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22匹目:アップルパイに包んだ気持ち 3

3/3


ラスイベに向けて頑張るぞ~!

最後までお付き合いくださいな!





結論から言えば、ジェマは逃げられなかった。誠実なアンジェリカを前に自己保身だけで言い逃れをするのはさすがになけなしの良心が傷んだとも言う。


アシュダートン伯爵には申し訳ないけれど、予定通りジェマが決戦の場を準備することとなった。


建国祭はもうすぐそこまで迫っているのでやるなら急がなくてはならない。建国祭に向けてアンジェリカとの打ち合わせがあり、エリオットの予定が空いているはずの3日後を決行日に選んだ。



ジェマはお茶会を開催したことなんてない。やるならやるで全力でやろうと決めたジェマは、寮へ帰ってすぐにアシュダートン伯爵家へ手紙を送った。




「もう! あなたはもう!! ほんっとにお馬鹿!!」


「返す言葉もない」


「もっと言ってやってくれ。これは本当にダメ猫だ」



腰に手を当ててぷりぷりと怒るクロエと、面白いくらいに眉根を寄せてずっとジェマの頭をポンポンと叩き続けているシリルに挟まれ、ジェマは体を縮こまらせていた。


お茶会前日。


大公令息と公爵令嬢を招くお茶会の準備を平民に任せきりにするわけにはいかないと、特別な許可を取ってまでシリルがやってきた。


この問題に関しては学園側も大いに迷惑を被っているのでかなり協力的だったらしい。マグワイア魔導学園卒業というだけで信頼を得られるほどの名門校だというのに、男爵令嬢1人に引っ掻き回されて今年度は大変な不名誉を晒し続けている。それもこれもリリアンがエリオットに気に入られてしまったせい。


過去には王族も退学になったことがあるらしいが、ただのマナー違反と若干の倫理違反だけでは対応に困ったそうだ。


眩しい笑顔の学園長から「全面協力するので頑張ってくださいね」と応援されてしまい、ジェマは全力で引いた。



「あなたちょっと頑張って逃れようとしてたじゃないの。どうして諦めたのよ。あなた1人が大公令息をぶん殴る責任を負わせられたらどうするつもりなの? あなた平民なのよ?」


「ごもっとも」


「ごもっともじゃねぇんだよ。お前は反省という言葉を知らないのか?」


「理解はしてます」


「あなたはいつも返事だけ!」


「その通りだな」



2人からちくちくと攻撃され、ジェマは素直に返事をするしかなかった。しかしきちんと答えてもお叱りは終わらず、俯いて静かに頷く。


だって仕方ないではないか。好奇心と自己保身のせいでうっかり口から零れた言葉が全部アンジェリカの誠実さを伴って返ってきてしまったのだから。あの状況で「やっぱり怖いから1人で頑張って」なんて言えるほど、ジェマは人でなしではない。アンジェリカのことも好きだし、突き放すことなんてできなかったのだ。


ただやっぱり迷惑をかけてしまう人たちに申し訳ないとは思っている。こうして反論もせず大人しく説教を受けていることでなんとか許してほしい。


これ以上叱っても仕方がないと判断してくれたらしい。準備を手伝えと背を押され、しょんぼりと耳と尻尾を垂れさせたジェマはせっせと働いた。




場所はもちろんあの曰く付きの湖である。


しかし場所が場所なだけに、大公家と公爵家から入念なチェックが入った。当日は万が一のためにこっそり護衛も付けられる予定らしい。その辺りはジェマの頭の上で決まったことなのでもう詳しくは教えてもらっていないが、なんとかして湖には落ちられないようにするそうだ。



出席メンバーはジェマとアンジェリカとなぜか巻き込まれたクロエとクリスティーナ。それからエリオットを誘い出すためにリリアンを誘い、誰かにエスコートしてもらってきてと伝えた。リリアンだけがエスコートありだと不自然だということで、ジェマのエスコート役にシリル、アンジェリカにベルノルト、クロエにルシアン、クリスティーナにフランツという組み合わせとなった。


ジェマとしてはベルノルトにはアマーリエをエスコートしてもらったが、あれから2人の仲はあまり進展していないらしいので没となった。正確に言えば、ものすごくゆっくりとしたペースで、けれど一歩ずつ着実に仲は深まっているらしいが。



「ねぇ。どうして僕まで準備手伝わされてるの?」


「いやいや聞いてくれたまえよ、わたしの作戦を」


「作戦も何もなくない?」


「なぁにこそこそ悪だくみしてるんだ、おちびども?」



すすすっと寄って来たルシアンと額を寄せ合っているところに、シリルの大きな手が落ちてきた。揃ってびくりと肩を揺らし、頭を押さえつけられたまま焦って言い訳する。



「いや! シリル様も聞いて。すごく良い作戦を思いついたの」


「……とりあえず聞くだけ聞いてやる」



まるで叱られているかのように小さくなりながら、ジェマとルシアンは背を伸ばす。



「あのね、アンジェリカ様が動く前にわたしがリリアンを殴ってしまえば良いんじゃないかと思ってね! だってたぶん誰よりも先にリリアンがやらかすでしょ? だからわたしがね、主催者として頑張って怒って、それで思いっきりどーんって! とりあえず邪魔だし、それでなんとかしてアンジェリカ様とエリオット様がなんかこう良い感じ話ができるようにして……。なんかこう良い感じにできないかなって」


「なんか良い感じって2回言ったけど」


「そこ詳しく」


「なんか……こう……ほら、なんか……良い感じにね……」


「つまりノープランってことね」


「1番大事なところじゃねぇか」


「いやだってもう時間がなかったから! そんなすぐに良い作戦なんて思いつきませんって!」



ぺしーんっと尻尾を振って抗議する。


ひとまずなんとかして建国祭の話に持ち込んで、エリオットに誰をエスコートするかを明言させる。その話になればきっとリリアンは自信満々に自分が一緒に参加すると言い出すことだろう。そのタイミングでジェマがリリアンに喧嘩を挑み、なんかこう良い感じにアンジェリカとエリオットの気持ちを聞き出す。そしてなんかこう良い感じに2人に話し合いをさせて、まぁ揉めたら揉めたで仕方がない。


そのときは予定通り殴ってしまえば良いし、うまいこと和解できたらできたでリリアン以外みんなハッピーだ。


1番ダメなのはアンジェリカがとりあえずでエリオットを思いっきり拳で殴り飛ばすこと。しかしそれはジェマの自己保身という名の機転により回避されたと考えても良いだろう。



根掘り葉掘りジェマの作戦を聞き出したシリルは、顎に指を添えて少し悩んだあと頷いた。



「まぁ……。そこまで考えてあるなら合格点だな。一応は……うん。まだなんかこう良い感じにが多いけどな」


「そんなに考えてたんだ、意外」


「いやさすがにね。わたしだって少しは学習するのよ。だから助けてクロエー!!」


「え? 何の話?」



戸惑うクロエにもう1度説明をした結果、「なんかこう良い感じ」の部分をもっと詰めるために本日はクロエの家にお泊りすることになった。



「ちゃんと作戦がまとまるまで寝かせないわよ」


「もぉやだぁ……」




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