第九話 ゲーセン
「…満腹で少し苦しい。」
チュウカ料理があまりにも美味しかったので、いつもより食べすぎてしまった。
そんな私の様子を、トオルは微笑ましそうに見ている。
「日用雑貨を揃える前にちょっと休憩しようか!じゅな!ゲーセンに行くぞ!」
"ゲーセン"とはなんだろう?
私が不思議そうな顔をしていると、トオルは教えてくれた。
"ゲームセンター"と言って機械を使ったゲームで遊ぶ場所らしい。
インフェリスでは聞いたことがない単語だった。
トオルについて行き、少し歩くと本当に機械がたくさん置かれている場所にたどり着く。
機械からは軽快な音楽が流れていたり、ピカピカと光を放つ機械だったり、私ぐらいの年代の女の子達が、何やらお化粧をしたり、並んだり、機械の中に入ったりしていた。
目の前には、透明なガラスのケースと、その中には いくつものぬいぐるみ が並んでおり、それをアームのようなもので掴む機械がある。
とにかく見たことのない機械がたくさんだ。
そもそもインフェリスでは機械は珍しく、実際に見たことは、王都で一度だけだがある。
様々な研究の論文を発表する集まりで、機械技師が、魔法を使うことで鉄の塊が動き便利になるという発表をしていた…と思う。
こっちの世界には魔法がないのに、どういう仕組みで動いているのかが不思議だ。
スマホもそうで、いまいち仕組みがよく分からない。
トオル曰く、電気を使っているらしいのだが、マナを使わずに電気を操れている 科学技術 という概念には驚かされてばかりだ。
「じゅな!今からコインを渡す!これは100円玉と言って、日本ではよく使うコインだから覚えておくように!…インフェリスだと大銅貨1枚と一緒だな。10枚渡すから、10回挑戦して、この中のぬいぐるみをゲットしよう!」
そう言うと、トオルは私に"ヒャクエンダマ"を10枚渡してくれた。
「銀貨1枚分ってとこだな。」
トオル曰く 今、私は"センエン"持っているらしい。
目の前にある機械の操作方法は凄く簡単で、小さな子でも遊べるように出来ているそうだ。
「じゅな!どのぬいぐるみが欲しいかい?」
私は特にぬいぐるみが欲しいというわけではないのだが、思わず とある ぬいぐるみ を見つめた。
「なるほどな!やり方教えるから見といてな!」
トオルがやり方をレクチャーしてくれるそうだ。
「まず100円を入れて…そして欲しいぬいぐるみを定めて…横にアームを動かして…次は…縦軸を合わせる…そして…!」
トオルは勢いよくボタンを押した。
「…来いっ!」
アームは 猫 の ぬいぐるみ に向かって伸びていく。
ちょうどいいタイミングで、トオルは再びボタンを押した。
今度は少し慎重に押したような気がする。
ガシッとアームがそれを捕えると、ぬいぐるみは運ばれていく。
「…そのまま!落ちるなよぉ!」
トオルが祈るようにアームとぬいぐるみの行方を追っていた。
私も、つられて 願うように拳を握る。
…が、しかし、祈りも願いも虚しく、無情にもぬいぐるみはアームから離れていってしまった。
「あぁー!」
トオルは悔しそうに唸ると、
「…まぁ、こんなもんだ。上手くいけば取れるから、さぁじゅなもやってごらん!」
そう言って、私を機械の前に立たせた。
「あー!一発目で取れたら格好良かったのになぁ!」
トオルの悔しそうな その仕草が少しなんだか可笑しくて、
「私が仇を討つね!」
と笑いながら言った。
…が、現実は甘くないということだろうか。
なかなか取ることが出来ない。
何度目かの挑戦で、ぬいぐるみが上手に穴付近まで運ばれていくのだが、ギリギリ穴には入らず、ぬいぐるみは 落ちた反動で遠くにいってしまったりと散々だった。
私は少しムキになってしまうのだが、そんな様子を見ているトオルは、
「おい?仇を討ってくれるんじゃなかったのかよ!」
と 笑いながらからかって来たので、私は ますますムキになってしまい、頬をぷくっと膨らませながら"クレーンゲーム"と戦う。
…結局、トオルもやったり、私もやったりと、何度か繰り返し、25回目くらいの挑戦で、ようやく なんとか 猫のぬいぐるみ をゲットすることが出来た。
たくさんコイン使わせてしまい申し訳ない気持ちにもなっていたのだが、猫のぬいぐるみは わりと可愛くて ゲット出来た達成感も相まってか、なんだか嬉しい。
これが思い出補正という付加価値になるのだろうか。
…きっと 私にとって 大切な ぬいぐるみ になるはずだから。
ちなみにインフェリスにも猫や犬など、こっちの世界と同じ動物は存在する。
ここだけの話、私は犬より猫派だ。
(なぜなら可愛いから!)
犬も可愛し、わりと見かけたら触りたくなるのだが、インフェリスでは魔術師は なぜか猫を飼っている人が多い気がする。
私も魔術師なので、どちらかと言えば猫派なのだ。
動物以外にも、インフェリスには魔獣と呼ばれる、動物のような魔物も存在している。
…そういえば、チキュウにも魔物や魔獣はいるのだろうか?
私は、トオルに聞いてみることにした。




