婚約者選抜レースで数合わせの私は売り飛ばしておさらばです
シジポドル王国第一王子アーウィンが一六歳を迎えた。
容貌も才気も優れているとされるアーウィンは王となりて後、シジポドル王国のより一層の繁栄をもたらすだろうと言われている。
当然その婚約者が誰になるのかは、皆の注目を集めていた。
五人の伯爵令嬢がその座を争っている。
◇
――――――――――イライザ・ワインバーグ伯爵令嬢視点。
アーウィン殿下の婚約者候補に選ばれた時は嬉しかったです。
殿下の隣に立つことを夢見ていましたから。
だってアーウィン殿下は素敵な貴公子ですものね。
モチベーションを高く保ってお妃教育に望みました。
でもダメでした。
殿下の婚約者候補五人の中で、わたしの能力が一番低いと考えざるを得ないです。
最も年少ということもあるでしょうが。
わたしにあるのは可憐だ、愛らしいと言われることの多い顔だけなのかなあと、悲しくなりました。
四人のお姉様方はすごかったです。
ああいう各分野に優れた方達と一緒に学び、親しくなれたというのは嬉しいことですね。
またわたしも最後までお妃教育に食らいついていけたということは、自分のことながら褒めてあげたいです。
とても得るものが多かったと思います。
さて、どなたがアーウィン殿下の婚約者に相応しいかですが。
正直わたし以外のどなたでも立派にアーウィン殿下の婚約者が、そして将来の王妃が務まると思います。
しかし誰がナンバーワンかと言われれば、わたしの頭の中には明確に一人の名前が浮かびます。
ペイズリー様です。
ペイズリー様は何というか、自然体なのです。
とても余裕がある感じで、わたしも挫けそうになった時、何度も励ましていただきました。
視野が広いというのですかねえ?
大変目配り心配りのできる方で。
わたしがお妃教育を完走できたのはペイズリー様のおかげなのです。
わたしの持つオーブはペイズリー様に捧げました。
――――――――――オードリー・キューザック伯爵令嬢視点。
アーウィン殿下と年回りの合う令嬢が、侯爵家以上にいないというのは元々わかっておりました。
ならば殿下の婚約者は伯爵家から選ばれるのであろうと。
殿下より一つ年上のわたくしも候補に挙げられる可能性が高いと、早くから準備していました。
アーウィン殿下はとても素敵な殿方なのです。
見目麗しく落ち着き払っていて、成績が優秀で剣の腕も立つという。
美的感覚には自信のあるわたくしから見ても、まさに完璧王子!
ああ、あの方の婚約者になれたなら、何と素晴らしいことでしょう!
五人の婚約者候補に選ばれた時、一層気を引き締めないといけないと思ったものです。
アーウィン殿下の婚約者の座を勝ち取るために。
お妃教育は五人合同で受けます。
すると皆さんの人となりというものがよく理解できてくるのですね。
わたくしの関心は主に一人の方に向いておりました。
ペイズリー様です。
ペイズリー様は一言で言えば『決まっている』のです。
ただそこにいるだけで。
決して目立つわけではないのですが、存在感があるといいますか。
王立学院のマナー講師が言っておりました。
『ペイズリー・サザーランドさんの笑顔はわざとらしさがありませんね。淑女らしいとは言えないものの、他人を不快にする要素がない以上、不合格点はつけられません。でも真似ようとしてはいけませんよ』
そう、ペイズリー様の所作にはわざとらしさがないのです。
ナチュラルな笑顔に惹きつけられます。
もしアーウィン殿下の隣にペイズリー様がいらしたら。
ピッタリだと考えてしまう自分がいます。
ペイズリー様には勝てないと思う反面、アーウィン殿下とペイズリー様に導かれるシジポドル王国の未来には胸躍ります。
それこそが正解なのだと信じられます。
ええ、残念ではありますがわたくし、悔いはありません。
わたくしの持つオーブはペイズリー様に託しました。
――――――――――グラディス・ネイズビット伯爵令嬢視点。
アーウィン殿下は一目見て格好いい王子だ。
それでいて剣術でも一流ときている。
強き者に憧れるというのはある意味本能に近いのではあるまいか?
我もまたアーウィン殿下の婚約者候補五人の中に選ばれた。
つまり四人蹴落とせば、我はアーウィン殿下の婚約者になれるのだな?
勝ち負けがわかりやすいのはいいことだ。
他の候補者も音に聞く令嬢だ。
優れていることはわかっているが、体格と腕力なら我は負けない。
しかし婚約者選びが力比べになるかな?
甚だ疑問だった。
しかしすぐにチャンスは訪れた。
『つまり各候補者に一つずつ配布されたオーブを多く集めた者が勝ちであると』
『その通りです』
アーウィン殿下の婚約者の座奪取レース開始時のオリエンテーションで、こんな説明を受けた。
要するに自分がレースから降りる時、候補者の誰かにオーブを渡す。
お妃教育終了時に複数人が残っていた場合、自分の所持するオーブの内一つを誰かに渡す。
最終的に最も多くのオーブを所持していた者が、アーウィン殿下の婚約者たる資格を得る、ということだ。
落ち着いてルールを確認する。
ふむ、最終的に所持オーブ数が同じということもあり得るわけだな。
その場合は陛下かアーウィン殿下本人かが選ぶのかも。
それよりも我が注目したのは、配られたばかりの現在は全員のオーブのありかがわかっているということだ。
持ち帰って以降は各自が大事に保管するだろうけれど。
つまり今この場で候補者全員を殴り倒しオーブを奪取すれば、我の勝ちということになるのではないか?
これはルール上の穴なのか?
我が勘違いしているのではないか?
もう一度ルールを読み直しても、倒して奪い取るのがダメということは書いていない。
イケる……と思った。
しかしすぐに視線を感じた。
ペイズリー様だ。
目が合うと会釈してくれたが、その後も我から視線を離そうとしなかった。
他の候補者がじっとオーブを大事そうに見ていたのとはえらい違いだ。
ペイズリー様には全く隙がなかった。
そういえばサザーランド伯爵領には魔物がいるんだったな。
我の邪な気配を察したのか。
敵わんな。
その後はお妃教育期間中を通して、二度とチャンスはなかった。
オリエンテーション時に行動を起こせなかった我の負けだ。
だが清々しい負けだ。
彼女だったら素晴らしい王妃になるだろう。
我の持つオーブはペイズリー様にくれてやった。
――――――――――ソニア・ターンサイド伯爵令嬢視点。
麗しの貴公子アーウィン第一王子殿下の婚約者は、伯爵家の娘の中から選定される?
うんうん、予想の範囲内だね。
ああ、アーウィン殿下はハンサムだものなあ。
婚約者になれたらどんなに嬉しいことだろう。
自分も候補者の五人の中に入ったか。
ある意味当然ではあるね。
王立学院の成績からしたら。
他の候補者は、と。
愛らしさと伸び代がウリのイライザ・ワインバーグ伯爵令嬢。
淑女の中の淑女で美意識の塊オードリー・キューザック伯爵令嬢。
力とワイルドさはピカイチのグラディス・ネイズビット伯爵令嬢。
しかし……。
オリエンテーションでの説明を聞く限り、結局お妃教育の進捗で婚約者を決定するみたいじゃないか。
なら知力勝負になる。
自分か、もしくは同学年のペイズリー・サザーランド伯爵令嬢のどちらかになるんじゃないの?
自分とペイズリー様の学院での成績はほぼ拮抗している。
強いて言えば座学でペイズリー様、マナーや芸術科目まで含めた総合で自分だ。
相手にとって不足はないね。
正々堂々と白黒つけようじゃないか。
ところがペイズリー様、お妃教育が始まってもマイペースなの。
むしろ置いていかれがちなイライザ様を気にかけたりして。
……イライザ様からオーブを得ようとしているのか?
そんなにうまく行くか?
最後までペイズリー様はリラックスしていた。
おかげで五人の候補者はお互いライバルであるにも拘らず、すごく仲良くなって。
ハッと気付いたんだ。
アーウィン殿下の婚約者、そして王妃を目指す身であれば、周りに気を配ることも大切だなと。
目の前の成績だけ追った自分はバカだったよ。
結局全員がリタイヤすることなくお妃教育を終えた。
皆涙を流していたなあ。
戦友とともに試練を乗り切ることって、自分だけよりも充実感達成感が半端ない。
またシジポドル王国の将来を考えた時、人材の育成も大切だ。
お妃教育を完了した者が五人もいるというのはすごいことだと思う。
決して婚約者のスペアがいるという意味だけではなくて。
優秀な人間は人を、世の中を引っ張るから。
これは誰あろう、ペイズリー様の成果なんだ。
冷静に判断して、五人の候補者の内、最もアーウィン殿下の婚約者に相応しいのはペイズリー様だ。
どの角度から見ても模範的な行動だったんじゃないかな。
ペイズリー様、おめでとう。
自分の持つオーブはペイズリー様に預けた。
――――――――――ペイズリー・サザーランド伯爵令嬢視点。
どういうわけか私がアーウィン第一王子殿下の婚約者候補の一人に選ばれました。
私は王立学院入学までずっと領地にいて、アーウィン殿下と面識がなかったのに何故ですかね?
いえ、入学後も学年が違いますので顔を会わせる機会はありませんでしたよ。
何とか顔が判別できる程度でしかなくて。
『地方領主の忠誠心を逃がさないための配慮ではないか?』
ああ、なるほど。
お父様の意見に納得しました。
じゃあ私は数合わせなのですね?
ではせいぜい楽しんでいれば良さそうです。
お妃教育というものには興味をそそられますね。
参加させていただけるのはありがたいことです。
オリエンテーションで手渡されたオーブは、とっても高価なんだろうなあと思いました。
下世話だったですかね。
ん? 左側から胡乱な気配が。
グラディス・ネイズビット伯爵令嬢ですね。
ははあ、どうやら強引な手段でオーブを集めればいいと考えているようです。
ダメですよ、にこっ。
お妃教育が始まりました。
イライザ・ワインバーグ伯爵令嬢がつらそうです。
ムリもありません。
だってイライザ様はまだ王立学院入学前ですものね。
お妃教育の内容は難しいと思います。
でもイライザ様は私と違って、アーウィン殿下の立派な婚約者候補なのですから。
私が手助けしてあげましょう。
将来イライザ様が王妃になった暁にはいいことあるかもしれませんし。
オードリー・キューザック伯爵令嬢は五人の中で一番年上なのです。
とてももの静かな方で、まさに淑女。
そんなオードリー様にこんなことを言われたことがあります。
『ペイズリー様の微笑みはとても自然ですね。美しいですわ』
オードリー様のような所作の完璧な方に褒められると舞い上がってしまいますね。
とても素敵な方です。
五人の中で唯一私と同い年なのが、ソニア・ターンサイド伯爵令嬢です。
ソニア様はとても勉強熱心な方なのですよ。
王立学院では私も見習っております。
尊敬できる知恵者です。
四人の内、誰がアーウィン殿下の婚約者になるかはわかりませんが、全員と仲良くしておけば間違いないですよね。
お妃教育は厳しいものと聞いていました。
でも皆様のやる気ムーブに乗せられて、とても楽しかったですねえ。
全員でお妃教育を終えた時は感極まってしまいました。
『ペイズリー様、これを』
『えっ?』
イライザ様が私にオーブを差し出してきました。
いえ、私がもらっては王家の思惑を外してしまうのでは?
私は数合わせに過ぎないのですが。
『ペイズリー様、どうぞ』
『えっ?』
『ペイズリー様、やる』
『ええっ?』
『ペイズリー様、あなたのものだ』
『えええっ?』
何故全員が私にオーブをくれるのです?
いえ、優秀な皆様方に認められたのは嬉しいですけれども、私は員数外でしょう?
『わ、私のオーブはどうしたら……』
誰に差し上げても私がトップではないですか。
ソニア様が当然のように言います。
『やはりペイズリー様が持つべきだ。皆様はどう思います?』
『賛成です!』『わたくしも賛成です』『うむ、賛成だ』
『ええっ?』
何だかおかしなことになりましたよ。
これはどう始末をつけたらいいのでしょうね?
お父様に相談したところ……。
『ペイズリーはどうなのだ? アーウィン殿下の婚約者になりたいのか?』
『いえ、全然。分不相応だと思います』
『うむ、田舎貴族にとってはそうだな』
『殿下がどういう方なのかもよく存じませんし。王家の考えでは、多分私を除いた四人から選ぶつもりだったと思うのです』
『だろうな。そなたの目から見てどうだ、他の四人は』
『全員お妃教育は完了しております』
『何だ、では誰が婚約者でもいいのではないか。田舎貴族ごときが調子に乗ってはいかんな』
まさにお父様の言う通り。
『そういえば最初のオリエンテーションの時、『最終的に最も多くのオーブを所持していた者が、アーウィン殿下の婚約者たる資格を得る』という説明を受けました』
『資格を得る……つまり婚約者決定ではないということだな? ハハッ、いい夢を見させてもらったではないか』
『ですね。大変楽しかったです』
『それは重畳』
『私はどうすべきでしょうか?』
『……以前ペイズリーは、長期間外国に旅行してみたいと言っていたろう?』
見聞を広げたかったですね。
結構な金額になるため難しいということになり、次善の策として王都の学院に入学したわけですが。
『お金がないからムリなのでしょう?』
『もらったオーブはかなりの値打ちものだぞ。売ればかなりの金になるはずだ』
『あっ?』
お父様冴えてる!
売ってしまえば最終的に私が最も多くのオーブを所持していたことにはなりません。
王家の思惑通り、四人の令嬢の内からアーウィン殿下の婚約者が選ばれるでしょう。
各方面万々歳です。
『わしが換金してこようか?』
『お願いいたします』
『ではペイズリーは外遊の準備でもしておけ』
わあ、楽しみですねえ。
◇
――――――――――アーウィン第一王子殿下視点。
僕の婚約者が決まった。
ペイズリー・サザーランド伯爵令嬢だ。
何とオーブ満票だそうだ。
全員に支持されるってすごいな。
しかし五人の候補者の内で、唯一面識がない。
どんな令嬢だろう?
僕の婚約者を争った他の四人に聞いてみた。
『素敵な優しいお姉様なのです』
『殿下の隣にピッタリですわ。わたくしが保証いたします』
『隙がない。なかなかいないタイプの令嬢だと思う』
『かなり頭のいい、多方面に気を配れる人です』
皆が皆べた褒めじゃないか。
早く会ってみたいな。
正式な婚約の申し込みの書簡を持った僕の従者ラルクが、首をかしげながら帰ってきた。
「ペイズリー嬢はいないそうです」
「は? いないって何だ?」
「王立学院を中退して、旅行に出かけたとのことで」
「中退? 旅行?」
何それ?
どういうこと?
「サザーランド伯爵家の当主様には会えました。うちみたいな田舎貴族の娘に拘らなくてもいいですよとのことでした。お妃教育を終えた素敵な令嬢が四人もいるのですから、と」
「ちょっと意味がわからない」
「ペイズリー嬢は殿下と面識すらないではないですか。地方の貴族にも目を配っているんだぞという王家のスタンスを見せるため、数合わせに婚約者候補に選ばれたのだと考えていたらしいです」
「何をバカな」
いや、バカなとも言い切れないのか。
地方領主に対する配慮の側面があったことは事実だ。
優秀な令嬢を選抜したとは言いながら、父陛下ですらペイズリー嬢に注意を払っていなかったふしがある。
恥ずかしながら僕もだ。
「しかしもちろん結果は尊重するのだが」
「予定外でうちの娘が選ばれてしまったのはお許しください、だそうです」
「は? 謝る筋ではないではないか」
「ですよね。当家はオーブをいただいたことで十分に報われました。既に処分しましたので、オーブを所持してもいません。おかげで娘を旅行に行かせることができました、と」
「オーブを売って旅費の足しにしたのか」
何とまあ。
僕の婚約者になることを決定付けたオーブだぞ?
普通だったら大事に飾っておくなりしそうだが。
ドライ過ぎて変な笑いが出る。
「最も多くのオーブを所持する者が、殿下の婚約者たる資格を得るという取り決めだったではないですか。しかしサザーランド伯爵家の解釈では、もうペイズリー嬢はオーブを持っていないから資格がないということのようです」
「……つまり状況を整理すると、サザーランド伯爵家は王家に忖度していると。そのためペイズリー嬢は姿を消した、こういうことか?」
「はい。予定通り四人の候補者の中からお選びくださいとのこと」
「そんなわけにいくか! 王家の言葉が軽くなるわ!」
「ですよね。ところで殿下。ペイズリー嬢の似顔絵は必要ですか?」
「む? 見たいな」
「どうぞ」
ああ、美しい令嬢だな。
しかし?
「……見たことがあるな。これは最近話題の版画じゃなかったか?」
「はい。ペイズリー嬢がモデルにと乞われてたのだそうで」
「何と」
「貴族らしくない自然な表情がいいですよね」
芸術家にモデルを頼まれるほどの美しさ。
それを気軽に受けるというのも貴族の令嬢らしくないが……。
もう一度版画を見る。
いい、実にいい。
「オレもペイズリー嬢の情報は集めているのですよ」
「ふむ?」
「学院の同学年ではかなりの人気の令嬢ですね。自分は田舎者で気取っても仕方がないという意識があるらしく、伯爵家という高位の令嬢でありながら気さくだそうで」
「なるほど」
「もちろんお妃教育を受けていたことはよく知られています。落選していたら婚約の申し入れが殺到していたのではないかと」
「だろうな」
「ところがサザーランド伯爵家には、積極的に娘をどこか高位貴族家に嫁がせようという意図すらないらしいのですよ。地元商家の嫁でもいいかと考えていたようで」
僕の婚約者候補になるくらいの令嬢を、商家の嫁って。
いや、あまり中央の人脈を重視しない方針なのか?
だから学院を中退して旅行という発想が出る?
「ちょっとわかってきた。意識や価値観が独特なのだな? 地元重視か」
「おそらくは」
「面白い……ペイズリー嬢に早く会ってみたいな」
「伯爵は二年くらいすれば帰ってくるのではないかと言っていましたよ」
「待てるか!」
「自分が受けた印象ですが、どうもサザーランド伯爵家は放任主義で、娘のやりたいことをやらせてやろうという考えのようなのです」
「ふむ?」
「男女関係についても同じってことですよ。ペイズリー嬢自身は殿下の婚約者に決まったなんて考えていないですから、旅先でいい人を見つけたら結婚してしまうかも」
「ペイズリー嬢はまだ一五歳だろう? そんなことはないと思いたいが……」
「今までアーウィン殿下の思うようになってませんよね?」
ええ?
ラルクのやつ、焦らせるじゃないか。
「最初に向かったのは都市国家コルタだそうです」
「コルタ? 各方面に船が出るじゃないか!」
「ええ。コルタでペイズリー嬢を捕捉できないと、どこへ行ったかわからなくなりそうです」
「陛下に要請して、すぐに追っ手を出す!」
くそっ、ラルクめ。
何を笑っているんだ!
「今まで殿下は女性に振り回されたことなんかないでしょう?」
「ないな」
「いい女は男の思う様に動かないものなのです」
「そうなのか?」
「巷の流行本の受け売りですけど」
バカバカしいのか、そうでもないのか。
妙な薄っぺらさが刺さるなあ。
ああ、ペイズリー嬢に今すぐ会いたい。
この願いがかないますよう!
◇
――――――――――後日談。
ペイズリーはコルタで発見され、シジポドルに連れ戻されました。
ペイズリーは思うように見聞を広げることができなかったため不機嫌でしたが、アーウィンは不機嫌な令嬢というのを見たことがなかったので逆に新鮮に感じ、一目惚れしたようです。
アーウィンあんまり趣味がよくない。
王家とアーウィンが本気だというのを理解し、ペイズリーも婚約者になることを承諾しました。
ペイズリーはベタベタに溺愛されるのに戸惑っていますが、満更でもないみたい。
二人に幸せあれ。
――――――――――後日談の後日談。
「アーウィン様。いつもお妃教育・深奥に付き合ってくださらなくてもよいのですよ」
「それは付き合ってもよいということだな」
「もう、アーウィン様ったら」
ペイズリーも段々甘々に慣らされてきました(笑)。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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よろしくお願いいたします。