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24匹目:幸運の猫とフェーヴ 1

もしや完結までにブクマ200件達成できる……?

ありがとう~!!頑張ります~!!





なんやかんや言いながら、顔を綻ばせてアップルパイを食べ進めるエリオットに誰かが小さくため息を吐いた。


ため息くらい吐きたくもなる。あれだけ騒ぎを大きくしておいて、食ったら食ったで美味いのか。逆に少し前にアンジェリカのアップルパイを踏み潰したことを覚えていたことを褒めるべきなのか。


エリオットを見ているとだんだん基準が馬鹿になってくるなぁと、やっとありつけたお菓子を頬張った。



「そういえば、わたくし2つのホールの片方に1つだけフェーヴを入れておきましたの。たまにはこういうお遊びも良いでしょう?」


「あら素敵。良いですわねぇ。ジェマちゃんも好きそうですわね」



こっくりと頷いて、自分のアップルパイをさくさく刺したらシリルに叱られた。お姉様方から笑われて、ジェマはちょっとだけしょんぼりした。



リリアンにお菓子の持ち寄りの件を伝えなかったのは、すでに手作りお菓子に薬を盛った前科があるからだ。けれど、今よく考えればアンジェリカからも受け取らないべきだったかもしれない。


アンジェリカが自ら手を汚して薬や毒物を盛る必要なんてこれっぽっちもない。ここで和解できなければ婚約解消とすでに決まっているし、先ほどアンジェリカを殴ろうとした件もありリリアンが処罰されることも確定している。おそらくは学園も退学となるだろう。


しかし、と冷めても美味しいアップルパイを咀嚼しながらジェマは小首を傾げた。


いつもの優しく微笑んでくれるアンジェリカが好きだ。自分は甘い物が苦手なのにジェマのためにと甘いスイーツを持ってきてくれる優しいお姉さま。コーヒーを出すと喜んでくれて、ほろ苦いチョコレートを美味しそうに食べる姿は普通の女の子のようにふわふわしていて。これだけ身分に差があるにも関わらず、少し親近感が湧いた。


そう。アンジェリカだって普通の女の子なのだ。まだ19歳の、しかも初恋を自覚したばかりの女の子である。


もちろんこれだけ大勢を巻き込んだ茶番劇だ。みんなが持ち寄って来たお菓子もジェマが用意したお茶もすべてプロのチェックを無事通過している。しかしわざわざアップルパイを持ってきた以上、何かしらの思惑があることだろう。


それがジェマにはまったく予想が付かないのが怖かった。


エリオットがアップルパイを食べている姿を見ると、ちょっとだけジェマもどきどきする。



「ん?」



ガツンと硬い音の後、エリオットが首を傾げた。カチャカチャと行儀悪くアップルパイをほじくると何かが出てきたらしい。ちらりとアンジェリカの顔を見て、目が合うと気まずそうに視線を逸らす。


完璧な微笑を浮かべていたアンジェリカがふわりと自然な笑みを零した。



「あら、エリオットが当てましたのね。あなたは本当に付いていらっしゃること」



ころころと笑うアンジェリカに釣られて空気も軽くなる――その背後では柱に縛り付けられたリリアンをベルノルトが見張っているわけだが。


気まずいゆえかぱちぱちと瞬きを繰り返しながら、エリオットはピンク色の猫のフェーヴを突っつく。


果たしてあのフェーヴは主催者のジェマをイメージしたのか、それとも散々引っ掻き回した泥棒猫のイメージなのか。こういうときにふとジェマとリリアンは似ているなと実感させられる。だからこそリリアンもジェマに成り代われると思ってしまったのだろう。



「そのフェーヴ、中にソースが入っておりますの。ぜひ割って召し上がってほしいわ。……あら、これも強要になってしまうかしら」


「い、いや。食べる。問題ない」


「まぁ嬉しいわ」



油断した途端にちくっと刺されて、エリオットは慌てて猫のフェーヴを叩き割った。慌てる必要はまったくないのだが、痛いところを突かれるとついわたわたとしてしまうところは情けないほどに人間味がある。


あの唯我独尊俺様お坊ちゃんはいったいどこにいったのか。さすがのエリオットでも、長年婚約している相手の好みすら知らなかったことは少し反省しているのだろうか。もし反省しているのだとしたら、とりあえず今すぐ頭を下げた方が良いと思う。


エリオットに白けた視線を向けながら、しっとりとしたリンゴを咀嚼した。



新しく注いだ紅茶にミルクを垂らして角砂糖を1つ放り込んだ。カップに当てないようにティースプーンをくるくると回す。


リリアンも拘束されてフェーヴも外れて、アンジェリカはもう淑女の仮面を被ってしまった。つまらないとむくれながらその揺れる水面を見つめていたジェマは、ふっと顔を上げた。


これだけ色んな人を巻き込んで警備も増やして揉めること前提で仕組まれたお茶会だ。誰でもお菓子に厳しいチェックが入ることは予想が付く。



もし何かを仕込むとしたら、同時に摂取することで毒性を発生させるものか、あるいは外からチェックしてもわからないところに隠すのでは。



「そのフェーヴには毒を入れておきましたの。当たったのがエリオットで良かったわ」





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