第6話 手がかりを追って
森の中を進み始めてからどれくらい経っただろう。かなり奥まで言ったと思うけど、モヤはまだまだ奥まで続いている。
シュート「結構進んできましたね…。」
アスト「はぁ、はぁ…。」
少しずつ体力に余裕がなくなってきた。相変わらず虚弱体質のせいで体が弱い。体力作りはまだ頑張っているのでマシになってはいるけど、それでもキツイものはキツイ。
ユキト「大丈夫か?」
アスト「だ、大丈夫…。」
ユキト「大丈夫じゃないだろ?かなり辛そうだぜ?ほら背中に乗れよ。俺がおぶってやるから。」
そう言ってユキトは僕の前に屈んで背中を向ける。
アスト「ほ、ホントに大丈夫だよ。そこまで辛くないから…!」
ユキト「そんな息切れして言っても説得力ないぜ?ほら、ここで倒れる訳にもいかないだろ?」
アスト「う…わ、分かった。ごめん…。」
ユキト「謝るなよ。アストのおかげでここまで来れたんだからなこれくらい任せとけって!」
僕はユキトの言葉に甘え、彼の背中に乗った。正直言うとユキトの言う通り体は限界になりそうなくらい疲労していた。森の奥に進むたびに高低差が激しくなってきて、歩くのが大変になってきていた。もし旅をするならこういった場所を進むこともあるだろう。やっぱりこれからのことも考えて体力を重点的に鍛える必要がありそうだ。
ユキト「シュートは大丈夫か?」
シュート「俺は全然大丈夫です。まだまだ歩けます。」
ユキト「辛くなったら言えよ。ここまできたら引き返せないからな。休憩も適度に挟もうぜ。」
僕を担いでいるというのに、ユキトの歩くペースは全く落ちることはなかった。それどころか2人ともここまで歩いてきたのにも関わらず、息があがることもない。やっぱり人間の僕とは体の作りが違うんだと改めて認識させられる。
アスト(良いな…僕もこれくらい強かったらな…。)
それからさらに森の奥へと進んだ。空を見上げると、陽が傾いてきている。このままだと夜になってしまいそうだ。
アスト「マズい…夜になりそう…。」
ユキト「あぁ、夜になったら帰るのは難しくなるぜ。夜の森は迷いやすいからな。」
シュート「でも…ライキはこの先なんですよね?」
アスト「うん。それは間違いないよ。」
宝石を見ると、モヤはまだ奥に向かっている。しかし、宝石の魔力が少なくなってきたのかモヤがだんだんと少なくなってきている。
アスト「はやく見つけないと…。」
僕は少し焦りを感じていた。ユキトの言った通り、このまま夜になってしまうと帰れなくなってしまう。一刻も早くライキさんを見つけないといけない。
シュート「あれ?何か見えてきましたよ?」
シュートが指を刺した方向を見ると、確かに何かが見えてきた。
アスト「あれは…砦?」
薄暗くて見えづらかったが、先にあったのは石や岩でできた大きな砦だった。
シュート「え?何でこんなところに砦なんて…。」
ユキト「見た感じかなり古くなってるな。ところどころ苔も生えてるし…かなり長い間使われてないみたいだな。」
アスト「モヤも…あの中に向かっていってるよ。…あっ。」
宝石を見るとモヤはかろうじて砦に向かっていたが、限界が来たのかとうとう消えてしまった。
アスト(これでもう辿れない…あとは自力で見つけないと…。)
アスト「ありがとうユキト。もうおろして大丈夫だよ。」
ユキト「おう。」
ユキトがおぶってくれたため、十分に体力は回復できた。
シュート「ライキはここにいるんですよね?」
アスト「何でここに来たのかは分からないけど…。」
ユキト「何か嫌な感じだな…気をつけて進むぞ。」
覚悟を決めて僕たちは砦の中へ足を踏み入れた。砦の中は想像以上に暗く、足元すらろくに見えない状態だった。
アスト「前が全く見えない…うわっ!?」
ユキト「うおっ…大丈夫か?」
何か固い物に躓いてしまった僕は、バランスが崩れてしまいユキトの方に倒れてしまった。
アスト「う、うん。ありがとう。」
ユキト「ずいぶん散らかってるな。躓かないように気をつけろよ。」
アスト「えっ?ユキト見えるの?僕足元すら全く見えないんだけど…。」
ユキト「あぁそうか。一応アストは人間だもんな。俺は狼でもあるから夜目で見えるんだ。くっきりとまではいかないけどな。」
アスト「な、なるほど。ということはシュートも?」
シュート「俺も大体の物は見えてますよ。」
アスト「や、やっぱりそうなんだ…。」
こんなところでも種族の違いが出てきてしまう。夜目も持っているとか羨ましすぎる。だけど僕にはどうにもできないので、ここは2人に任せるしかない。
シュート「でも確かに暗いですからね…。ここは俺に任せてください。」
シュートがそう言うと、先程まで暗かった砦の中が少しずつ明るくなっていき、周りの景色が見えるようになった。シュートの方を見ると、彼の尻尾から火がでており、それが松明のようになっていた。
ユキト「すげぇ!一気に見えるようになったぞ!?」
アスト「す、すごいけど…それ大丈夫なの?」
シュート「尻尾のことなら大丈夫です。俺は属性魔力が炎なのと、特殊能力で炎に対する耐性が高いんです。だからこんなこともできるんですよ。」
ユキト「えっ!?シュートもユニーカーなのか!?」
シュート「はい、俺の能力【炎の体】って言う能力なんですけど、効果は炎の魔力を全部無効化して俺の力として吸収するというものなんです。後、この尻尾みたいに体に炎をまとわせることもできます。」
アスト「なるほど。だから炎に対する影響がないってことなんだね?」
ユキト「それもし相手が炎使いだったら絶対勝てるんじゃないか?」
シュート「ですね。実際に炎使いの人には負けたことがないです。」
この前、シュートと魔法について話していた時があったのだが、炎に関することは絶対に負けないと、シュートから聞いたことはあった。僕も鉱石魔法では炎の魔法が得意だったりするのだが、シュートには一切効かないので、炎の魔法に関してはシュートの方が上だと感じた。
アスト(炎の魔法を無効化してしまう力…控えめに言ってもズルだなぁ…。)
シュート「俺が先に進んで先導します。あっ、俺の尻尾には当たらないように気をつけてくださいね。すごく熱いので火傷程度では済まないかもしれないです。」
アスト「わ、分かった…。」
アスト(どれだけ火力があるんだろう…。)
僕たちは薄暗い通路をどんどん進んでいった。どうしてライキさんがこんなところに来たのか、その理由はまだわからないが、何故か僕は嫌な予感がずっとしていた。しばらく歩き続けると、ユキトが辺りの匂いを嗅いでいた。
ユキト「近くからライキの匂いがするな。」
アスト「やっぱりここに来てたんだ。でも何でこんなところに…?」
ユキト「それはライキに会って聞いた方が……いや…まて…別の匂いもする。」
アスト「別の?」
シュート「もしかして他にも誰かいるんですかね…?」
ユキト「そうみたいだな。でもこんなところに何で集まってるんだ…?」
ライキさん以外にも人がいる。だけどいろいろおかしなところがある。こんな人気のなさそうな場所に、どうしてライキさんは向かったのだろうか。ペンダントを落として放置するほどの何かがあったのか。あるいは…。
ユキト「モンスターの気配は感じないが、油断せず慎重に行くぞ。」
アスト「う、うん…!」
いろんな可能性を考えてしまうが、今はそれよりもライキさんを探すことが最優先だ。分からないことを考えたってしょうがない。
シュート「あっ!あそこに地下に続く階段がありますよ?」
シュートが見つけた階段をユキトが覗くと、その先の匂いを嗅いだ。
ユキト「この下だ。ライキの匂いはこの下に続いてる。」
アスト「なるべく他の人にバレないようにライキを見つけた方が良いよね…。」
ユキト「だな。急いで行くぞ。頼んだぜシュート。」
シュート「はい。足元を踏み外さないように気をつけてください。」
シュートの炎を頼りに、ゆっくりと階段を降りていった。降りるたびにどこからか水の滴り落ちるような音が次第と大きくなって、その音を聞くたびに僕の心臓の音も早くなっているのを感じた。




