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壁の街  作者: 山吹花絵


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二十三話 (視点ナサン)

 「私、たち……?」イゴールの発言に首をかしげると、イゴールはゆっくりと頷いた。

 「この劇団が、隠れ蓑になってやろう。」と立ち上がった。「巡業をするんだ、壁の街で。」とマルセラを見た。

 「マルセラ、この劇団は力仕事が得意なやつが多くいるだろう?材料をリストアップするから、そいつらに準備に行かせるんだ。」そう言われても、マルセラはまだぽかんと立ち尽くしている。

 「それからガブリエル、君のいた酒場の開く時間は何時だ?」ガブリエルは突然名前を呼ばれてびくりとする。

 ガブリエルはしどろもどろになりながらも「時間は、分かんねぇ……でも、太陽が見えなくなるぐらいの時間だ……。」と答えた。

 「ならば店が開いたら、君を買い付けに行く。手段はよくないが、あの店主さんのことだ……話せばわかってもらえる。それで君を逃がそう。次に!」と鋭い視線で俺とクィムを見る。

 「君たちが知っているというその魔法使い、いつ頃会いに行くつもりだ?」そう言われるとクィムは狼狽えながら「いつ、でしょう?すぐにでも行動に移したいのですが、でも……」と俺を見る。

 「……これからすぐにだ、少しでも早く完成させたいからな。」そう言うとイゴールは頷いた。

 「分かった、情報が集まったら、太陽が沈むころにあの酒場に集合してくれ。設計図は、ナサン……君に預ける。」そう言って設計図をしまった杖を渡してきた。

 「しかし、その前に……。」そう言ってイゴールは席を立ち、テントの出口に向かって歩き出す。

 「腹が減ってるだろう?腹ごしらえだ。」振り返って俺たちを呼んだ。

 連れてこられたのは、Olla Rota (オジャ・ロタ)という食堂だった。中は大衆料理屋らしく、労働者でにぎわっている。

 マルセラは俺たちに、「ここ、ムケッカがおいしいんだ!劇団のみんなで公演終わりによく来るんだよ!」と話してくれる。

 「安心しろ、川魚は使ってない。隣国から仕入れた海の魚で作っているそうだ。」と言うとイゴールは店の奥の席に座った。

 女将が出てきて、にこやかに話しかけてくる。「おや団長さん、今日は公演がなかったのに来たのかい?」と聞かれるとイゴールは「あぁ、新人が入ったからな……お祝いだ。」などと返す。

 「おばちゃん、全員分のムケッカ!多めにね?」とマルセラも女将と話しながら席に着く。

 女将は大きな声で笑いながら「新人っていうのは、そこのお嬢ちゃんだろ?

 マルセラみたいに、そうそう大量には食えないだろうさ!」と言いながらマルセラの隣に座るガブリエルを見た。

 ガブリエルはどう答えていいのかわからないのだろう、戸惑いながらマルセラの隣に座るが、女将はお構いなしといった様子で――「まだ見習いだろうけど、あんたが劇団の舞台に立つの、アタシらは楽しみにしてるからね!」と言うと、厨房に向かって大声で「おーい、アンタ!ムケッカを五人分!新人さんのお祝いにコシーニャも出してやんな!」と言いながら戻っていった。

 女将が引っ込んだあと、隣の卓からひそひそと話し声が聞こえてきた。

 労働者風の男が、酒杯を傾けながらぼやく。「……そういや聞いたか?第一王子殿下の兵が、近々この壁の街に入るらしいって話」その言葉に、クィムと、その隣にいたイゴールがピクリと反応した。

 向かいの男は鼻で笑う。「またその噂かよ。どうせまた検問だとかが増えるだけだろ?」

 「さあな。でも今回は本当らしいぜ。物資の動きが変だってよ」話はそれきりで、笑い声と食器の音にかき消された。だが、その言葉だけが、なぜか胸の奥に残った。

 隣の二人は、不安そうな表情を浮かべたまま、運ばれてきたムケッカに手を伸ばした。

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