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19匹目:美味しいところだけかっさらう野良猫 3

3/5

予約投稿をミスりました!





(いやゲームじゃないんだから、途中まで他人にやらせて最後の楽しいところだけ自分でやるとか無理でしょ……)



バンバンと力いっぱい机を叩き椅子を蹴りつけるリリアンに、ジェマは全力でドン引きしていた。もはやいつものように無視してお茶を飲む気力すらない。


へたり込んだ尻尾を自分の腰に巻き付け、温かいはずの東屋の中でふるりと身を震わせた。



(いやそういえば。初めから()()()()()って言ってたな? いや乙女ゲームって何?)



恋愛をするゲームなんて聞いたことがない。しかし様々な攻略対象と結末があるということは、占い本のように「〇〇な人は何ページへ」というような感じで結末の別れるストーリーがあるという認識で良いのだろうか。


それならなおのこと、途中でプレイヤーがすげ変わることは難しいのではないだろうか。


現実的にも、リリアンを好き=ジェマを好きという方程式は成り立たない。


思い返せば、ジェマは初対面のあのときからリリアンは異常だと感じていた。あのときにちゃんとシリルに「変な人に絡まれた」と報告していれば良かったのだ。



しかし今更そんな後悔をしても仕方がない。どうあがいてもここにシリルはやってきてくれないのだ。


ぺたっと頭にくっ付いた猫耳が、もう怒声を聞きたくないと訴えていた。もういっそ逃げてしまおうかとも考えたが、ジェマが魔導具を回収しきる前にリリアンにぶん殴られそうなので断念した。



「ねえ聞いてんの!!?? なんとか言ったら!? 初期はデレもなくてつまんなくて面倒くさいからって興味ないフリしてあたしに押し付けたんでしょ!?」


「だからわたしは何もしてないってば」



いや確かにちょっと余計な邪魔はしているかもしれない。


エリオットがアンジェリカのことを気にし始めたのは、おそらくジェマが提案した無視してしまえ作戦がうまくいった結果だ。フランツが補習をやめたのもジェマのせいと言えばジェマのせいだし、シリルがすでにリリアンを警戒しているのもジェマのせいだ。


思った以上に思い当たることが多くて思わず視線を逸らした瞬間、リリアンが思い切り石造りの机を蹴った。びくりと肩が揺れ、毛が逆立つ。


机の陰でアシュダートン伯爵が持たせてくれた防犯用の魔導具を取り出す。



「ほんとのヒロインだからって調子乗んなよ!! あたしのこと馬鹿にしてんでしょ!? 必死に攻略やってんの嗤ってみてたわけ!? ずっと仲良しのフリして!? 謝ってよ!!」


「いや謝らないよ。嗤ってないもん」


「だから何!? じゃあなんで邪魔すんの!?」


「別に邪魔してないってば。君の攻略がうまくいかない責任をわたしに押し付けないでよ」


「はぁ……!!??」



結果的に邪魔はしているかもしれないが、積極的に邪魔したいわけではない。


怒りで震えているリリアンはもういつ手を出してくるかわからないくらい拳を握り締めている。


どれだけ綺麗にメイクをしても、怒りに歪めた顔はとても可愛いとは言えない。これならすっぴんのジェマの方がよっぽど可愛いというものだ。見た目だけ取り繕ったって礼儀も作法も何も身についてはいないし、他人の話は聞かないし。ついに可愛い顔さえもなくなってしまえばもう、リリアンの良いところは意思の強さくらいである。



「そもそも大公令息を攻略してそのあとはどうするつもりなの? 現時点でアンジェリカ様に婿入り予定なんだから、君が大公家に嫁入りすることはできないと思うけど。ランズベリー男爵家に婿入りさせるの? 大公令息を?」


「は? それはこっちのセリフなんだけど!? あんたこそ平民のくせにエリオットに手ぇ出してどうするつもりなわけ!?」


「だから大公令息には興味ないってば。そもそもアンジェリカ様から奪い取るっていう発想に至らないわ。あんな美人と比べられたら、こんなちんちくりん負けるに決まってるでしょ」


「ちんちくりん……!? 馬鹿にしてんの!!??」


「今のは話の流れ的にわたしのことじゃん……」


「ヒロインがちんちくりんならあたしはなんなの!!??」



もしかしてリリアンは意外とジェマのことを高く見積もっているのだろうか。まさかリリアンから自分を下に置く発言が出てくるとは思わなかったジェマは、目をぱちくりとさせたあと。



「…………普通にクズでは?」



またうっかり本音が出た。



「っいい加減にしろよ!!」



「やべ」と思った瞬間に防犯具のスイッチを入れた。瞬時に結界が展開され、次いでガシャンっと陶器が割れる音が響く。


机に置いたままになっていたティーポットが飛んできて、ジェマの顔のすぐ前で割れた。喉から情けない鳴き声が漏れ、さすがに対応を間違えすぎたと今更冷や汗を流す。



身に危険が迫ったときは悩まずに使えと渡された緊急通信用の手紙鳥(レターバード)を送る。相手はフランツとシリルに設定されているものだ。これを送ってしまえばシリルからは説教され、アシュダートン伯爵には泣かれる。けれどここまで激昂されるともうどうしようもない。



(誰だ、ちょっとヒステリーを起こしているときの方が話が通じるなんて余裕ぶっこいてた阿呆は!)



しかもそのあと自ら煽りにいった自覚もある。


さすがに反省した。誰か助けて。




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