三十二話 (視点クィム)
広場で浴びた視線を引きずったまま、合流地点の酒場へ向かった。
ネリオは、「俺は、親を連れてかれたガキどもが気になるからな、わりぃが一緒にはいけねぇ……それに、俺は単独行動が好きだからな!」と走って壁の街へと戻っていった。
酒場のドアから出てきたガブリエル殿は、私たちに気付くと真っ先に駆け寄ってきて「おい!やったぞ!晴れて俺は自由の身だ!」とナサン殿と私を抱きしめた。
ガブリエル殿とマルセラ殿に続いて出てきたイゴールは私たちを見ながらやれやれといった様子で「兵が急に撤退していったようだが……何があった?」と首をかしげる。
「こいつが色々と、な?」とナサン殿が私を半笑いで見つめるので、首を振って「そ、それよりも!連れてまいりました……こちらがエンリケス殿、そしてロドリゴ殿です。」と二人を紹介した。
「まぁともかく!詳しい話はテントに戻ってから!そうでしょ?団長!?」とマルセラ殿はパンと手を叩くと、イゴールも頷き「そうだね、兵もいないしすぐにでもテントに――」と言うと急に私たちの後ろから「イグナシオ殿下……であられますか……?」と声が聞こえた。
慌てて振り向けば、さっき広場にいた老兵……いや、第一王子の兵全員が立っていた。
「エルメネジルド……!?」と私とナサン殿、いや全員が警戒態勢に入る。
マルセラ殿は動転してしまって「ど、どうすんの団長~?」と慌てているし、ナサン殿も冷や汗を浮かべてナイフを構えようとしている。
イゴールはゆっくりと前に出て「……久しいな。いや、今は初めまして……か?」と声をかけると、エルメネジルド達は膝をつき「よくぞご無事で、殿下。」と呟くと、「お願いがあり、戻ってまいりました。」と話し始める。
「我々は、今まで騎士として間違った行いをしてまいりました。
戦のため、国のため、そう自分に言い聞かせながらジョアン殿下の命令を遂行してまいりました。
しかし、ナサン殿下の言葉で目が覚めました。
そのため、大変厚かましいこととは存じます、しかしそれでも、ナサン殿下のおそばに仕えさせていただきたく……。」とほかの騎士たちとともに、膝をつき頭を下げたままでいる。震えた声でそう私に訴えかけてくるエルメネジルドに、どうすればいいのかわからずイゴールを見る。
何か話さなければ、でもどうしたらいい?
自分で生んでしまっているこの沈黙が、今は何よりも痛かった。
イゴールは息を吐くと「……とにかく!この件も含めて、テントで話し合うぞ。
エルメネジルド!」と声をかける。
エルメネジルドは姿勢を正し返事をすると、イゴールは視線を鋭くして「お前の部下たちは、劇団の裏手側の空き地に待機させろ。」と指示を下した。
自分にはないその威厳に、私はやはり結局は私生児なのだと思い知らされる。
でも、だからこそ逃げてはいけないことなのだと、自分に言い聞かせてテントに戻るしかなかった。




