第四話 カガク
さて、寝る準備も整ったわけだが、トオルにこの世界のことや、勇者時代のインフェリスの話など、聞きたいことがたくさんある。
そして今日見たことや、明日からのこと、学校のこと、生活のこと、話したいことだってあった。
それでもトオルは、
「今日はもう遅いから寝た方がいいよ。」
と私を優しく諭す。
私が本当は疲れていることを大人として見抜いているのだろう。
寝室に、シングルベッドが一つ。
リビングには、ソファが一つ。
私はソファで眠れたらそれでいいのだが、トオルはベッドで寝た方が疲れが取れるだろうと、寝室を譲ってくれた。
元・勇者は伊達ではなく優しいなぁと感じる。
しかし、なんだか申し訳ないので、私はソファでいいと伝えるのだが、
「俺はよくソファで寝落ちするから、いいんだよ!ソファの寝心地の良さは俺だけのものだ。いいから、気にするな!な?」
とトオルは、そのままソファに向かい勢いよく横になった。
「…ぁりがとっ。」
小さな声でそっと呟くと、私は寝室へと向かうことにした。
ベッドに横になり、目を瞑る。
今日一日がとんでもなさすぎて、この世界があまりにも私の知る世界と違いすぎて、カルチャーショックどころの話ではなかった。
今、眠ろうと思えている自分のことを、なんだかんだ 図太いんだな と驚愕している。
…泣いていたことは忘れておこう。
しかしながら、あの道路を走っていた鉄の塊も、街の光も、今日のコンビニの自動ドアや設備も、トオルの住んでいる建物…たしかマンションというらしい それも、お風呂の環境も、私の世界には普及していない"科学"という概念?分野?も凄すぎて驚かされた。
そして、今日から魔法が使えないという事実も、魔法は使えなかったが使おうとした際に生じた魔力に似た何かも、あの私にだけ聞こえた謎の声も、明日からのことも、明日街を観てまわるんだっけ?、それも、あれも、これも…
…私は考えているうちに眠気に襲われ、そしていつの間にか眠りにつくのだった。