第10話 フレーノ村へ
そして数日後…
約束通り依頼を休んで、早朝にいつも通りの4人のメンバーが集まった。
ユキト「それじゃ、行こうぜ!」
ユキトはいつも以上にテンションが高い。尻尾も大きく揺れているし、ずいぶん楽しみにしていたようだ。
アスト「そういえば、フレーノ村にはどうやって行くの?かなり距離があるよね?」
ユキト「ん?もちろん歩いて行くに決まってるだろ?」
アスト「…え?」
ユキト「…ん?」
これは多分、本気でそうしようとしている人の目だ。からかおうとか、とぼけているのではなく、ユキトは本気で歩いて行こうとしているつもりだ。
アスト(…絶対無理!?)
フレーノ村は、ネイチャー国から歩いていくなら4時間程はかかる。とても歩いていくような距離ではない。せめて、馬車とかで移動しないと僕は特に絶対に倒れる。
アスト「さ、さすがに体力持たないんじゃない?歩きなんて…せめて馬車をを呼んだりとか…。」
ユキト「そうか?フレーノ村くらいなら全然歩いていけると思うぜ?な、シュート、ライキ。」
シュート「そうですね、俺は全然大丈夫ですよ。」
ライキ「俺も、フレーノ村くらいなら行けるぞ。たまにフレーノ村まで走ったりする時もあるしな。」
ユキト「それに、馬車とか使っても良いけど、そこであまりお金は使いたくないんだよな。どうせお金を使うなら、向こうで甘味を買ったりしたいしさ!」
アスト(まぁ…それはそうだけど…。)
え、これは僕の方がおかしいのか?と勘違いしそうだった。そもそも人族と獣人では身体の作りも違うし、仮に僕が虚弱体質じゃなかったとしても、流石にそんな距離を歩くのはばてると思う。獣人にとってはこれが普通なんだろうし、こればっかりは種族の壁なので仕方ない。
アスト「さ、流石に…僕は…ちょっと体力ないし…。」
ユキト「大丈夫だって!アストにとってはきついのも分かってるから。だから俺がアストを背負って行けばいいんだ!」
ユキトは自信満々にそう言った。いや、まあ、確かにそれならいいかもしれないけど。それでもユキトの負担が大きいし…いや、ユキトは体力バ…おばけなので、何とかなるかもしれない。でも流石に申し訳ない気持ちもある。
アスト「分かった、じゃあ…途中までは頑張って歩くよ。それでもし動けなくなったらお願い。じゃないとユキトがずっと背負うのも大変だし。」
ユキト「そこは大丈夫だ。3人で話してアストを交代しながら背負うことにしたからな。」
アスト「…はい?」
シュート「そういうことです!アストさんなら俺でも背負えるので、安心してください!」
ライキ「俺は背負ったことあるし、大丈夫だ。全然問題ない。」
アスト「…。」
僕は開いた口が塞がらなかった。普通に馬車とかで移動をすればそんな苦労もする必要ないのに。そこまでしてお金を使いたくないのか。
それとも、その考え方が獣人にとっての普通なのか…もし後者なら、流石にショックを受けるかもしれない。
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僕たちはフレーノ村へと歩き出した。そして当たり前だが、僕はユキトの背中に乗っていた。最初のうちは迷惑をかけないようにと頑張って歩いていたけど、日差しが結構強かったのですぐバテてしまった。顔も赤いし、視界も少しぼやけるし、早く虚弱体質なんて治したい。
アスト(獣人って何でこんなに強いんだ…)
ユキトが僕を背負ってかなり歩いてきたが、息切れもせず、余裕そうに歩き続けている。
ライキ「そろそろ交代するか。」
ユキト「おう、じゃあ任せるぞ。」
こうやって、たまに背中に乗っているひとが変わる。でもライキもシュートも僕を背負いながら歩いても余裕そうだった。
ライキ「体調はどうだ?」
アスト「うん…大丈夫…だいぶ楽になってきたよ。」
ライキ「あまり無理するなよ、俺たちがついているんだ。」
ユキト「そうだぜ、いつでも頼って良いんだ。1人で頑張ろうとかするなよ。」
アスト「でも…こうやって迷惑かけちゃってるし…」
せっかくみんな楽しみにしていたのに、こうも苦労をかけてしまうのが申し訳ない。それに、僕が元気がないせいで雰囲気も悪くなってしまう。フレーノ村に行くのは僕も楽しみにしていたけど、これだったら諦めた方が良かったのかもと考えてしまう。
ユキト「良いんだって、こうなるのは分かってたって言っただろ?それに、今回は俺が無理やり連れきたようなものだし…結局アストに辛い思いさせてるしな…だから、これくらいはやらせてくれよ。」
僕はユキトに誤解をさせないために、急いで訂正をする。
アスト「む、無理やりなんかじゃないよ…!僕は本当に行きたいって思ってたから、だから誘ってくれて嬉しかったし…」
ユキト「じゃあなおさらだな!俺たちはアストと一緒に行きたかったし、そんなアストに辛い思いをしてほしくないんだ。だから、こうすればアストも辛い思いをせずに楽しめるだろ?」
そう言ってユキトは笑った。まさかユキトがそこまで僕のことを考えてくれているとは思わなかった。せっかくそんなに考えてくれていたのに、僕はその思いを自分から壊していたんだ。
シュート「もしアストさんが断ってきたら、ユキトさんは行かないつもりでしたもんね。」
ユキト「だって俺たち4人で<星結の星座>なんだ。1人でも欠けてたらギルドじゃないだろ?やっぱり俺たちは4人じゃないとな!」
アスト(ユキト…)
僕はつい涙を流してしまった。虚弱体質なのに、ここまで優しくされたのは初めてだ。
ライキ「…アスト、泣いてるのか?」
涙でライキの肩を濡らしてしまい、泣いているのがバレてしまった。
ユキト「あっ…!?えっ!?そ、そうなのか!?俺何か言っちゃったか!?」
アスト「い、いや…その…ごめん…僕がこんなのなせいで、いつもみんなに迷惑をかけてしまってるって思っちゃって…だからここまで優しくされたのが嬉しくて…」
ユキト「そういうことか、でも今更だろ?俺たちは仲間だし、助け合うのは当然だ!」
ライキ「俺もアストには魔法を教えてもらったり、一緒に勉強したりといろいろ助けてくれているからな。こういう時くらい頼ってくれ。」
シュート「それに迷惑なんかじゃないですよ!俺たちはやりたくてやっているんですから!」
そう言って微笑む3人を見て、僕は安心した。前までは虚弱体質のせいで友達と遊んだりすることは難しいと考えていたけど、みんなはそんな僕のためにいろいろ考えてくれている。それだけでも僕は幸せだ。
アスト「ありがとう…みんな。」
ユキト「気にすんなって!せっかくなんだから楽しもうぜ?」
アスト「…うん。」
そう言って頭を撫でてくるユキトはまるでお兄さんのようだった。不思議と安心する暖かさがある。
ユキト「結構良いペースで進めてるし、あと1時間ってところだな。頑張るぞ!」
シュート「おぉー!」
3人はまた元気に歩き出す。いつか、僕もこれくらい強くなって、みんなと一緒に歩けるようになりたい。そうすれば、きっともっと楽しいと思う。
そう思っているのだけど…
アスト(後…1時間もあるのか…)
まだまだこんなことを考えてしまうので、かなり先の話になりそうだ。
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あれからかなり歩き、ついに僕たちはフレーノ村へと辿り着いた。
シュート「ついたぁー!!」
シュートが嬉しそうに声をだした。
アスト「ここがフレーノ村…」
木々に囲まれているフレーノ村はいろんな自然の匂いがするが、ところどころで甘い匂いが漂ってくる。村の中も祭りに向けてのためか活気付いていて、村の人が忙しなく動いているのが見える。
ユキト「おぉー!もう露店がたくさんでてるな!」
早速ユキトは食べ物に反応した。でも確かにここまで良い匂いがするし気持ちはすごく分かる。僕も少しお腹が空いてきた気がする。
シュート「ライキ、あっちに果物の焼き菓子があるよ!」
ライキ「おい、あんまりはしゃぐなよ?」
と、注意しているライキだがさっきから目線が甘味にいっている。メンバー全員甘いものには目がないししょうがないと言えばしょうがない。
アスト「みんなで村を散策してみようよ。」
このままだといろいろ買いかねないので、僕はそう提案した。
ライキ「そうだな、2人ともいくぞ。」
ユキト「えぇ〜、買って食いながら行こうぜ?」
アスト「ダメ、ユキト絶対同じものをたくさん買うでしょ。買える物には限りがあるんだから、いろいろ見て見ようよ。」
シュート「いろんなものを食べる方がきっと楽しいと思いますよ。」
ユキト「なるほど…それもそうだな!そうと決まれば早く行こうぜ!」
そう言ってユキトは走り出してしまった。
アスト「あっ…!?待ってユキト!?」
ライキ「相変わらずだなユキトは。」
シュート「だね、俺たちも追いかけよう。」
見失う前に僕たちも急いでユキトを追いかけた。




