三十七話 (視点ナサン)
「な、なんだよ……?」ガブリエルは動揺している。
「カフェ・オガルってのは俺たちがやってる店でな……」そうロドリゴが言えば、俺とクィムを除いた三人は驚いた顔をする。
俺は無意識に息を止めていた。
ただの偶然で済ませていい話じゃない。
「じゃあ、二人の知り合いってこと?」マルセラはぱっと表情を明るくしたが、エンリケスとロドリゴは打って変わって暗い表情だ。
エンリケスは首を振って「僕たちは、その直し屋っていうのは使ってないし、そこの店主って人の話も聞いたことがなくて。」そう答える。
「どういうことだ……?」思わず眉間にしわが寄る。
「俺たちの店の三軒隣って、ボロボロの看板のいかにも怪しい店だから、俺もエンリケスも近づいてないんだ。直し屋ってのも知らなかったし、でも店の噂については聞いたこともなくてな……。」そう言ってロドリゴは首をかしげて頭を掻いた。
「記憶を消す魔法などの類を使われた可能性はないですか?」
クィムの言葉に、俺はハッとした。
「そうだよ!それなら納得がいくじゃねぇか!」だが、エンリケスは俯いて首を振る。
「他人の精神や記憶を操作する魔法はない。もしかしたら新しく開発された可能性はあるけど……知る限りでは、ないよ。ねぇ?」
「俺も聞いたことはないな。
学院にいた頃、教授方が言ってたのは……理論上は可能、って話だけだ。
ただし、その理論とやらで言うと他人の記憶を操作するには、その相手を家族以上に深く知らなきゃならない……らしい。」そう言うとロドリゴはお手上げのポーズをとる。
家族以上に、深く——そんな条件を満たせる相手が、この街にいるのか?ということか……。
「ということはつまり、その直し屋で魔法使いの可能性のある男は、同族を避けているということか?」そうイゴールが言えばロドリゴは頷き「多分な……」と呟く。
「ですが、どうして避けているのでしょうか?お互いに助け合うことも可能でしょうし……。」とクィムは首をひねる。
ロドリゴは深くため息をついた。
「さぁな、魔法使いはひねくれものが多くて困る。」そんな皮肉を言うと、エンリケスはロドリゴを肘でつついて「こら、そういうこと言わない!」と止めた。
「でも、一度その直し屋に行くのはありなんじゃないか?なぁ?」そう言ってイゴールに目を向ければ、イゴールは頷き「私もその直し屋が気になってきたところだ。一度調査をしに行こう。
そうと決まれば、明朝にでも出発だ。それまでに皆、支度を整えておいてくれ。」そう言ってイゴールはテントの外へと出ていった。




