19匹目:美味しいところだけかっさらう野良猫 2
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ブクマ110人…!ありがとう~!!
PV1日1500とかになってるんだけどすごいね!11月なんて1日でPV12の日もあったのに……。
感謝~!!!!
リリアンのヒステリーには慣れていたつもりだったが、あのエリオットを好いているのかなどと言われて思わずカッとなってしまった。
しかしその後の意味不明な言葉にきょとんと首を傾げた。
(『ヒロインのモノだって決まってるからあたしのモノ』って何? リリアン物語って最終的に必ずエリオットと結ばれるって決まってたっけ?)
きちんと興味を持って聞き取りをしたわけではないので判然としないが、確か数人の中から好きに選べるといったような話をしていた気がするのだが。
そうだ。それでエリオット、ベルノルト、ルシアン、フランツ、シリルの中から選ぶと言う話を聞いたのだ。
しかしリリアンの口ぶりからして何人選んでも良いし誰も選ばなくても良いという印象だったので、特別彼らがヒロインのモノというイメージは湧かなかった。ヒロインが選ばなくても良いということは、彼らは彼らで好きに恋愛したり婚約したりする可能性があって良いということだ。
というより、リリアン物語はただの妄想の産物――もしくは似たような話を聞いて現実と混同しているだけだとばかり思っていた。
まさかエリオットたちのことをヒロインのモノだと思っていたとは。道理でアンジェリカへの態度がでかいわけである。
あのクッキー踏みつけ事件のときに、リリアンが現実の方をリリアン物語に寄せようとしているとは感じた。リリアンの中でアンジェリカはヒロインを敵視して攻撃するということが確定していたから、クッキーを踏んだ犯人をアンジェリカにした。今回はエリオットたちと恋愛する相手はヒロインのみというルールに基づいてキレ散らかしているということか。
(こいつ面白いな……)
いや面白がっている場合じゃない。さすがにこれを面白がって放置したら、確実にあとからさらに大きなトラブルとなってジェマに襲い掛かって来るに違いない。少なくともシリルにははちゃめちゃに叱られる。
「あんたが自分でヒロイン譲るって言ったんだから最後まで大人しくしときなさいよ! ルシアンも全然仲良くなれないし、フランツの補習もなくなっちゃったしシリルなんて影も形もないし!! あんたが裏でこそこそやってんの知ってるんだから!! ほんとにいい加減にしてよ!! あたしに恨みでもあるわけ!?」
「裏でこそこそしてるって何?」
「何とぼけてんの!? あんたがアンジェリカの味方してルシアンたちにあたしに近付くなとか言ってるんでしょ!?」
「いやそれは君が嫌われてるだけだけど」
「何それ!? 本当のヒロインは自分だから偽物は嫌われるって言いたいわけ!!??」
「嫌われる行動しかとってないという自覚がない?」
「だから嫌がらせしてんの!!?? さいてー!!」
ジェマに嫌われて嫌がらせされているのではなく、単純にルシアンとフランツとシリルから嫌われて避けられているのである。
リリアンは本気であの言動で好かれようとしていたのか。一応教員として接していたフランツはともかくとして、ルシアンはかなり露骨に嫌がっていたはずなのにまったく気付いていなかったというのか。
以前酷い形相で図書室から走り去っていくルシアンを見かけたことがある。うっかり好奇心で図書室を覗いてみたら、飲食禁止の自習室で1人チョコレートケーキを貪り食うリリアンがいてゾッとした。そのあとその自習室を使っていたのがルシアンだったと聞いて、心底同情したものだ。
しかしそれで言えば、ジェマもつい先日リリアンから逃げ去った。しかもリリアンの手作りクッキーを吐き出してブランケットを被せて蹴り飛ばしたあとに、そのブランケットを力づくで引っぺがして逃げたのだ。
そこまでされてなお、ジェマにもルシアンにも嫌われている自覚がないというのは相当ヤバい。
「もうなんなのよ! どいつもこいつも!! あたしがヒロインじゃないからうまくいかないってわけ!? こんなヘアセットもメイクもろくにしてない奴に負けるっていうの!? こんなに頑張ってるのに何がいけないっていうのよ!!」
強いて言うなら、まったく人と会話をする気のない傍若無人な姿勢と、なんでもかんでも『ヒロインだから』でごり押しする傲岸不遜な態度が悪い。
ジェマはそっと飴を1つ口に放り込んだ。ジェマは勉強をしに来た平民なのだから、後見人に恥をかかせない程度に身綺麗にしていれば十分なのだ。余計なお世話だと心の中で舌を出す。
今ここで素直に言い返せばごく自然な流れでキャットファイトに突入できるくらい、リリアンは激昂している。しかしまったく人目のない場所で殴ってもつまらない。普通に殴っただけではリリアンの心にはまったくダメージが入らないからだ。
リリアンは他人の話を聞いていないわけではない。他人に興味がないだけだ。
リリアンの中で望む答えしか受け入れるつもりがなく、違う答えもすべて自分の都合の良いように捻じ曲げてしまうだけ。
だからジェマが1人でお茶を飲みお菓子を食べてずっとリリアンを無視し続けていても、リリアンの中では『仲良くお茶会をした』に変換されるし、愛想のないルシアンにわかりやすく逃げられても『ちゃんと好感度の上がる会話ができた』になってしまう。ずっと補習を受け続けなければならない成績を取り続けて教師からの好感度が上がるわけがないのに、フランツともうまくいっていると思い込めていた。
きっと今思い切り飛び蹴りをぶちかましたところで、ジェマの機嫌がちょっと悪かっただけなんてことにされかねない。
「せっかくここまで順調に攻略進んでたってのに……! エリオットまでアンジェリカアンジェリカって言い出して!! あんたが何かしたんでしょ!? 知ってんのよ! エリオットがここに通ってるってことは!! 初め興味ないみたいな顔してここまであたしに攻略やらせといて結局ハッピーエンドはかっさらう気!!?? マジでふざけんなよ!!」




