頷いた。
軋むドアを開けて入れば、中にはガラクタが山のように積みあがった空間があった。ぽつんと置いてある作業机に向かって座っている男は、ガブリエルから聞いていた情報に一致している。長いあごひげに深くかぶった帽子、間違いない。
「なんでも直してくれるというのは本当ですか?」そうクィムが聞けば、にこやかに男は立ち上がった。
「ええ、直せるものなら。
もっとも、価値のないものはお断りですがね。」近づいてくる男とクィムの間に立ちはだかり「そうか、まあグダグダ言ってても仕方ねぇ……。
奥にもう一人いるだろ?お前とそいつ、どっちが魔法使いだ?」そう言った途端、男の顔から笑顔が消える、そして奥からガタガタとあわただしい音が聞こえた。
「まずい!逃げられッ……!」とクィムが奥へ行こうとすると、続けて奥から「ぐぁっ……!」と声が聞こえ大きな物音が響いた。
全員が驚き、逃げようとしていた目の前の男も動きを止める。
奥からイゴールが痩せた男を引きずるようにして入ってきた。
連れてこられた男はじいさんと同い年ぐらいだ。
「念のため、裏口の方を調べに来てよかったよ。
しかし、まさかお前にこんなところで会うとはな……予想もしていなかったよ、マルケス。」とイゴールは、連れてきた男を俺たちの前に突き出した。
ガブリエルも中に入ってきて、「イゴール、表口は異常なしだ……これはどういう状況だ?」と腕を組み首をかしげる。
ふと視線をやると、店主の男は一言も発さず、帽子の影からこちらを見ていた。
逃げるでも、助けに入るでもなく、ただ成り行きを量るように。
「おい、クィム……マルケスって……?」自分の耳を疑い、クィムを見るとクィムも相当驚いたようで、目を見開きながらゆっくり頷く。
「城に仕えていた技術顧問で、あの書簡に名前のあった男……ロレンソ・アランテス・デ・マルケスに間違いありません……。」と声を震わせていた。




