▼ 卜伝の弟子 ▼
▼ 卜伝の弟子 ▼
雲林院松軒は塚原卜伝の数少ない高弟の一人である。
卜伝は下総 [千葉県北部]から常陸[茨城南部]、つまり今の利根川を挟んだ香取神宮・鹿島神宮に関係の深い剣客である。浪曲に出て来る卜伝は、宮本武蔵に斬りつけられたのを鍋蓋で受け止める老剣客として描かれているが、生きた時代が異なり二人が出会ったことはない。卜伝が生きた室町後半から戦国時代初期のころは、京を中心とした八つの流派である京八流と、関東を中心にした七つの流派である鹿島七流が、剣の世界で拮抗していた時代であった。
鹿島の剣名を上げるために若い頃から廻国修行の旅に出た卜伝は、京を目指した。その中で、剣の資質に優れた人材が伊勢や大和などの紀州に多いことに気付くと、卜伝は、その地で優れた弟子を多く持つことになる。その中で有名な卜伝の高弟として、室町将軍・足利義輝や北畠具教のような戦国大名の存在があった。だが、戦国大名は戦乱の中では剣技の優劣とは無関係に命を奪われる。そんな訳で、卜伝の秘剣を受け継ぐ剣士は、戦国末期には雲林院松軒しかいなかったのである。
松軒もやはり伊勢の人で、先祖は源頼朝の御家人である北伊勢の地頭であったと言われている。その関係もあって伊勢とは縁の深い南房総に滞在することも多かったのである。
二つの遠く離れた地になぜ関係があるのか? 実は、房総半島には四国や紀伊半島にあるような地名が幾つか存在する。安房は阿波踊りの「あわ」であり、房総の白浜は南紀の白浜と同じ字である。それは、四国から紀伊半島沖に流れる黒潮に乗れば、房総半島に到達したからだと言われている。
黒潮は房総沖で北からの親潮と激突し方向を南に変える。だから、黒潮に流された漁民が房総半島にたどり着けなければ、永遠に日本には戻れなかった。
神子上、つまり神の子と記載される名を見れば判るように、神子上氏の先祖も伊勢神宮とゆかりの深い神職であったが、故あって故郷を離れた後に房総安房に流れ付き、その地に一族の村を構えたと言われていた。
卜伝は、剣の基礎を天真正伝香取神道流で学んだことを松軒にも伝えていた。その神道流道場は安房からわずかの距離に位置している。松軒が安房を経由して香取•鹿島の地を踏もうと考えたのは風変わりなことではなかったのである。
その年の秋に松軒は安房清澄山にある名刹清澄寺に滞在していた。数年前にもここを訪れていた松軒は、知っていた住職を頼りに翌年の春まで滞在するつもりにしていた。
「これは、松軒どの、久々にお越しいただき拙僧も嬉しく思っとります。山深い中で何もありませんが、どうか、楽にされて、また諸国の話など聞かせてくだされ」
清澄寺の住職、時運は丁重な面持ちで松軒と対していた。清澄寺の本殿からさらに奥深くに入った建家の一室だった。そこは寺にはめずらしい書院造りで床の間には,『空』の一文字が書かれた軸が掛けてあった。
「いや、またまたお世話になりもうす。時運殿には感謝の言葉もない」
「いえいえ、お気遣いは無用です。世事に疎い山暮らしですから、こうして話をお聞きするのも大変に有益でございます」
「そうですか。いや、大阪では太閤殿下が諸大名に朝鮮出兵せよと号令しており、大変なようです。たぶん、家康公は渡海はせんじゃろう言われとりますが、九州•四国の西国大名はもう大変なようです」
「ほう、それは大事なことですなぁ。当寺で修行された日蓮聖人のころでしたか、元や高麗が日の本に攻め込みましたが、今度はその仇を打たれるおつもりですかな」
「いや、太閤殿下のお考えなど正直よくは解らんが、儂のような浪人暮らしは面倒に巻き込まれんので気楽ですよ」
松軒は声をあげて笑うと、出された白湯を一口飲んだ。
「ところで、この軸の一字は空と読むので?」
「いえ、空と読みます」
「空とは、何も無いということでしょうや? それとも……」
松軒は腕を組み考え込み、しばらく静寂が室を充たした。
「それとも、とは、どのような?」と時運。
「うむ、もしかして、人知を越えて全てを得たり、ということかもと思いましてな。いえ、増長慢と笑うてくだされてもよいが、儂には、空とは全てを得た先でしか到達できんような気がしましてのう。剣の話になりますが、例えば、奥義や妙体を悟ったあとで、それを全て捨て去ったときに到達できようかなと……」
二人の間に、また静寂がしばらく降りていた。
「松軒殿、それで、貴殿がお探しの卜伝先生の剣技を伝え得るお弟子は見つかりましたのか?」
静寂を破ったのは時運和尚だった。
「いや、こればかりは縁でござる。なかなか出会えるものではないようで」
「卜伝先生の故郷、鹿島や香取に行けば、筋の良い若者に巡り会えるのではないでしょうか」
「それが、先生亡き後、あの地にも霞流とか天流とかいう、まがい物がはびこってるようでしてな。また、若い者も派手好きなもので、ああいう手合いに惹かれていきよる」
松軒は腕を組むと、ため息混じりで言った。
「そうですか。聞いたところでは、天流の斎藤伝鬼房とは卜伝先生の最後の弟子だとか。たしか数年前に旅の修行僧から聞いたことがありますが」
「うむ。確かに御館様が亡くなるころに近くにいたことは間違いないが、先生が手を取り教えたことはないのではないか。じゃが、身近にいて先生の剣を観ていたことは間違いない。まあ、京に出て一流を開き、官位までいただいたそうじゃから、侮るつもりはないがのう。その地へ参らば、そ奴とは必ず試合うことになるじゃろう」
「それはそれは……」
時運はそれつづく言葉を飲み込むと、しばらくしてから
「ところで松軒殿、じつは、この清澄山中に怪そうが住み着いておるとの噂があるのです。山中で見かけた者の話では、ありゃ天狗か山の猿神に違いないと、なにしろ山中を飛ぶように移動していたと言うんですよ」と話題を戻した。
「ほう、それは面白い。猿神といえば、かつて陰流を起こした愛洲移香斎も紀伊山中で猿神から教えを受けたと聞いておる。その話が確かならば、儂の剣もまだまだ上達するやもしれん。さっそく出かけてみたいが、誰ぞ道案内などできようかのう」
「ええ、それはできますが、まずは、しばらくゆるりとされて、その後に出かけられてはいかがですか。その地は、ここからはさらに奥にある山深い猟師しか入らんケモノ道ですからな」
「そうじゃのう。そう急くものでもあるまい。案内の準備が整ってから出かけてみようかのう。ああ、住職殿、そう急いで案内を探す必要もありませぬぞ」
それから三日後、松軒は山に詳しい猟師の喜八と一緒に住職の言っていた元清澄山へと向かっていた。神無月を越えたせいか朝晩冷え込むようになり、山の木々は薄茶色や黄色に変色し、その中にところどころハッとするような赤や朱色が混じっていた。
「喜八とやら、このあたりに天狗だか猿神だかが出るようになったのは、いつごろからじゃ?」
松軒は前を行く喜八に後ろから声を掛ける。彼の腰には大小が、そして右手には赤樫の木刀が握られている。
「へえ、半年くらい前の春からです。まあ、猟師も冬の間はあまり山に入らんもんで……、そんで、春になって山に入った者が言うには、山中でものすごい速さでカツカツと声がしとるが、それが聞いたことのない声じゃとのことで、何かが住み着いたんじゃないかと噂しとったところ、山ん中で髪が茫茫の猿男を見たという者が出ましてな。なんでも、その猿男は木々を軽々と飛び移り、また十尺くらいの木ならば軽々と飛び越えるくらい身軽じゃたらしいですわ。まあ、襲われた者は無いんじゃけど、わしらも元清澄の裏には入らんようにしとるんです」
「喜八、お前は見たことがあるのか?」
「いえ、あっしは見たことはねえですが」
「そうか。では儂が先頭に立とう。お前は儂の後ろで行き先を指示すればよい。万一じゃが、その猿男と出会い頭に会うちゅうこともあるからのう」
「へえ、そりゃ、そうしていただければありがたいですが」
二人が歩いているのは、清澄山の寺から元清澄山に向かうケモノ道である。山には鹿や猪などの大型の獣がいたし、猿や狐や狸、イタチなどの小型の獣も多く、また、それらを狙う狼もいたが、日の高い時間帯だからか見かけることもなかった。秋が深まったせいか植物の勢いが止まり、ケモノ道は歩きやすくなっている。道はところどころで樹林が途切れた見晴らしの良い尾根筋に出た。そこからは南房総の山々が延々と連なる山海を見渡すことができ、松軒はその広々とした眺めにひとしきり感嘆した。ケモノ道はところどころで分岐したが、喜八は元清澄山へと導いてゆく。出立してから約一刻すると、木の板で作られた標識がある二又に出た。板は右方向に山が一つ書かれ、左手には山が三つの塊で書かれている。
「これは、あっしの仲間が作ったんでさあ。右が元清澄で左が三石山の方向になりやす」
「どちらに行くのじゃ?」
「へえ、元清澄だと山頂で行き止まりですけえ、三石のほうへ向かったほうがよいかと」
二人はその分かれで、小半刻の休息を取ることにした。
「松軒様はこの地は初めてで?」
「儂は伊勢の生まれだが、安房の地は伊勢とも縁が深くてのう。安房に来たのは三度目になるかのう、じゃが、こんな山にまで入るのは初めてじゃ。こうして関東の地に参ったのも、教えを受けたト伝先生のおかげじゃろう。もしト伝先生に出会わなんだら、一生関東には来んじゃたろうのう」
「ト伝先生と言われると、あの、世に名高い塚原ト伝殿ですけえ?」
松軒は返事をする代わりに、手招きで喜八に近くに寄れと合図した。喜八が不審気な表情で近づくと
「喜八、大きな声を立てるな、どうやら儂等は見張られているようじゃ」
「そ、それで、あっしはどうすりゃいいんですか?」
「ここを出立したら、お前は儂の後ろを一間ほど離れてついてこい」
「へえ」
二人は二又を出立し三石山の方角に道を取る。照葉樹や常緑針葉樹に覆われた碓暗くて狭いケモノ道は、半刻ほど歩くと尾根筋にある幅の広い場所に出た。長さが一町ほどあり道沿いの木々はまばらで見通しがよい。ところどころに楢や樫の巨木が立っている。道沿いの木々の後ろは左右共に傾斜の厳しい断崖だった。松軒は立ち止まると声を掛ける。
「猿神殿……、いつまで儂等を見とるんじゃ? もうそろそろ姿を現してもよいと思うがのう」
喜八は松軒が声を掛けた樫の巨木を見つめたが、誰もいなかった。ただ、尾根を横切る風に木の枝がゆれていたるだけのような気がしていた。
「人に遇うのは久しぶりじゃからのう」
誰もいないと思った樫の巨木の前に一人の男が立っていた。髪は伸び目玉だけが光っている怪異な汚いいでたちで、自然木を切って作ったような太い木刀を握り締めていた。
「おい、お主は二本差しとるから侍じゃろうな、その木刀はなんじゃ? それで俺と勝負しよう言うんなら、こっちもそれが望みよ」
男は右手に木刀を持ち,丸太のような木刀を松軒に向けて叫んだ。
「儂はこの山に猿神様が住んどると聞いてまかり越した者じゃが、どうやら愛洲移香斉が紀伊山中で出会った猿神様とは違うようじゃのう。どう見ても人様のようじゃ」
「俺は猿神ではないが、この山に籠って二夏越すほどに修行した。それで、どんくらい強うなったか知りたいと思うとったところじゃから、お主のような侍が現れるとは都合良いのう。俺と勝負しろ」
「ええじゃろう。もとより山に入った時からその覚悟じゃ。得物は木刀でよいな」
「おう。望むところじゃ」
二人は三間の距離をあけて木刀を構えた。男の持つ木刀は山で切り出した樫で、長さが四尺もあり太いが真っすぐではない。毎日八千回の立木打ちを続けた木刀は、それが四本目であった。過酷な修行では約三ヶ月で折れたからである。一方の松軒はきれいに整形された赤樫の木刀で全長が三尺二寸である。
「喜八、お前は寺に戻れ。万一負けないとは思うが、こやつはただ者ではなさそうじゃ。儂がやられればお前に危がおよぶ。もうよいから、お前は走って戻れ、よいな」
「へ、へえ……、でも松軒様を置いて一人では戻れません」
「よい、すぐに行け。こいつを倒してからお前に追いつくのは雑作ない」
それを聞くと喜八は後ろを向いてケモノ道を走り去った。
相青眼に構えていた二人の距離は三間からジリジリと詰まりはじめた。と、木刀を上段に振り上げた男が、ものすごい咆哮と共に松軒に襲いかかった。松軒の予想を超えた速度で突進すると、木刀が稲妻のように松軒の頭上を襲う。受けたら弾かれる、松軒は咄嗟に飛び下がったが、男の木刀は長くて打ち込みに伸びがあり、頭を割られるまで、一瞬の、そして紙一重の差しかなかった。間髪を置かずに横殴りの烈風が松軒の足を襲う。ビューと空気を切り裂く音が耳に響いたが、それもかろうじて飛びよけると、松軒は尾根の上で谷を背にしていた。それ以上飛び下がれば深い谷に転落するしかない。男は松軒が飛び下がれないことを確認したかのように、再び上段に構えた。松軒は木刀を下段にさげ、そして男の目から視線をはずし、臍のあたりに眼を付ける。
二度目の咆哮は、突然の静寂へと変わっていた。
男は地に伏せられて、彼の木刀は松軒の足で上から押さえられていた。一体なにが起こったのか男には理解できないようだった。振り下ろした木刀が松軒の頭を割ったと思った瞬間、松軒の姿は消えて男は地に這い木刀は足で押さえ込まれていた。男は動けなかった。顔の横には、いつの間に抜いたのか松軒の小太刀がギラリを輝いている。
「俺の負けだ。あんたの好きにしろ。俺はもうここまでだ」
「お前の強さは半端ではない。相手がこの松軒でなければ、お前の勝利だっただろう。卜伝流の秘伝 "一の太刀" 以外では負けは必死だった」
「卜伝流? あの伝説の塚原卜伝か?」
「そうじゃ、その塚原卜伝じゃよ。さあ、木刀を手から離して儂の話を聞くがよい」
男は素直に木刀を離すと、その場にあぐらをかいた。松軒は男から一間ほど離れると木刀を置き小太刀を鞘に納める。
「儂は卜伝先生の弟子で、雲林院松軒という。お前も名乗れ」
「ああ、俺は安房の神子上村に生まれた、水月、神子上水月義直じゃ。村の者はみな水月と呼んどる」
「水月とやら、お前は何故こんな山に籠っておるんじゃ。よければ話を聞かせてくれぬか」
「俺は昨年の夏からこの山に籠っている。山の名は良く知らんが、三石山って言うんじゃろう。俺と従兄弟の典膳は、ある武芸者の命を受けて、三石山の頂上にある祠まで小太刀を取りに行ったんじゃが、俺は沢の上流から尾根に登る斜面で足をすべらして落下したんじゃ。運よく沢の深みに落ちたんで命を取り留めたっちゅう訳じゃが」
「なら、もっと早くに村に戻れただろう。なぜ村に戻らなかったんじゃ」
「それは、一緒に剣の修行していた典膳だけが伊藤一刀斎先生に連れられて旅に出たからじゃ。俺はどうなる。ただ、村に帰って生き恥かいて生き続けるのか。俺は典膳に負けんような強い武芸者になりたいんじゃ。だから、山に籠って修行したのよ」
「ほう、お前は弥五郎一刀斎の弟子じゃったのか?」
「違う。一刀斎先生は典膳を弟子にしたんじゃ。だから……、俺は見捨てられたというわけじゃ」
「一刀斎がかなり強い弟子を連れているという噂があるが、それがお前のいう典膳とやらか?」
「さあ、どうじゃろうな。たぶん、ちがうかもしれんな。そいつは善鬼、確か、小野善鬼とかいう奴じゃろう。俺と典膳は去年の春に先生が神子上村に来た時に修行させてもろうただけじゃ。そいで、多分、典膳はその後に弟子にしてもろうたはずじゃからな……。その善鬼って奴には俺も会ったが、人間離れした薄気味の悪い奴じゃった」
「しかし、お前はどんな修行をしたのかのう? 動きは人間離れしておったが……、お前は一刀斎とどのくらい修行をしたんじゃ」
「先生とは、ほんの二ヶ月ほどじゃ」
「その前は? 一刀斎に会う前にお前はどんな剣術を修行した」
「神子上村に生まれた者は、男も女も三歳から古伊勢神流という武術を習う。剣も含まれるが槍や薙刀も含まれるもので、組み合うための体術なんかも含まれとる。剣の振り方はそこで習うが……、戦場に出るから長い野太刀を振り回す剣術じゃ。型はあまり多くないが、一撃必殺の太刀筋はなかなか強力じゃと思う」
「お前は強い。攻めだけを取れば、卜伝流の免許皆伝よりも力があろう。山でどんな修行を積んだのかは判らんが、身ごなしや太刀の峻烈さは尋常ではない」
松軒はそう言うと、腕を組んで眼を閉じた。会話が途切れると、尾根を吹く風の音と木々のざわめきが大きくなったような気がする。しばらくして松軒は話の続きを始めた。
「だが、お前の攻めは世に名高い武芸者たちには通用せんじゃろう、呼吸や拍子、そして間合いを見切る能力を身につける必要がある。先手を外されたときの防御の技、先を取られたときの防御や返し技がなければ、命を守ることはできん」
松軒は眼を開き、真剣な眼差しで水月を見る。
「そこでじゃが、お前は儂といっしょに修行をする気はないか?」
水月はかっと眼を見開くと「本当か? 本当に俺をあんたの弟子にしてくれるのか? それは本当なのか?」と叫ぶ。
「よいのか? 儂の弟子で、もう一度尋ねるが、武芸者の命は簡単に消えてしまう、蝋燭の炎を吹き消すよりもたやすいかもしれん。そして、それは明日にでも起こるかもしれんことじゃが」
「いい。それでいいんじゃ。どうかあんたの弟子にしてくだせえ。必ずもっと強い男になってみせますから」
「よし、お前を儂の弟子にしよう。もう一度だけ言うから必ず覚えるのじゃ。儂の名は雲林院松軒、塚原卜伝先生の弟子で、香取神道流から卜伝先生が興された卜伝流の秘太刀と印可を受け継いでおる」
「はあ、松軒先生、ありがてえです。俺を弟子にしてくれて死ぬほどありがてえ」
水月は感極まったかのように涙を滲ませた。二人は尾根づたいの狭いケモノ道に僅かに開けていた、木刀を交えた場所を後にし、元清澄山へと向かう道を戻ってゆく。元清澄山を迂回するケモノ道を歩き続け、日没前に清澄山の寺に到着した。




