プロローグ
プロローグ
聞いたことのない騒音。見たことのない光が煩くて、より一層 私を不安にさせた。
——あれは数時間前、いつものように一級魔術師として魔法の研究をする為、薬草や素材を取る為に 禁忌の森 を訪れた時のことだ。
ポーションの素材になる薬草を手にしようと屈んだ瞬間、私の周りが光出した。
一級魔術師である私が反応出来ないスピード、とんでもない展開スピードで術式は拡がり、私の周りに魔法陣が現れたのだ。
術を解こうとするも、私でも解読出来ない程の緻密な印が刻まれた高度な魔法陣だった。
抗いも虚しく、私はどこかへと飛ばされた。
そう、どこかへと召喚されたのだ。
「うぅ…。」
目を覚ますと、そこは見たことのない景色が広がっていく。
「ど、どこよ…ここ。な、なんなのよ…インフェリスじゃない…?」
私が住む世界"インフェリス"とは剣と魔法の世界。
15年前、異世界から転移した勇者トオルによって、魔王軍は滅び、荒々しい世界ではなく平和な世界となり、皆が後世の為に学び、剣や魔法を磨き、自然豊かとなった世界のことだ。
だがしかし、今私の目の前に広がっている世界は、鉄の塊が走っていて、見たことのない服を着た人々がたくさん行き来していて、とてつもなく高い箱型の建物が並んでいて、これでもか!ってほどいろんな色で光っている電気がたくさんあるのだった。
「…て、転移魔法・ループ!」
怖くなった私は慌てて、一度行ったことのある場所(半径50km以内)に転移出来る魔法を使う。
しかし、魔力反応はまったくなく、何も発動しない。
「…か、回復魔法・ヒール!」
「…こ、攻撃魔法・アクアショット!」
「ファイアショット!サンダーショット!ウィンドショット!」
得意な魔法を唱えるも、何も反応はなく、ただ何かを叫んでいるだけになり、泣きそうな気持ちになっていく。
「ヒソ…ヒソ…」
「なぁに?あの子?危なくない?」
「お兄さんが助けてあげようか?ぐへへ」
変な人を見られるような目線。
下心ありそうな視線。
私だけ服装が違うこと。この場所から浮いていることに気付いた私は逃げるように走って去っていった。
聞いたことのない騒音。見たことのない光が煩くて、より一層 私を不安にさせるのだった。