表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/131

19匹目:美味しいところだけかっさらう野良猫 1

連載小説を書いたことがないから終わらせ方がわからないということに今気付いた……!!




「エリオットのこと狙ってんの!? ひどい!! ゲームから降りるって約束してくれたじゃん!!」



約束もないのに当たり前のように突然やってきたうるさい小娘に、ジェマはため息を吐くことで返答とした。


どうしていつも相手の予定を聞かずに突撃してくるのか。数日前に予約をしろとまでは言わないが、せめて「今お時間ありますか」くらいは言えないものか。


冷たい東屋に文明の利器を展開して、音さえも冷たい風を遮る。安い紅茶をさっと淹れて、ようやく一息ついたところだった。この後は足湯も用意して、ハムとチーズのホットサンドでも作ろうと思っていたのに。



ゴンッと重い音を響かせて、リリアンが机を殴る。


勢いよく走って来たと思ったら、いきなり叫んで机に拳を叩きつけたリリアンにジェマはドン引きしていた。


言いたいことはなんとなくわかるが、事情も聞かずに怒鳴りつけられる謂れはない。1人面倒な奴の相手をすると、それを起点にさらに面倒な相手がやってくる。なるべく相手をせずに逃げているけれど、さすがに大公令息に背を向けて全力ダッシュはできなかったから仕方がない。


2枚重ねにしたブランケットに包まって猫のように丸まっていたジェマは、元気よく喚きたてるリリアンをじっと見上げた。



「なんでそういうことするの!? 私が頑張ってたの知ってるよね!? エンディング付近まで人にやらせといて、最後の美味しいとこだけかっさらっていく気!? ほんっと最低!!!!」


「エンディングっていつ?」


「エリオットの卒業に決まってるでしょ!! 今更何言ってんのよ!!」



そりゃそうかと頷いた。ジェマでもリリアンでも、卒業してしまったら大公令息と顔を合わせるのはなかなか難しくなる。すれ違っても顔すら上げられないほど地位に差があるからだ。恋愛ごっこをするなら学園在学中がラストチャンスになるだろう。


しかし、リリアンの訴える美味しいところだけかっさらうという意味がよくわからない。


確かに先日エリオットはリリアン絡みでジェマの元にやってきたが、そのことを言っているのだろうか。そのことなら100%リリアン所為なので逆切れしないで欲しいのだが。



「わたしじゃなくて、あなたが無茶苦茶なことをしているからこうなったんですけど」


「は? 何それ!? 全部私の所為にするつもり!?」


「いや本当に。あなたが分不相応に大公令息に手を出すからわたしがこんなことで悩まなきゃいけなくなってるんですよ。わたしは一切関係ないのに何をこんなに悩むことがあるんだおかしいだろ……」



ヒステリックに騒ぎ立てる女性ってどうしてこんなに醜く見えるのだろう。普段は可愛い子ぶっているとわかっていても可愛い容姿をしているのに、今はとても可愛らしさは感じられない。


エリオットの前ではいったいどれだけ猫を被っていたのだろうか。わざわざ文句を言いに行くほどか弱いと思わせられるトーク術を一度見てみたいものだ。


感心する余裕があるほど、ジェマの心は凪いでいた。リリアンはこれまでにもたまに突発的にヒステリーを起こすことはあったが、たいていは()()()()()()()()()()()でいる。


ジェマは恋愛物語の主人公に相応しく、可憐で愛らしくお節介でちょっと無神経なリリアンのことが大嫌いだ。


けれどヒステリーを起こしているリリアンのことは意外と嫌いではない。むしろ化け物みたいに話が通じない普段よりも会話が成立するので、うるさいのを我慢すれば割といけるのだ。



「だから何!? それとこれと何の関係があるわけ!? あたしを口実にして密会するとかマジで意味わかんない!! 断るでしょ普通!! 『応援する〜』とか言っておきながら『やっぱりあたしも好きになっちゃった』とか言ってちゃっかり付き合うやつじゃん! マジ最悪なんだけど!」



なんだか話口調がマーサに似てきた。


つい最近まで平民だったせいだろうか。しかしそれでも品のない言葉遣いだ。若い女性冒険者がリリアンのような口調で話しているのを聞いたことはあるが、平民でもそこそこ育ちの良い女の子はこういう乱暴な話し方はしない。


男性的な口調でもないし、女性的でもない。しかしなんとなく下品な感じがあまり好きではない。



言動がおかしいだけで一応貴族令嬢としての最低限の基礎作法は身に付いていたはずなのに。アンジェリカたちのように身に沁みついているというわけではなかったのだろう。


それならそれであそこまで演じ切れていたことはやはり感心する。



「なんなの!? 乙女ゲームなんて興味ないって言ったじゃん!! エリオットのこと好きなっちゃったわけ!?」


「は!? ふざけるのも大概にしてくれるかな! そもそもあんな気持ち悪い奴のどこがそんなに良いんだ。君だって好きだから入れ込んでるわけじゃないでしょ? 本当にアレのことが好きだって言えるようになってから怒ったら?」


「何逆切れしてんの!? あげるって言ったくせにここまで来て横取りとかマジあり得ないんだけど!!」


「いや他人の婚約者に手ぇ出してる奴がどの口で言ってんの? 盗人猛々しいにもほどがあるんだけど」


「はぁ!? ふざけんな!! ヒロインのモノって決まってるんだからあたしのモノじゃん!!」


「…………は??」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ