第八話 再びニクマン
最新のスマートフォンを買ってもらった。
私はまったく内容が分からなかったので、スマートフォンの色を選んだり、スマホケースのデザインだけでも、選ばせてもらった。
そういえば、魔導書を初めて貰った時のワクワクに似ているかもしれない。
私の趣味というか日課は、魔導書を読むこと、魔術研究や魔法の開発なので、代わりにスマホを扱えるようにして、知らないことを覚えていこうと思った。
トオルが言うには"ネット"という空間のようなものがあり、そこにはチキュウの万物全ての情報や知識があるらしい。
スマホはその ネット を利用して いろいろ調べられるらしいので、今すぐにでも扱い方を覚えたい。
衣類もスマートフォンも買ってもらい、感謝で胸がいっぱいだ。
お礼を伝えると、トオルは微笑みながら、
「大丈夫さ。さて、残りは じゅなが ここで生きていく為に必要な雑貨を揃えるだけだな。ただ、その前に…お昼にしよう!」
と言う。
お待ちかねの昼食だ。
気付けばお昼も過ぎており、私のお腹はすっかり空いている。
私は、この世界の食が凄く気になっている。
なぜなら、コンビニの食べ物が美味しすぎたからだ。
「じゅな、お昼は何食べたいとかあるか?」
トオルはリクエストを聞いてきた。
私は目をキラキラ輝かせ、よだれが出そうになっている。
…いろいろ食べてみたいのだが、やはり最初に食べたアレをもう一度食べたい!
「ニクマン!」
私は迷わず、ニクマンを所望した。
「せっかく、買い物に来ているから、コンビニじゃない方がいいな。」
とトオルは言って、スマホを取り出す。
ネットを使い"ケンサク"をしているそうだ。
「…こんな使い方も出来るのね。」
ますます早くスマホを扱えるようになりたい。
「おっ!じゅな近くに中華屋さんがあるぞ!肉まんも食べられるし、そこに行こう!」
私達は"チュウカ料理"?とやらが食べられるお店へと向かうことにする。
今日のこの後の予定や、明日からのことを話しながら歩いていると、なにやら不思議な美味しい匂いがしだした。
お店から美味しい!と言わんばかりの匂いが溢れている。
「…これは絶対に美味しいに決まっているね。」
さっそく中に入り、トオルに料理を注文してもらった。
お待ちかねの ニクマン がお店の人によって蒸し器ごとテーブルに運ばれる。
ちなみに"チュウカマン"とお店には書かれていた。
他にも"エビチリ""フカヒレスープ""ブタノカクニ"など他にもいろんな食べ物が運ばれて来たのだが、私はまっさきにニクマンを選ぶ。
コンビニよりも食感がふかふかで、食べると中から肉汁が溢れて来る。
「…ぉ、おいひい!」
私は感動で涙が溢れそうになった。
やはり私の中でニクマンがナンバーワン料理だ。
そんな私を見て、トオルはニコッと笑う。
「じゅな、食べながら喋らないの」
優しいトーンで叱るトオルに、私はなんだか心が救われた。
この世界で生きることに不安がないわけないし、強制転移された理由もずっと気になっているわけで…
何気ないやりとりの中に、暖かさを感じる。
…やはり、元・勇者は伊達じゃないね。