三十三話 (視点ナサン)
テントの中には、息苦しいほどの沈黙が落ちていた。
イゴールを中心に、8人が円を描くように腰を下ろしている。
イゴールから右回りに、マルセラ、ガブリエル、俺、クィム、エンリケス、ロドリゴ、……そして、エルメネジルドという老騎士が並んでいる。
イゴールは足を組むと、静かに口を開いた。
「……まずは、お越しいただき感謝する。エンリケス殿とロドリゴ殿。」
エンリケスとロドリゴは、居心地が悪そうに顔を見合わせていた。
「それから、第一王子の兵が撤退したことについて聞かせてもらおうか?
……エルメネジルド」
イゴールはそう言って、エルメネジルドに視線を向けた。
「それは、俺が話す。」気づいた時には、声が出ていた。俺を見て、イゴールは頷いた。
広場であったことを話すと、ガブリエルは「クィム、おめぇなんかすげぇな……」まるで子どもみたいな目でクィムを見ていた。
その一方でクィムは縮こまり「咄嗟にというか、いてもたってもいられず……」と答える、そしてエルメネジルドはというと「殿下を呼び捨てとは!」と立ち上がったがイゴールが止めていた。
エルメネジルドが落ち着くと、クィムも「いいんだ、エルメネジルド。今の私は、第二王子ではなく、ただのクィムとしてこの街にいる。」と、静かに首を振る。
「次に話し合うべきことは、錬成器……よりも先にエルメネジルド達のことだ。」とイゴールは息を吐いた。
途端に空気が重くなる。イゴールはクィムを見て「クィム、お前はどうしたいんだ?エルメネジルド達を……」と言うと、クィムは困ったような顔をした。
「自分でも、よく分からないのです……。
義兄上から嫌われていることは知っています。
ですから、義兄上の部下だったり、使用人たちからも
よく思われていないことも。
エルメネジルド達も、私のことはよく思っていないというのも……。
なので、急に言われても、どうしたらいいのかわからず……」
クィムはそう口ごもった。
お貴族様たちのことはよく分からないが、人間として当然の反応だと思った。
イゴールは背もたれに寄り掛かると「……そうだろうな」と呟き、エルメネジルドをじろりと見ると「では、エルメネジルド。お前たちはクィムからの信頼回復に努めろ、細かいことはあとで説明してやる。
部下たちを待機させてる空き地で訓練にでも勤しむんだな。」と有無を言わせず、エルメネジルドをテントの外へ放り出した。
全員で唖然としていると、イゴールは何事もなかったかのように「エンリケス殿とロドリゴ殿、お待たせして申し訳ない。
改めてお願いしたい。我々に、魔石について正しい知識を授けてくれないか?」と向き直った。




