第4話 勝負の行方
視点 ユキト
ユキト(くっそ…防戦一方かよ!)
好奇心で戦ってみようと言ったは良いが、俺の想像以上にライキは強かった。双剣に加えてこの剣の早さ。攻撃にまわれる隙がない。俺の強みは攻撃なのに、防御してるだけじゃあ勝てるわけがない。
ユキト(これで一発一発の威力がまだ高かったら今ごろ負けてたかもな…そこだけが救いか…!)
ライキ「はぁっ…はぁっ…。」
ユキト(あと…もう少し…!)
でも既に勝機は見出していた。あいつの弱点は攻撃力と体力の低さ。攻撃力は、決して低い訳ではないが、俺の剣で防げている以上、まだ力が足りない。俺みたいな力があれば、この連撃で一発目の片方の剣で相手の剣を飛ばして、二発目で、もう片方の剣で相手を切ることができる。
ユキト(力がないって言っても少しでも油断したら剣が飛ばされそうになる…!集中力を切らしたらすぐ負けるな…!)
俺の剣術で倒せないのはすごい悔しいが、このまま耐え続けてあいつの体力がなくなるのを待つしかない。
ライキ「はあっ!」
ライキの攻撃が始まって大体5分くらいたっただろうか。さすがに俺も集中力が無くなってきて、相手の攻撃でバランスが崩れてきた。
ユキト(ここまで追い込まれるなんて思わなかった…でも…。)
俺はつい笑ってしまう。
ユキト(だからこそ…強いやつと戦うのは楽しいんだよな!)
俺はいつしか、この戦いが楽しくなってきていた。どれだけ強くなっても、俺より強いやつは世界にたくさんいる。そんなやつらに自分の力がどれほど通用するのかを試すこの瞬間がとてつもなく楽しい。
ユキト(絶対に勝つ!こいつに勝ってもっと強くなる!)
ライキ「はぁっ…!はぁっ…!」
ユキト「大分…きつくなってきたんじゃねぇか……!?」
ライキ「それは…お前もだろ…!」
ライキの顔を見ると、俺と同じように笑っていた。どうやら気持ちは同じのようだ。
ライキ「そろそろ…決着をつけてやる…!」
そう言うとライキは剣を振る速度を上げた。これが最後の攻めといったところだろう。でも体力が限界に近いのか、力はさっきまでと比べたら弱くなっている。しかし、これ以上うければ
集中力が切れるかもしれない。
ユキト(やってやるぜ!)
俺は受けながら精神を統一する。力が下がっている今なら、成功するはずだ。
ユキト「おらぁぁぁぁ!!!」
ライキ「なっ…!?」
カキーン!
ライキの剣が当たった瞬間、俺は思いっきり上に切り上げた。その衝撃に耐えきれず、ライキは剣を離してしまった。
ユキト「まだやるか?言っとくが剣1本なら負ける気しないぜ?
剣が2本じゃないとあの攻撃速度は出せねぇだろ?」
ライキ「そう…だな…俺の負けだ。」
そう言って悔しそうな顔をするライキだが、その顔はどこかすっきりしてそうな感じだった。
アスト「ユキト!」
すると、遠くで見ていたアストとシュートが走ってきた。
アスト「すごいよ!2人とも!あんな戦いは初めて見たよ!お疲れ様!」
ユキト「おう!ありがとな!」
シュート「ライキ!大丈夫!?」
ライキ「俺は大丈夫だ。」
シュート「ははは!さすがライキだよ。あんなに強くなってたなんて!」
ライキ「まぁ、負けたんだけどな…。えっと、ユキトって言ったか。」
ユキト「ん?何だ?」
ライキ「俺は…お前が反撃をできるすべがないと思ってた。ずっと受け身だったんだからな。だからこそ最後のあのカウンター。あれができるならいつでも反撃できたはずなのにどうしてすぐに反撃をしてこなかったんだ?」
ユキト「あぁ、あれか。確かにカウンターならやろうと思えばいつでもできたぜ。でも最初の方は体力が残っていたし、すぐに反撃したら、耐えられると思ったんだよ。そうなれば次の反撃は警戒されるだろ?だから体力を削って待ってたんだ。カウンターで確実に勝つタイミングがくるまでな。」
ライキ「そう言うことか。はぁ…これなら最初から攻撃に本気をだすんじゃなかったな…。」
ユキト「まっ、速さだけじゃダメってことだぜ!」
ライキ「…ふっ。」
すると、いきなりライキは笑いだした。
ユキト「ん?何か面白かったか??」
ライキ「いや…まさか俺の得意な剣術で勝つやつがいるとは思わなかったからさ。」
ユキト「確かにお前想像以上に強かったな!多分俺以外の生徒だと勝てなかったと思うぜ!」
ライキ「勝ったやつに言われても嫌味にしか聞こえないな。」
ユキト「えっ!?そ、そんなつもりじゃ…!?」
ライキ「はは、冗談だ。」
ライキはそう言うと剣を回収する。
ライキ「久しぶりに楽しかった。ありがとな。」
ユキト「おう!またいつでも相手になってやるぜ!」
そう言って俺達は拳をぶつけた。
———
視点 アスト
2人が楽しそうに話してる横で僕とシュートはさっきの戦いの話をしていた。
アスト「いやぁ…何かすごいものを見ちゃった気がする…。」
シュート「そうですね…。あそこまで均衡した戦いは初めて見ましたよ!」
アスト「ライキさん…何か印象が変わったよ。」
シュート「えっ?印象ですか?」
アスト「うん…ちょっと怖いイメージあったけど…以外と熱い人なんだね。」
シュート「そうなんですよ!あぁ見えてライキはすごい負けず嫌いなんです!でも、たまにおせっかいなところもあって…ホントに優しい人なんですよ!」
アスト「う、うん、僕は会ったばかりだけど良い人なのは分かるよ。」
ライキの話をしてから、シュートはずっと楽しそうに喋っている。よっぽど彼と仲が良いのだろう。
アスト(そう言えば…ライキさんって何で眼帯をしてるんだろう…?)
僕はつい気になったことをシュートに聞いてみた。
アスト「あのさ、どうしてライキさんは眼帯をしてるの?」
シュート「あ…えっと…。」
そう聞くと、シュートは何故かおどおどしていた。
アスト「どうしたの?」
シュート「い、いや…俺も良く知らないんですよね…。」
いつもと様子がおかしいシュートを見て、僕は困惑してしまった。
アスト(こんなシュート…初めてみた…。何かまずいこと聞いちゃったかな…。)
ユキト「おーい!次はお前らの番だぜ!早くこいよ!」
その時、ちょうどユキトが僕たちを呼びに来た。
シュート「い、今行きます!」
そう言ってシュートは先に行ってしまった。僕も急いでその後ろを追いかけた。
ライキ「何をするんだ?」
ユキト「この二人に短剣の使い方を教えようと思ってな。そうだ、ライキも教えるの手伝ってくれよ!この2人は短剣は初心者だからな!」
ライキ「ん、分かった。」
それから僕たちはユキトとライキさんから軽く短剣の使い方を教えてもらった。シュートはそれなりに使えるようになってはいたけど、僕は全くと言って良いほど扱えなかった。やっぱり軽いといっても、獣人用なので僕が使うには筋力が足りないと僕の様子を見ていたライキさんが教えてくれた。
ライキ「アストは片手剣の持ち方をするんだな。」
アスト「えっ…違うの?」
ライキ「短剣はナイフやダガーと似ていて普通の剣と違ってリーチが短い。だから片手剣とかよりも、もっと近づかないといけないんだそして、そんなに近づくなら斬撃よりも刺突の方が良いんだ。」
アスト「刺突…」
ライキ「あぁ、だから持ち方は逆手持ちだ。」
アスト「あっ、聞いたことある…確か…こう…だっけ…?」
ライキ「そうだ。その持ち方であれば防御やカウンターもしやすいはずだ。片手剣ならその持ち方はしないけどな。」
アスト「なるほど…。」
想像以上に奥が深く、僕は改めて普段から剣を扱っているユキトとライキの凄さが分かった。それからは、2人からいろいろ教わって、なんとか刺突の方法を覚えた。
ライキ「うん…だいぶ様になったんじゃないか?」
アスト「ほ、ホント?」
ライキ「あぁ、よく頑張ったな。」
そう言ってライキは僕の頭をくしゃくしゃと撫でてきた。
アスト(えっ……!?)
僕はその行動にビックリしてしまい、体がビクッとなる。
ライキ「あっ…!?す、すまない。つい癖で…。」
アスト「く、癖…?」
ライキ「き、聞いたかも知れないが、俺はシュートとは昔からの仲なんだが…昔はシュートが何かできた時はこうやって撫でてたんだ。だから…その…その時の癖でな…気を悪くさせたらごめんな。」
アスト「い、いや気にしてないから大丈夫!え、えっと….シュートとはその時から仲が良かったの?」
僕は話を変えるようにライキに聞いた。
ライキ「まぁそうだな。昔はシュートとよく一緒にいることが多かったな。」
アスト「会うのは久しぶりなの?」
ライキ「そうだな。学園にいることは知ってたが、いろいろあってしばらくは話してなかったんだ。」
アスト「そっか。良かったね。久しぶりに会えて。」
ライキ「そうだな。あいつも元気そうで良かった。さて、そろそろ2人の所に行くか。」
アスト「うん…ん?」
その時、僕に背中を向けたライキの首の裏に切り傷みたいなのが見えた。
アスト「その首の傷どうしたの?」
ライキ「傷…?」
アスト「うん、首の裏にあるよ。」
ライキ「っ!それは!」
そう言われた時には、僕は既にライキの首の裏を触ってしまっていた。
ライキ「いたっ…!?」
アスト「だ、大丈夫!?」
ライキ「あ、あぁ…大丈夫だ。たまに森で訓練したりするから、
その時に枝とかで切ったのかもしれない。」
アスト「えっ?で、でも…。」
それにしてはかなり傷が深そうに見える。大分血が固まっているようだが、触って痛みを感じる辺り枝ではそんな傷はできない気がする。
ライキ「ほら、そんなことよりあいつらのところに行こう。」
アスト「う、うん。」
アスト(本当にあれはただの傷なのかな…。)
どこか腑に落ちない気持ちだったが、ライキが大丈夫と言い張っているため、深くは聞かないことにした。
ぐうぅーー……
ユキト「はぁー…結構動いたから腹減ったな。」
アスト「そうだね…もうこんな時間か。」
ライキ「すっかり日が暮れたな。」
シュート「せっかくなので、4人で食べに行きませんか?」
ライキ「4人って…俺もか?」
ユキト「そうだな!せっかくだしライキもこいよ!」
ライキ「じゃあ…そうさせてもらう。」
ユキト「よっしゃ!そうと決まればさっそく行こうぜ!」
シュート「分かりました!」
シュートはいつも通りの笑顔でユキトについていった。ライキもその後ろを追いかけていく。
アスト(あまり考え過ぎは良くないよね。ユキトの時もそうだったけど…誰にでも隠したいことはあるんだから…。)
そう考えながら、僕もユキト達を追いかけた。
———
視点 ライキ
ユキト「いやぁ美味かったな!!」
ライキ「そ、そうだな。」
アスト「…。」
ユキト「ん?どうしたんだ?」
シュート「い、いや…何でも…。」
俺たちは城下町に向かって食事を済ませていた。俺は初めてユキトたちと一緒に食事をしたが…ユキトの食った量に俺は驚きを隠せなかった。この店は学生なら、学園が食事代を負担してくれるという店なので実質食べ放題なのだが…もし自分たちで払うことになっていたらとんでもない金額だったと思う。
アスト「あの体にどうやってあの量が入ってるんだろう…。」
隣にいたアストがボソッと呟いた。それは俺どころか、多分見ていた全員が思ったはずだ。
ユキト「にしても久しぶりにこんなに食ったな。俺はちょっと運動してから戻るぜ!アストたちは先に帰っててくれ!」
アスト「分かった。先に行ってるね。」
ライキ「あっ、俺も本を返してから帰るから、先に2人で行っててくれないか?」
シュート「分かった!じゃあねライキ!」
ユキト「またな!」
アスト「おやすみ!」
ライキ「あぁ。またな。」
そう言って俺は城下町の方にある図書館へと向かった。
カラン
音が鳴ったと思うと、首につけていたペンダントがまた落ちてしまっていた、
ライキ(またか?最近よく落とすな…。)
俺は落としたペンダントを拾いあげた。よく見てみると、紐が少し古くなってボロボロになって切れてしまっていた。
ライキ(これが原因か。新しい紐を買っておかないとな。)
俺は無くさないようにズボンのポケットに入れた。
ライキ(さて、さっさと返して…)
??「被験体がいる場所はここか。」
その時、俺の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
ライキ「い、今の声は…!」
すぐさま声の方向を見ると、俺は反射的に姿を見た瞬間すぐに物陰に隠れた。
??「この学園にいるのか。」
??「そのようですね。」
ライキ(な、なんであいつらが…!ま、まずい…。まさかこんなところにまで来るなんて…!早くシュートにも教えないと…!)
俺はすぐにでも動きたかったが、体がガクガクと震えているのに気づいた。
ライキ(な、なんで…くそっ…早く行かないと行けないのに…!)
何故動けないのかは分かっていた。それはあいつらに対する…恐怖だった。
??「見つけたぞ。被験体。」
ライキ「なっ…!?」
声が聞こえた瞬間、口に布のような何かをあてられていた。咄嗟のことで布から発せられていた匂いを吸ってしまい、即座に眠気に襲われた。
ライキ(し、しまった…まずい…眠気が…。)
カラン
ポケットから何かを落とした音と共に俺は意識を失った。
??「対象の捕獲を確認。基地に帰還する。」




