二十話 (視点クィム)
杖の持ち手を回転させると、シャフトの部分から細長く巻かれた紙が出てくる。
殿下がそれを机に広げたので覗き込んでみると、机の端から端まで覆うほどの、細かく書き込まれた設計図だった。
「文字は読めねぇけど、でけぇ濾過装置か?」とナサン殿が聞けば殿下は頷く。
「ただ……だ。」ナサン殿が設計図のある部分を指さした。
「この部分、まぁ文字が読めねぇからわかんねぇが、普通の濾過装置にはない。……それとこの部分もな。」殿下は、ナサン殿が指さした箇所に視線を落としてから、ゆっくりと口を開いた。
「バプタイズは、川の水の濾過で問題を解決しようとしていた。
巨大な濾過装置、これを錬成器と呼んでいたよ。ただし――水を濾過する装置というだけではない。」
「錬成器、これが……もしかして、この未発送の書簡と錬成器は関係があるのですか?」懐から書簡を取り出して殿下に見せる。
殿下は書簡を読むと息をのんで目を丸くした。
しばらく視線を落としたまま動かず、やがて目頭を押さえながら言った。
「そうだ……この書簡に書かれていることは、この錬成器と関係がある。」そう言われると、ナサン殿も私も目を見合わせた。
「それで、普通濾過装置にはないこの部分とこの部分のところにはなんて書いてある?それが関係してんだろ?」そうナサン殿が詰め寄ると、私はもう一度設計図を覗き込んだ。
思わず目を疑った、「動力が、魔法……!?」その言葉にナサン殿もこちらを見た。
マルセラ殿もガブリエル殿も驚いている様子だった。
「魔法が動力って、そんな事可能なの!?」とマルセラ殿の言葉に殿下は「バプタイズが天才だから、実現可能だった。
しかしバプタイズは、この装置の完成を拒んだんだ、それもあり城から追放されたんだよ。」そう言うとナサン殿が指さしていた部分を指さした。
「まず、この部分は壁の街のゴミ問題を解決できる部分だ。
魔力でゴミを分解することができる、だから再利用可能なものだけを取り出せる。」そう言うと殿下は一瞬言葉を切った。
「ゴミ問題は今はいい、それよりも魔力が動力であるって話だ。」ナサン殿に睨まれ、殿下はため息をついてからナサン殿が指さした部分について話始めた。
「魔力を動力源にするということ、そこに参謀たちは目を付けたんだ。
この国では、魔法使いは迫害対象……魔法使いをこの錬成器を完成させてからこき使えばどうなるかわかるか?」と私たちを見た。
「もしかして、魔法使いは……魔力がなくなって死ぬってことか?」真っ先にガブリエル殿は目を丸くして答える。
殿下は黙って頷いた。その沈黙が、何よりも雄弁だった。




