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輝星のグランギルド  作者: yuuberu
1章 学園編
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第1話 入学式 前編

新年明けましておめでとうございます。

アスト「うーん…眠たい…。」


ついに入学式の日がやってきた。パッと時計を見ると、まだ入学式の時間までかなり余裕があった。


アスト(行く準備でもしておこうかな…あれ…何か動きにくい…?)


そう思いながら横を見ると、ユキトが隣で僕を抱いて寝ていた。


アスト(あ〜なるほど、ユキトがいたんだ。通りで動けない訳だね。…ん?んー!?!?ちょっと待って!?)


僕は大声を出しそうになったが、なんとか堪える。だけど、動揺までは隠しきれない。知らない仲じゃないけど、いきなり抱きつかれて眠るとか普通ならおかしすぎる。


アスト(と、とりあえず何とか抜け出して…って力強っ!?)


ユキトは自身の翼で僕を覆って寝ているため、完全に僕が動けないようにがっしり固定されている。


アスト(い、いやまずはどうしてこんな状況になっているかだ。落ち着け落ち着け…確か昨日の夜は姉さんたちに手紙を書いていて…)


どうしてこんな状態で寝ているのかを思い出すために、必死に記憶の中を探る。出来事は昨日の夜に遡る。



———



アスト「あれ…僕何してたっけ…。」


ゆっくり顔をあげると、書きかけの手紙が目に入った。どうやら手紙を書いている最中に寝落ちしてしまったみたいだ。


アスト(うーん…まだ全然書けてないな…。でも明日は入学式だし…仕方ない。手紙の続きを書くのは今度にしよう。)


そう思い、紙を片付けようとした瞬間、僕はある違和感に気づいた。


アスト「あれ?ユキトは…?」


隣のベッドを見ると、寝落ちする前までは寝ていたはずのユキトの姿が消えていた。


アスト(どこに行ったんだろう?)


窓から外を見て、ユキトがいないか探してみる。すると、外のベンチにユキトが座っているのが見えた。


アスト(何してるんだろう?)


僕はつい気になり、外に出た。ベンチの方に行くと、ユキトが

うなだれているように座っていた。どこかいつもの元気がないように見える。彼に近づくと、垂れていた耳がピンと立ちあがった。


ユキト「誰だ?…ってアストか。どうしたんだ?」


アスト「いや…寝落ちしてしまったみたいだけど今目が覚めちゃって…。ベッドを見たらユキトがいなかったから何かあったのかなって…。」


ユキト「あー…なるほど。そういうことか。心配かけてごめんな。」


アスト「えっと…何か悩みでもあるの?」


僕がそう聞くと、ユキトの耳がまた垂れてしまった。態度が尻尾にでやすい彼だから、きっと耳にもでてしまうのだろう。だけど、何かがあったというのは確実だった。


ユキト「はは…やっぱ顔にでてたか?」


アスト「顔もだけど…耳と尻尾もだよ。あきらかに垂れてるし…。元気もなさそうだし…。」


僕はユキトの隣に座った。


アスト「僕で良かったら…相談にのるよ?あっ…話しにくいなら無理にとは言わないけど…。」


ユキト「いや…さ…明日入学式だろ?そう思ったらいろいろ込み上げてきてさ…。」


アスト「えっと…緊張してきたってこと?」


ユキト「緊張…か…。それもあるかもな…。」


ユキトがそう言ってから、しばらく長い沈黙が続いた。いつもの明るい彼がここまで落ち込んでいるのを見て、僕はそれ以降何も言えなかった。そもそも、会ってまだ数日しか経っていない仲なのに、これ以上踏み込むのは危険な気がした。僕も彼に話せないことがあるように、ユキトにも話せないことがあるのは当然だ。


アスト(今は1人にした方が良いかも…。)


アスト「ご、ごめんね。僕先に宿に戻ってるよ。」


そう言って僕は立ち上がろうとしたが、ユキトは僕の腕をガシッと掴んできた。


アスト「…ユキト?」


ユキト「わ、わりぃユウ…。その…もう少し隣にいてくれないか…?」


アスト「う、うん…。」


そう言われて僕は再びベンチに座った。


ユキト「やっぱ…似てるな…。」


僕の顔を見ながらユキトは呟いた。


アスト「に、似てる…?」


僕はその言葉に疑問を持った。だけど、僕のその言葉に対して、ユキトは首を振った。どうして首を振ったのかは分からなかったけど、ユキトはポツポツと喋り始めた。


ユキト「俺さ、兄が1人いるんだよ。」


アスト「えっ?ユキトはお兄さんがいるんだ?」


ユキト「あぁ、ずいぶん前に行方不明になったけどな。」


アスト「行方不明…!?」


衝撃な事実を明かされ、僕は驚きを隠せなかった。どうやら僕の想像以上に、ユキトには重い悩みがありそうだ。


ユキト「…兄貴は、俺がまだ小さい時に旅に出たんだ。強くて、優しくて、尊敬してた。」


ユキトの声は、どこか遠くを見つめるように静かだった。夜風が二人の間を抜けていく。


アスト「それって…何か理由があったの?」


ユキト「はっきりとは知らない。兄貴ってホントに冒険が好きだったからな。いつも唐突に冒険に行っちゃうんだ。」


アスト「それで…行方不明に?」


ユキト「そう。そして…俺はこんなことを聞いたんだ。兄貴が行方不明になる前…兄貴はネイチャリー国に行っていたらしいんだ。」


アスト「え…ネイチャリー国?」


ユキト「偶然じゃないんだ。俺がこの学園を志願したのは、兄貴の行方を追いたかったからなんだよ。」


僕は言葉を失った。ただ黙って、ユキトの横顔を見つめる。今まで見せなかった彼の一面に触れて、胸が締めつけられるようだった。


アスト「…ユキトは、お兄さんのことが大好きだったんだね。」


ユキト「……ああ、大好きだった。だから今も、どこかで生きてるって信じたいんだ。」


ほんの一瞬、ユキトの目が潤んでいた気がした。でも彼はすぐに空を見上げ、笑うふりをした。


ユキト「……ごめんな。変な話をしてしまって。」


アスト「ううん、話してくれてありがとう。……僕も、拾われた身だけど、大切な家族がいるから、その気持ちよく分かるよ。」


もし、姉さんが行方不明になってしまったとなれば、僕は一生懸命に探すだろう。きっと、何をしてでも。ユキトもきっとそうしようとしたはずだ。だけど、それでもこの数年間、お兄さんが見つかることはなかった。死んでいるのか、生きているのかも分からない。それはきっと長い間苦しめてくる現実だ。今ユキトがどんな気持ちなのか、僕には分からない。けど、僕はユキトに恩がある。助けてくれたユキトのために、次は僕が恩を返してあげたい。少しでも、彼の力になってあげたいと思った。


アスト「僕も…ユキトのお兄さんを探させてよ。」


ユキト「えっ?」


僕は真剣な眼差しでユキトの目を見る。その目は困惑している様子で反応に困ってそうな感じだった。だけど僕はすぐさま思いを伝える。


アスト「僕は…ユキトの気持ちは分からない。でもいきなり大切な家族が急にいなくなったら、辛いと思う。家族を大切にしたいという気持ちは僕には分かるから。それに、ユキトは一度僕のことを助けてくれたし、次は僕がユキトを助けたい。その…おせっかいかもしれないけど…ダメ…かな?」


ユキト「………」


ユキトは黙っていた。やっぱり、これはユキトたちのことだから、部外者である僕が入るのは違ったのかもしれない。長い沈黙が続き、やっぱりやめようかと思ったその時だった。


ユキト「ホント…やっぱ似てるよな…。」


そう言った彼の目を見てみると、たくさんの涙がこぼれ始めていた。僕はどうしたらいいか分からず、ただただ黙るしかなかった。


ユキト「アストはさ…まだ…兄貴は…生きてると思うか?」


アスト「それは…分からない…でも、死んでいる証拠がないという以上、まだ生きているという可能性は…あると思うよ。」


僕は今の考えを素直に伝えた。確かに数年も姿がなかったら、死んでいるかもとは思うけど、そんな証拠はどこにもないのだ。だから、この世界のどこかで生きているという可能性は、0ではないはずだ。


ユキト「もう…何年も経ってさ…俺はずっと兄貴が生きてるって…信じてたけど…生きている証拠も出てこないんだよ…!それでも…俺は諦めたくなくて…ずっと探し続けてて…でも周りの人はもうこんなに経ったから生きてないとか…諦めろとか…言ってくるんだよ!」


それはユキトの心からの叫びだった。こんなに必死な顔で話す彼を、僕は初めて見た。誰にも言えず、自分の気持ちを隠し続けてきたのだろう。僕は黙って彼の叫びを受け止める。


ユキト「何でみんなすぐ諦めるんだよっ…!?まだ…わかんないじゃないか!兄貴は簡単に死ぬような人じゃないのに…!誰も調べようとしないくせに…何で勝手に死んだって決めつけるんだよ…!!俺はっ…!兄貴が死んだなんて…信じたくないんだよ

…!」


自然と僕も涙が出てきてしまった。誰しも、辛い思いを抱えているなんて分かっていたはずなのに、それはユキトも同じなのに。こういう時に限って、僕は何もしてあげることができない。目の前に辛い思いをしている人がいるのに。


アスト(どうすれば…良いんだろう…。僕も、トラウマができたり、辛い思いをしてきた。その時、何で乗り越えることができたんだっけ…?)


記憶を探る。虚弱体質のせいで、一度は何もかも諦めかけた。辛い思いをしていた。そんな時、助けてくれたのは、姉さんやお母さん、国のみんなだ。みんなが僕に寄り添ってくれた。だから僕は乗り越えることができたんだ。


アスト(なら…僕も…同じことをしてあげれば…)


僕はそう思い、ユキトに近づくと、優しく抱いて頭を撫でた。小さい頃から姉さんやシェリアさんにこうされれば、気持ちは落ち着かせることができた。悩みも、ずっと聞いてくれた。今、僕がユキトにできることはこうやって寄り添ってあげることだけだ。考えてみれば、ユキトはまだ13歳。僕と同じ子供で、まだまだ大人の助けがいる時期だ。それなのに、大人は誰も助けず、ユキトはずっと1人で悩みを抱え込んできた。ならせめて、僕だけでもユキトを助けてあげられる人になりたい。


アスト「……辛かったよね。ユキト。」


ユキト「うっ…あっ…ううっ…」


それ以外、声をかけることはできなかった。だけど、ユキトは僕に身体を預け、胸でずっと泣いていた。


ユキト「ごめん…ごめんアスト…情け無いところを見せて…でも…こうやって話を聞いてくれたり、生きていると思ってくれたのはアストだけだ…。」


ユキトはしばらく泣き続けていた。だけど、さっきまでとは違って、少しずつ表情が明るくなっていた。


ユキト「…さっきのやつだけどさ。お願いしても良いか…?俺と一緒に…兄貴を探してくれないか?」


アスト「…うん!もちろん!」


僕は拳を握りしめてユキトに向ける。ユキトもそれに応えてくれて、2人の約束のグータッチを交わした。ユキトの尻尾が、ほわりと揺れた。少しだけ、安心したような表情が浮かぶ。


ユキト「…よし!もうメソメソするのは終わりだ!明日からは入学式だし、元気に行かないとな!」


ユキトはそう言って勢いよくベンチから立ち上がる。もう彼の背中には、先ほどまでの哀愁は感じなかった。


ユキト「心配かけてごめんな。もう俺は大丈夫だからさ。部屋に戻ろう。風邪をひいたりしたら大変だからな!」


ユキトは僕に手を差し出してくる。僕はその手を取り、立ち上がり、一緒に部屋へ戻った。きっと、ユキトのお兄さんを探すのは難しいだろう。だけど、僕はいずれは世界を旅する。そこでどこかしらで情報が手に入るはずだ。少なくとも、ユキトと学園で過ごす間は、協力してあげたい。




しかし、ユキトのお兄さんの存在が、僕の人生を大きく変えてしまうことを、この時の僕たちはまだ知る由もなかった。




———




そして現在、僕は一生懸命記憶を遡ったが、こんな状況になった原因が分からない。部屋に戻ってからは、お互いすぐに眠ってしまったはずだ。


アスト(ぜんっぜん心当たりない!?というかどうしよう!?この状態でユキトが目を覚ましたら大変なことに…)


ユキト「ん…朝か…。」


アスト(あ…。)


すると、最悪のタイミングでユキトが目を覚ましてしまった。すごい近距離でユキトと目があってしまった。


アスト「お、おはよう…。」


考えた末に僕は挨拶をすることにした。ユキトはしばらく固まっていた。そして、ようやく状況を理解したらしく、どんどん顔が赤くなっているのが見えた。


ユキト「うわぁぁぁぁ!?!?」


部屋の中にユキトの叫びが響き渡った。その後、ユキトは正座をして座っていた。とにかくひたすら謝られた。僕は気にしていないと言うが、そうとう気にしていたらしく、ずっと尻尾や耳は垂れ下がっていた。


ユキト「本当にごめんなさい…。」


アスト「い、いや気にしてないから大丈夫なのに…。」


聞いた話によると、どうやら僕を自分のお兄さんと重ねてしまっていたそうだ。昨日、ずっと似ていると呟いていたので、 どう言うことかと思っていたが、僕の性格とか雰囲気がお兄さんにそっくりらしい。だから、またお兄さんに会えたと思ってしまったそうだ。それで昔は好きだったお兄さんに抱きついて過ごしていたらしく、久しぶりにその気持ちが出てきてしまったそうだ。だけど僕はお兄さんではないので、抱きつかないようにしていたそうだが、我慢ができなかったらしく、こっそり僕のベッドに入って抱きついたそうだ。そうしたら、想像以上に安心してしまったらしく、そのまま眠ってしまったそうだ。これが、今回の事故の真相だ。


ユキト「で、でも…驚いた…だろ?」


アスト「そりゃあ驚いたけど…でもしょうがないと思うよ?だからもうそんな悩まないで…それに今日は入学式なんだからさ。反省してるのも分かってるし、元気に行かないと。」


僕はユキトをなんとか慰める。まさかこんなに落ち込むとは思わなかった。そんなに気にすることなのかな?


ユキト「わ、分かった。とりあえず、学園に行かないと行けないもんな。」


アスト「そうそう、早めのうちに準備をして向かわないと…」


そう言いながら僕は時計を見た。針をみると、入学式の時間まで後数十分程しかなかった。


アスト「うわぁぁ!?」


ユキト「うおっ…!?ど、どうした?」


アスト「まずいよユキト!もう時間がない!」


ユキト「えっ…うわ!?ホントだやべぇ!?」


僕たちは急いで荷物をまとめて宿を飛び出した。そして急いで2人で学園へと向かった。


アスト「はぁ…はぁ…。な、なんとか間に合った…かな?」


ユキト「おぅ…ここまでくればもう大丈夫だ。」


かなり急いだため、ギリギリ間に合ったようだ。しかし、入学の手続きをするため、学園のロビーへと向かっていた僕たちだったが、人の数が多く、なかなか前に進めなかった。


ユキト「迷子になるなよ?」


アスト「うん、気を付けるよ。」


僕たちもなんとか人の波に入っていく。少しでも気を抜いたら波に負けて倒れそうだ。あと結構息もしづらくて辛い。


ユキト「せ、狭いな…。」


かなりぎゅうぎゅうに人がいるため、僕は大丈夫だがユキトは自慢の翼が大きいせいですごく邪魔になっている。なるべく体の前に丸めるようにして小さくするが、それでもぶつかる時はぶつかるし、翼を前にしたせいで腕と手が中にあるため使えなくなってしまった。


アスト(ユキト大丈夫かな…?)


ドンッ


ユキト「わっ…!」


その時、人の雪崩にバランスを崩してしまった狐族の少年が僕の方に倒れてきた。


ユキト「だ、大丈夫ですか?」


??「す、すいません…!」


僕はぶつかってきた狐族の少年を見る。


アスト(え…?)


僕はその少年を見て驚いた。クリーム色をした髪、そしてふわふわしていそうな狐の耳。だが、普通の狐族とは違い、尻尾が9つあった。


アスト(あれ?もしかして…。)


ユキト「アスト!止まってたら大変なことになるぞ!そいつも連れて一旦こっちに避難しようぜ!」


アスト「う、うん!」


ユキトから呼ばれ、僕は彼がまた倒れないようにしっかり手を握った。


アスト「とりあえずあっちに避難しましょう。」


??「は、はい!」


僕は彼の手を引いてゆっくり前と進む。そこで一足先に抜け出したユキトが、僕のもう片方の手を引っ張った。


ユキト「ったく、ホントに迷子になりそうだぜ。」


なんとかロビーの受付へとたどり着いた僕たちは、それぞれ手続きをすませら人の邪魔にならないように壁側にそれていた。


??「あ、あの、さっきはありがとうございました。」


僕の隣にいた狐族の少年は丁寧にお辞儀をした。


アスト「いえ…そんな…気にすることじゃないですよ。」


??「いえ、おかげで助かりました。」


ユキト「あんなに人がいたら大変だよな。怪我とか起きなくて良かったぜ。それよりお前、狐族…だよな?」


ユキトも彼のしっぽを見て違和感を感じていたようだ。


シュート「はい、俺はシュート·フォクセルです。狐族なんですけど、ただの狐族じゃなくて九狐って言う種族なんです。」


アスト「えっ…!?九尾!?」


九尾とは狐族の中でも強い力を持つ種族だ。その強大過ぎる力に狐族は九尾に忠誠を誓う人も多いんだとか。


アスト(九尾は稀少種とされている程、とても珍しい種族なんだよね…。まさかこんなところで会えるなんて…。)


ユキト「へぇー、俺九尾は初めてみたぜ…。」


シュート「やっぱりそうですよね。でも俺も、人族と混合種は初めて見ました。えっと…。」


アスト「あっ、僕はアスト·スターライです。アストって呼んでください。」


ユキト「俺はユキト・アマサワだ、ユキトでいいぜ。よろしくな。」


シュート「こちらこそよろしくお願いします。」


アスト「シュートは1人でこの学園に?」


シュート「はい、俺は隣の国から来たんですけど、小さな村なのであまり同年代の人がいないので…。」


ユキト「なるほどな、じゃあせっかくだしお前も一緒にこいよ!1人じゃいろいろ大変だろ?」


シュート「え?良いんですか?」


ユキト「おう!アストもそれでいいよな?」


アスト「うん。大丈夫だよ。」


シュート「あ、ありがとうございます!」


ユキト「よし!じゃあさっさと受付を済ませて行こうぜ!」


そう言って歩き出したユキトだが、直後すぐに止まった。


アスト「あれ?どうしたの?」


ユキト「受付が終わったら次ってどこに行くんだ?」


アスト「次は大講堂だよ。」


僕は壁に貼られている壁紙を指差した。


ユキト「ん〜…とりあえず、みんなが進んでる方に行けば良いってことだよな!」


アスト「まぁ…そういうことだね。」


僕たちは入学式が行われる大講堂に向かうべく廊下を歩いていた。ここまでくるとロビーより人は少なくなっていて、ゆっくり学園を見る余裕もあった。この学園は本当に広い。お城かと言うほど建物事態が大きく、廊下も長さが半端ないため、移動だけでも大変である。だが色んな国からくる生徒を受け入れるためには、やはりこのくらい広くないといけないのだろう。


シュート「あの…2人はどういう関係なんですか?」


ユキト「俺とアストは友達だぜ!」


とユキトは僕に肩をくんできた。もちろん僕もそう思っている。短い関係だけど、それなりにお互いのことを理解できていると思っている。


アスト「ま、まぁね。」


しかし、僕はつい顔がひきつってしまう。別に嫌と言う訳ではない。むしろユキトがそう思ってくれていて嬉しかった。だけど…


アスト(友達と思ってくれるのは嬉しいけど…翼のウロコが体にちくちく刺しててちょっと痛い…。)


しかし言うのも可哀想なので、ここは我慢することにした。ユキトの翼のウロコはしっかりしていて、結構尖っているところもある。


シュート「そうなんですか?」


アスト「う、うん。ユキトはこの学園で初めての友達だよ。」


シュート「えっ?会ったのは最近なんですか?」


ユキト「おう!2日前に初めて会ったんだぜ。」


シュート「そうなんですか?それにしてはアストさんとユキトさんってお互いのことを分かりあってる見たいに仲良くしてるなぁって思ったんですけど…。」


アスト(そ、そんなに仲良く見えるかな?)


と思い、僕はユキトの顔を見た。ユキトも不思議に思っているらしく、僕の顔を見て首をかしげていた。でも彼のことを信頼しているのは確かだ。


ユキト「周りから見たらそう見えるのか?まぁ確かに俺はアストのことは信頼してるけどな!」


アスト「あ、ありがとう。でも…そんなこと言われたことないから恥ずかしい…。」


ユキト「というか、俺たちもシュートタメ口で話してるから別に敬語で話さなくてもいいんだぞ?」


シュート「そ、そうですか?」


アスト「そうだよ。それにさん付けもしなくていいよ。僕らも呼び捨てで呼んでるから。」


シュート「いやぁ…俺、敬語で話すのが癖になってて…。」


ユキト「そうなのか?ならしょうがないか、シュートが話しやすいような話し方でいいぜ!」


シュート「ありがとうございます。そうさせてもらいますね。」


話している間に人が少なくなってきたので、受付済ませて長い廊下を歩いてやっと大講堂につくと、既にたくさんの生徒が、用意されていた椅子に座っていた。僕たちも近くの席に座ると、すぐに入学式が始まった。


アスト「すごい人の数…。」


僕はそっと辺りを見渡す。1000人、いや2000人はいるだろうか。ロビーで集まっていたたくさんの人達が、全員同じ空間にいることに僕は信じられない。


シュート「ここにいるみんなが同級生なんですね…。」


シュートも僕と同じようで驚きを隠せないようだ。きっと流石のユキトも驚いているのでは…


ユキト「…眠くなってきた。」


アスト「早すぎない!?」


ユキトはユキトだった。入学式はどんどん進んでいくが、ユキトは既に眠たくなったらしく、うとうとしている。と言っても入学式が始まって5分くらいしかたっていないけど。


「つづきまして、学園長からの挨拶です。」


アスト「ユキト!せめて学園長のお話くらいはちゃんときこう?」


僕は眠くなっていた彼をつついて起こす。


ユキト「おう…。」


アスト「もう…しょうがないなぁ…。」


まだ眠そうなユキトの体を今度は揺さぶってみる。何とか眠らないように頑張っているようだが、かなり厳しそうだ。


シュート「あ、あれが学園長…!」


シュートの声で僕も前を見る。僕は前にたった女性を見て驚愕した。見とれるほどの美しい髪。スラッとした体。誰がどう見ても美人と言いそうな、ライオン族の女性が立っていた。身に付けている服についた宝石は、どれも彼女に合っていて、見ただけでも貴族というのが分かる。


学園長「新入生のみなさん、こんにちは。私はこの学園の学園長をつとめるフェルミール·ハウエルです。」


アスト「どこかの貴族の人かな…。」


僕がそう呟くと、シュートは小さい声で僕に耳打ちをしてきた。


シュート「えっ?知らないんですか?フェルミール様はこの国の統括をしている女王様ですよ。」


アスト「えぇ!?」


シュートの話に、僕はつい大きい声が出そうになった。まさか女王様直々に学園長をしているとは思わなかった。女王様と言われると、僕はお母さんのことを思い出した。お母さんはいつも部下の話を聞いたり、玉座で国民の悩みを聞いたり、国の経済をまわすためにいろんな国に行ったりしていた。そんなお母さんの様子を、僕はたまに近くで見ていた。ホントに忙しそうで、僕と会話をするときは食事の時がほとんどだった。だから僕は女王としての仕事をしながら学園長もつとめているこの国の女王様が本当にすごいと思った。


学園長「……………

この学園に入って分からないこともたくさんあると思いますが、友達をつくったり、勉学に励んだりして、よりよい学園生活を送ってくださいね。では、私からは以上です。」


アスト(あ…終わった…。)


驚きで途中から話を聞いていなかった。ユキトにあれほど注意したのに、これじゃ示しがつかない。そのユキトを見るとうつむいて完全に眠ってしまっていた。


アスト(…ま、いっか。)


入学式はまだ続くが、もういいかと僕は苦笑して、ユキトを起こすのを諦めた。その後、入学式は担任紹介や、学園の説明を聞いて終わった。この後は、今から廊下に張り出されるクラス表を見て、各自教室へと向かう。そこで学園の施設の詳細と寮についての説明が行われる。さっそく周りにいた人達は席を立ち、クラス表を確認すべく移動を開始した。僕とシュートも確認するために立ち上がったが、ユキトはまだ眠っていた。僕はいまだに寝ているユキトに声をかけた。


アスト「ユキト。入学式終わったよ。」


ユキト「ん…?」


シュート「ユキトさん…ずっと寝てましたね…。」


ユキト「わ、悪い…。」


目をこすってあくびをしながらユキトは立ち上がった。教室に移動するために、クラス表を確認することをユキトに伝え、僕たちも移動を開始した。廊下にいくと案の定、人だかりができていた。


ユキト「アストとシュートは、ここで待っていてくれないか?

   俺が2人の分も確認してくるぜ。」


アスト「え?ホント?」


ユキト「あぁ、俺が寝てなければすぐに確認にいけたのにさ。」


先ほどの寝ていたことにユキトは責任を感じていたようだった。

別にそんなことでユキトを責めたりしないのに。


アスト「そこまで気にすることないよ?ユキト。」


シュート「そうですよ。俺たちもユキトさんのこと起こさなかったですし。」


ユキト「いや、良いんだ、それにこんなに人が多いと、アストとか迷子になりそうだしな。」


アスト「い、いやだから迷子になんてならないよ!!」


ユキト「はは、まぁ良いから2人はここで待っててくれ!」


そう言ってユキトは人混みの中に消えていった。


アスト「大丈夫かなー…。」


シュート「ユキトさんなら大丈夫じゃないんですか?」


確かにユキトはあぁ見えてしっかりしてる部分はあるけど、僕が心配しているのはそこではなかった。


アスト「いや…翼が…」


シュート「…あっ。」


シュートも気づいたようだ。多分邪魔になってると思うが、本人から行ってしまったし、僕は大丈夫だと信じるしかない。


アスト「まぁ…ユキトは僕と違ってしっかりしてるから…多分…なんとかなるかな…?」


シュート「ですね。そう信じましょう。それにしても、ユキトさんってモテそうですよね。」


アスト「確かに…。」


少しおっちょこちょいなところがあるユキトだが、顔は結構いいし、ちゃんと気遣いもできるし、敬語は苦手のようだがそれを気にしなければ、性格もふくめると、ユキトはかなりモテそうである。


シュート「アストさんって、ユキトさんとどう出会ったんですか?この国で出会ったのが初めてなんですか?」


アスト「うん、ちょっと前に知り合った感じかな。話すとちょっと長くなるんだけど…良い?」


シュート「はい、ぜひ聞きたいです!」


僕はユキトと出会った成り行きを話したいっしょにモンスターと戦ったことや、ここ数日ユキトとどう過ごしていたのか、そして、ついでに僕たちの出身についても話した。


シュート「そんなことが…なるほど。2人は数日いっしょに過ごしてたんですね。だからあんなに仲が良かったんですね。」


アスト「今思えば、いっしょに過ごした時点で僕もユキトも、お互いに心をゆるしていたのかもね。」


シュート「あと気になったのは、黒いオークもですよ。つい先日に暴れていた黒いオークが撃破されたって国中で有名になってたんです。まさかそれを倒したのがアストさんとユキトさんだったなんて…!大人でも苦戦するはずのモンスターに勝てるなんてすごいですね!」


アスト「ユキトがいてくれたおかげだよ。ユキトがいないと勝てなかったし…。」


ユキト「おーい!アスト、シュート!」


大きな声をだして、ユキトが戻ってきたなにやら嬉しそうにしっぽを振っている。


ユキト「やったな!俺たち3人とも同じクラスだったぜ!」


シュート「え!?ホントですか!?」


この学園はクラスをアルファベットを使って表されている。つまり、1―Aから1―Zの26クラスあるということだ。そのなかで2000人を越える人たちから僕たち3人が同じクラスになれるというのはものすごく運が良い。


アスト「クラスは何組だったの?」


ユキト「俺たちはAだったぜ!」


シュート「さっそく行きましょうか。」


僕たちは1―Aの教室に向けて歩きだした。


アスト「そう言えば1―Aの教室ってどこなの?」


ユキト「俺は知らないぜ?」


シュート「俺も知らないですよ?」


3人「「「………」」」


まさかの誰も知らなかったので、近くにあった学園の地図を確認して、僕たちは教室に着くことができた。


ユキト「ここだな。開けるぜ。」


ガラガラ


教室の扉を開けて、僕たちは中に入った。


アスト「うわぁ…ここにいるみんなクラスメイトなんだ…。」


実際に教室に入ってみると本当に今から学園生活が始まるんだと実感する。


ユキト「うーんと…おっ、ちょうど席が3つ空いてるな。あそこいこうぜ。」


基本的に座るイスは自由らしく、僕たちは近くに空いているイスに座った。



ざわざわ…



すると、周りにいた生徒たちは僕たちの方を見てざわつき始めた。


ユキト「ん?なんか騒がしいな?どうしたんだ?」


アスト「さ、さぁ…?」


言葉を濁したが僕は理由が分かっている。この国ではめったに見ない人族と、とても小さい確率で生まれる混合種。そして、狐族では最強の種類で数が少ない九尾。そんな珍しい人が3人もいて、しかも一緒にいるのだ。絶対に注目をあびるだろうと僕は教室に入る前からなんとなく分かっていた。



———



やがて、教室にあるイスは全てうまる。あともう少したったら、先生が来て授業が始まるはずだ。と言っても、最初は学園についての説明や自己紹介で終わると思うけど。


先生「皆さん、こんにちは。」


すると、扉が開き犬族の、かなり年をとった先生であろう人物が教室に入ってきた。少し歩きにくそうにしながら杖を使って

ゆっくり歩いて教卓の前に立つ。パッと見ただけでも70歳はこえていそうだ。


先生「皆さん、初めまして。ご入学おめでとうございます。私はこのクラスの担任をつとめさせていただきます。フォンゼル・ドレイスです。よろしくお願いします。」


フォンゼル先生はぎこちない動きで礼をした。


先生「さて、本日はこの学校の説明と皆さんに1人1人自己紹介をしてもらおうと思います。それでは1人ずつお願いします。」


フォンゼル先生の指示で1人ずつ挨拶を始める。


アスト「うっ…自己紹介か…。」


ユキト「どうしたんだ?」


アスト「上手く言えるか心配で…。」


シュート「気楽にいけば大丈夫ですよ。」


ユウ「そ、そうだね。」


自分の番が来て、噛みそうになりながらも何とか喋ることができた。全員が終わったところで、先生は次に学校の説明を始めた。そこそこ長い話だったため、周りをみると何人か眠たそうにしていた。ユキトはしっかり起きて話を聞いていた。


先生「さて、今日はこれで終わりますが、最後に寮について説明します。皆さん荷物を持ってついてきてください。」


先生の指示にしたがい僕たちは荷物を持って、フォンゼル先生の後ろをついていった。この学園は校舎だけでなく、寮もとてつもなく広い。ちょっと学園から離れたところにあるが、1つの寮につき、部屋が300部屋あるらしい。だから1人1つずつ部屋がある。全員が集まったことを確認した先生は、寮の説明を始めた。その後も各個室の話をしたり、みんなへの部屋の鍵を手渡したりした。


先生「ではみなさん今日はゆっくりして、また明日会えることを楽しみにしています。それでは今日はこれで解散とします。」


先生の説明が終わった。すぐさま他のクラスメートははしゃぎだして各々部屋に向かったり、寮の散策を始めたりしている。


ユキト「俺たちも散策しに行かないか!?」


ユキトも広い寮をみてテンションが上がっているようだ。ちなみに僕は城に住んでたのもあってそこまでテンションが上がることはなかった。


アスト「そうだね。まずは荷物を置いてから…。」


先生「お楽しみのところすみません。アスト君とユキト君。」


声をかけられ後ろを振り向くと、そこにはフォンゼル先生が立っていた。


アスト「フォンゼル先生?僕たちに何か用ですか?」


先生「申し訳ないのですが…実はアスト君とユキト君にお話がありまして…。」


ユキト「え?俺たち?」


先生「はい、今日この街のギルドからとある話を聞きまして…。

あの黒いオークの話です。」


それを聞いて僕とユキトはお互いの顔を見る。


先生「申し訳ないのですが、学園長がそれについて聞きたいことがあるようなので、学園長室に案内するので、ついてきていただけますか?」


アスト「わ、分かりました。ごめんねシュート。ちょっといってくる。」


シュート「はい、俺は自分の部屋にいますね。」


先生「そうだ。シュート君は二人の荷物を部屋のところに持っていってくれませんか?」


シュート「分かりました!」


ユキト「悪いなシュート、頼んだぜ。」


荷物をシュートに預けて、僕たちはフォンゼル先生の後ろをついていき、学園長室へ向かった。

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