十五話 (視点ナサン)
「団長が王弟殿下!?」とマルセラは大きな声を出し、目を見開いている。
ガブリエルも「ちょっと待ってくれ、殿下?はぁ?クィムはナニモンなんだよ?」と驚きを隠せていないようだ。
クィムは自分でこの状況を作っておきながらも居心地が悪そうに「……わ、私は、アレンカール王家の第二王子……クィム・フェルナンド・アウグスト・デ・アレンカール、です。」と目線を下に向けた。
さらに驚くマルセラをよそに、ガブリエルは頭を掻きながら「第二王子!?ナサン、お前知ってたのかよ!?」と俺を見る。
俺はため息をついて「……正直、信じちゃいなかったけど、本当らしいな。」と肩を竦めた。
ガブリエルは一瞬固まってから「……じゃあ俺は第二王子にタメ口きいたし?命令もしたし?王族の前で大声出したし?なんなら掃きだめみてぇな酒場の片づけの手伝いまでさせたし!?俺、歌えなくなるどころか……フケーザイってやつで殺されるってことか!?」とガシガシ頭を掻いて焦っている。
そんなガブリエルを見てクィムは慌てて「そんなことはありません!私が自分でここに来たので、それに私も身分を隠してたので……その、何も問題ないです!」と頭が取れそうなくらいに首を振った。
そしてクィムは俺を指さして、「それに!ナサン殿は私が名乗ったうえで私にナイフを突きつけてますし、脅迫までしてるので!本来の罪ならナサン殿のほうが重いので!安心してください!」なんて、どういうわけかどこか誇らしげに言うもんだから、ガブリエルは口を開いたまま俺を見た。
マルセラはハッとして「てゆーか!そんな第二王子様が壁の街の子たちとうちの劇団に何の用?
それに団長!全部詳しく聞かせてよ!?私にもわかるように!」と机を叩いた。
劇団長は大きくため息をつき、どさっと音を立てて大きな椅子に座った。
「マルセラ、それからお客人。……とりあえず座りなさい。ひとまず落ち着こうじゃないか。」と鋭い目でこちらを見た。
でも、不思議と嫌な感じはなかった。
なんというか、ただ堂々としていて優しい人——この男にはそんな雰囲気があった。




