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壁の街  作者: 山吹花絵


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序章

この物語は、魔法が存在しながらも迫害され、機械技術によって社会が支えられている世界を舞台にしています。

本作は、貧民街で生きる一人の機械技師と、王家に連なる少年との出会いから始まります。

正義と悪、便利さと犠牲、そして「救うとは何か」を問い続ける物語です。

初めて書いた小説なので、優しい目線で見てください。

ゆっくりと世界が広がっていきますので、気負わずお読みいただければ幸いです。

 「このボルトは……まあ、磨けば使えるか。」

 今日の仕事場の近くのガラクタの山で使えそうな部品を漁って家に帰る途中、何やらもめている様子の大男と小さい子供の影が見えた。薄明かりで見えるその身なりからして、あいつはこの街の人間ではない。あんな身なりでこの街にいるなんて、自ら喉を差し出すようなものだ。

 いつも通り、めんどくさいことに巻き込まれないためにも通り過ぎようかと思った。

 しかし、ふと少年と目が合ってしまった。少年はこちらに向かって「あの!機械技師の方ですよね!?」と声をかけてきた。

 しまった、めんどうなことに巻き込まれたと思っていたら、叫んでいる大男を無視してこちらによって来る。

 「あなたの持ち物、かの有名なバプタイズ様の物ではないですか!?」と少年が言うのでまずいと思った。大男に向かって「俺の客が世話になったな、これを持ってもういけ!」と今日の稼ぎを投げつけて少年の手を引いて家へと駆け出した。

 いつもよりもうまく息ができないせいか、やっとの思いで家に駆け込むと「おい、そんな恰好でこの街をうろついてどういうつもりだ?生きて帰れないこともあるんだぞ、お坊ちゃんが遊びで来る場所じゃねぇ。」と胸ぐらをつかんで問い詰める。

 しかし少年が目を輝かせて「わたくし、クィム・フェルナンド・アウグスト・デ・アレンカール、アレンカール王家の第二王子であります!お持ちになっている道具に、我が王家の紋が見えました、バプタイズ様は今どちらにいらっしゃるのですか!?」とまたはっきりとじいさんの名前を言った。

 バプタイズは俺の育てのじいさんの名前だ。

 俺の育てのじいさんの名前を、必死に思い出さないようにしていたその名前を、こんな貧民街に来たこともなさそうな坊ちゃんが知ってるのはなんでなんだ。

 護身用のナイフを突きつける。酸欠ってやつなんだろう、なんだかくらくらして呼吸も浅い。手も震えている気がするし、聞かなきゃいけないことが山ほどあるのに、うまく言葉が出てこない。

 視界がちかちかする、本当に王家の人間ならどうしてここにいる?じいさんからは城だとか王様だとかの話なんて一回だって聞いてない。

「お前、本当に何もんだ?何をしにこの街に来た?目的を言え。」と震える声で詰め寄る。考えろ……考えろ……ちょっとでも驚かしたら、お貴族様はすぐに本当のことを話すはず……。

 なのに、目の前にいるガキは、あまりにも平然として「落ち着いてください、まずは座って話をしましょう。

 これは、バプタイズ様だけでなく我々にかかわる非常に重要な問題なのです。

 先ほども申しました通り、あなたがお使いになっている道具は我が王家がバプタイズ様へ与えたもの、王家の紋章がついているのですぐにわかりました。」と向日葵の花のような目で真っ直ぐにこちらを見つめて淡々と答える。

 そして、さっきの大男と一緒にいたときの弱々しい少年の姿は見る影もなく

「もう一度問います、バプタイズ様は、今どちらへいらっしゃるのですか?」と嘘は許さない、と言わんばかりの目を向けてきた。

 逃れられはしないか……とナイフを納め、「座れ。」といつだったか、じいさんが拾ってきた、軋むソファに座らせる。

 「じいさん、おめぇが言ってるんだろうバプタイズってのは多分俺の育ての親だ。先月に死んだ。それもいきなり。」と伝えると少年は驚いた声を出した。俺は、少年の目を見れなかった。

 「あの!バプタイズ様は、何か設計図のようなものなど残していたりしませんでしたか?」と少年は俺の顔を覗き込んでくる。

 謎の気迫に押されながらも「知らねぇな。何か残ってたとしても、俺は読み書きなんてできないから残ってても捨ててるだろうしな。」と答えれば、さらに少年は問い詰めてくる。

 「もしかしたら、あなたとあなたの周辺にいる方々の身の安全にかかわることかもしれないのです!何か一つでも思い出してください!」と少年は何か必死みたいだが、そんなものを見た覚えはない。

 「知らないって言ってるだろ!?今度はこっちが聞く番だ。お前は何もんで、お坊ちゃんがどうしてこんな街にいる?」と少年の前にどっかりと座った。

 目の前にいるガキが、この街で何をしでかそうとしているのか……弟子として知らなければならない。この感覚はもしかしたら、生まれてからずっと貧民街で生きてきた直感ってやつなのかもしれない。

 俺は、むしゃくしゃした考えを振り払うように床にナイフを突き立てる。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

序章では、物語の始まりとなる出会いと、この世界が抱える歪みの一端を描いています。

今後、登場人物たちはそれぞれの立場と思惑を抱えながら、「選択」を迫られていくことになるでしょう。。

少しでも続きが気になっていただけたなら、次の章もお付き合いいただけると嬉しいです。

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