第5話 行方不明
次の日…
アスト「はぁ…またやっちゃった…。」
僕は自室にある本の山を見る。今日は学園が休みなので、いろいろ本を読もうと思って、国の図書館と学園の図書館両方から本を借りてきてしまい、ついつい本を借りすぎた結果…
目の前には30冊を越える本があった。
アスト(今日中には無理だなぁ…。とりあえず少しずつ読んで減らしていかないと…。)
とりあえず、僕は1冊手にとってさっそく読み始めた。昨日はかなり激しく動いたので、腕や足に筋肉痛が起こっていて、あまり動けない状態だったので、本を運ぶのは結局ユキトに手伝ってもらった。あまり動かない方が良いとユキトに言われたので、今日はこうやって読書をしてゆっくり過ごすことになった。
アスト「…ふぅ、もう5冊か。」
そこそこのペースで読めているので、この調子だと今日中には15冊までは行けそうだ。
アスト(さすがに15冊読むのは辛いから読むとしてもあと5冊くらいかな…。)
ドンドン!
その時、僕の部屋のドアを誰かが叩いた。
アスト(誰だろう?)
ユキト「アスト!俺だ!」
アスト「ユキト?」
その声を聞いて僕はドアを開けた。そこにはユキトとシュートがいた。
アスト「あれ?2人ともどうしたの?この時間っていつも訓練場に行くよね?」
シュート「そうなんですけど…ライキを見てませんか?」
アスト「ライキさん…?見てないし、ここにも来てないよ。何かあったの?」
シュート「実は…今日一緒に特訓に付き合う約束してたんですけど、時間になっても来なくて…。」
アスト「ライキさんが…?」
ユキト「そうなんだよ。学園のいろんなところを見て回ったんだがどこにもいないんだ。それに…これを見てくれ。」
そう言ってユキトが取り出したのは、見覚えのあるペンダントだった。
アスト「あれ?これってライキさんが着けてたやつじゃ?」
ユキト「おう、そうだぜ。さっき城下町に行ってたんだが、道端にこれが落ちてたんだ。でもさ、あいつの耳なら落ちた音で落としたことなんてすぐに分かるよな?」
アスト「確かに…ライキさんは犬の獣人だしね。それがどうかしたの?」
シュート「その…落ちた音に気づかない程の何かがあったんじゃないかって…思っちゃって…。」
アスト「あっ…確かに…。」
ライキさんは昨日会ったばかりだけど、あまり約束を破ったりするような人ではないと思う。さらに彼があんなに大切にしていたペンダントを落として気づかずに回収しなかったことも変に感じてしまった。確かにシュートの言う通り、彼に何かあったのではないかと僕も心配になった。
アスト「僕も一緒に探しに行くよ。」
ユキト「良いのか?」
アスト「うん。ちょっと心配だしね。えっと、学園を探したのなら、あと探してないのは城下町の方かな?」
ユキト「おう。さっきは少し寄っただけだから、探してはないんだよな。」
アスト「城下町か…かなり広いけど…」
シュート「でもライキは城下町の方はあまり行かないので、探す場所も限られると思います。」
アスト「分かった。それじゃあさっそく行こう。」
僕たちはまず図書館にやってきた。ライキさんはよく図書館に本を読んだりしているところを見た事があるとシュートが言っていた。だから、もしかしたら図書館にいるかもしれないと思ったのだ。
シュート「ライキはよくあの席に座っているんですけど、見当たりませんね…。」
アスト「あれ?ユキトは?」
辺りを見渡していると、ユキトの姿も消えていることに気づいた。
シュート「ユキトさんなら司書さんを探しに行きましたよ。」
アスト「なるほど、司書の人ならライキさんが来たか分かるかも知れないね。」
ユキト「おっ、ここにいたんだな。」
ちょうどその時、ユキトが戻ってきた。
アスト「話を聞いてきたんだよね?どうだった?」
ユキト「それが…どうやら今日はまだ見てないらしいんだ。」
シュート「そうなんですか…。」
ライキさんと仲の良いシュートは心配なのか先程からいつもの元気がない。
ユキト「まぁまだ他に行きそうな場所はあるからな。次行こうぜ!」
———
僕たちはその後も聞き込みをしたりして、ライキを探した。しかし、学園や城下町を探しても、ライキの姿はどこにも見当たらず、何の情報も得ることができなかった。仕方がないため、1度僕の部屋に戻って、作戦会議を行うことにした。
ユキト「ライキのやつどこにもいなかったな…。」
アスト「なんか変だよ…。途中聞き込みとかもしたけど誰もライキさんの姿を見てないって言ってたよね。」
ユキト「確かに犬の獣人はこの国には多いけどさ。ライキは見た目は結構特徴的だからな。誰かしらは見てそうだと思ったんだけどな…。」
アスト「ここまで探して見つからないなら先生に相談すべきなのかな?」
アスト、ユキト「うーん…。」
ここまで情報がないとなると、さすがに探しようがなくお手上げの状態だった。だけど、やっぱり心配なので、これ以上探して見つからなかったら、先生に相談しようと思っていた。
アスト(何か方法はないかな…。)
そう思い、僕はテーブルに置かれたライキがつけているペンダントをじっと見つめてみた。その黄色い石は普通の石とは思えない程、キレイな色を放っている。
アスト「これって宝石なのかな?」
ふとそんな疑問をもらした。
シュート「それは宝石ですよ。魔光輝石っていう宝石です。昔、俺がライキにプレゼントであげたんです。」
魔光輝石というのは、世界中でよく取られる宝石で、魔力を込めると、光り輝く性質を持っている。その綺麗な輝きと安い値段で買えるという理由からプレゼントに渡すという人が多い。
アスト「そうだったんだ…。あっ、なるほど。だからあんなに大切にしてたのか…。」
シュート「え?何がなるほどなんですか?」
アスト「あっ…いや…なんでも…。」
シュート「?」
この前、ライキにペンダントを拾ってあげた時、喜んでいた理由が少し分かった気がした。とりあえず、このペンダントはライキの場所を突き止める唯一の証拠になるかもしれない。
アスト「ねぇ、そのペンダント借りても良い?」
シュート「えっ?良いですけど、何に使うんですか?」
アスト「もちろん。ライキを探すために使うんだよ。」
魔光輝石は宝石の中でも、魔力を吸収しやすい性質をもっている。なので、魔力を込めた時に、そのままその人の魔力が宝石に残ることがあるのだ。僕は、宝石に触れてみた。僕の予想が当たっているなら、これでライキを見つけることができるかもしれない。触れてしばらくすると、宝石から黄色いモヤのものが出てきた。
ユキト「うお!?何だこれ!?」
アスト「これは宝石に貯まってたライキの魔力だよ。よし、それじゃあライキのところに行こう。」
シュート「えっ!?ライキが、どこにいるか分かったんですか!?」
アスト「うん。それは移動しながら説明するよ。」
僕たちは外に出て城下町へと向かった。僕の持っている宝石からはまだモヤが出ていて、それは城下町の外の方向にのびていた。
アスト「ライキは外に向かったみたいだね。」
ユキト「なぁアスト、そろそろ説明してくれよ。」
アスト「えっと、魔光輝石が魔力を吸収しやすいのは知ってるかな?それを利用して、ライキの場所を探知できるようにしたんだ。」
シュート「え!?そんなことができるんですか!?」
アスト「うん。宝石魔法 クリスタルサーチ
宝石に貯まった魔力の出どころを探せる魔法だよ。本来なら鉱石採掘に使われる魔法なんだけどまさかこんなところで役に立つなんてね。」
ユキト「すげぇー!そんなこと出来たんだな!」
アスト「まぁ欠点というか、厄介なのが宝石に貯まってるライキの魔力を放出して探知してるから、もし宝石に貯まった魔力が無くなったら探知ができなくなるんだよね。だから、あまり遠い所に行きすぎてると見つけられなくなっちゃうけど。」
ユキト「なら無くなる前に見つければ良いだけの話だ!早く行こうぜ!」
宝石の探知を頼りに、僕たちは城下町の外に出て、モヤのある方向に向かう。モヤは近くの森の中へと続いている。
アスト「森の中に行ってる…。一体どうして…?」
ユキト「ここの森って何かあったか?」
アスト「いや…大して何もなかったと思うけど…。」
どうしてライキさんは森の中に向かったのか、謎だが少し嫌な予感がしたので、僕たちは急いでモヤを頼りに森の奥へと進んでいった。




