二十四話 (視点クィム)
食事を終えた途端、イゴールは低い声で言った。「話さねばならないことが増えた、テントに戻ろう。話が終わったら、ナサンとクィムはすぐに出発してくれ。」
私とナサン殿は頷くが、マルセラ殿とガブリエル殿は首をかしげている。
テントについた途端、イゴールは足を止め、こちらを振り向いた。
「クィム、設計図の噂をしていたのは第一王子、ジョアン殿下の部下だったといったな?」緊張を隠さない表情で、こちらを見据えていた。
「えぇ、おそらくオジャ・ロタで聞いた話はただの噂でなく本当のことでしょう。
だとしたら、私とナサン殿の知る魔法使いの二人は非常に危険です。」私は頷き、そう答えた。
「マルセラとガブリエル、そしてナサンは想像つかないだろうが、ジョアン殿下はかなり危険な人物だ。傲慢で短気、帝王学から支配と搾取しか学んでないような男だ。」そこで言葉を区切ると、冷たい目をして「……彼は、失敗を許さない。それが、長年仕えた部下であってもな。」
そう言ってイゴールは一瞬、視線を落とした。イゴール……イグナシオ殿下は義兄をそう評価していた。
「そんなにやばいやつに着いてる奴らってことは、そいつらもやばいってことだろ?」ナサン殿がいつも以上に真剣なまなざしで言うと、イゴールは静かに頷く。
「だから、その魔法使いたちをこのテントに連れてきてほしい。少なくとも、壁の街に居させているよりは安全だろうからな。
早速の作戦変更で申し訳ない、だがこうする他ないんだ。」そう言って、彼はわずかに眉を下げた。
「問題ねぇ、錬成器完成には必要なことだ。話は終わりか?だったら俺たちは出発するが」というナサン殿を、マルセラ殿は引き留める。
「あのさ、クィムってその第一王子様の兵に会ったことあるんじゃないの?だったら変装できるもの、持って行った方がいいんじゃ……」と言われてハッとした。
「ならば、衣装のローブを着ていけ。体格が隠れる。」とイゴールは私に古びた黒いローブを投げた。
「ありがとうございます……!」とローブを羽織ると、ナサン殿とともに壁の街に向かって駆け出した。
もう朝日が昇り始めて、壁の街も活動を始める時間だ。
義兄の……第一王子の兵が壁の街に入る前に、カフェ・オガルへ着かなければならない……。




