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18匹目:ホットココアで一息ついて 1

毎日1000PV&ブクマ100人&評価10人!!

目標全部達成しました~!!感謝~!!!!

すごいね!!リリアちゃんのSSRもログボで貰った鍵で2枚も来てくれたし、今年はすでにめちゃめちゃ良い年です!いぇーい!!


ストックがなくなったから頑張るぞ~!!




最近忘れがちだが、元々この湖には結構重めな曰くがあった。何十年だか前に、婚約者に裏切られた令嬢が身投げしたというものだ。


登場人物は男子生徒が1人と女子生徒が2人。女子生徒のうち、地位の高い方の貴族令嬢が男子生徒と婚約していて、平民の女子生徒と男子生徒が恋仲になった。その密会場所として使われていたのがこの東屋で、そこに乗り込んで来た令嬢と揉み合いになって湖に落ちたというのが真相らしい。


令嬢は一命を取り留めたものの、婚約は破棄。


この湖には『不貞相手との密会場所』と『婚約者に裏切られた令嬢が落水した』という2つの曰くが付くことになり、恋愛や婚約と言った話題とはとても相性が悪いスポットとなった。



しかしそんな噂も、裏返せば『この湖に落ちればどんな婚約でもケチが付く』ということになる。


実際に、当人たちの相性が悪いというだけでは解消も変更もできないような婚約が、令嬢がこの湖に落ちたというだけで()()()()()()()()()になった例がいくつもあるらしい。クロエの調べでは、中にはその噂を逆手にとって女性が男性を嵌めた件もあるそうだが、それだけ社交界にも影響がある曰くだということだ。



つまり、もし今アンジェリカがこの湖に落ちれば、エリオットとの婚約は8割方破棄になると考えて良い。


そういう意味でも、実はジェマの提案した冷却期間を置くという提案は、ジェマの想像よりもだいぶ優しく周囲への影響力も少ない良い作戦であった。もし思い詰めたアンジェリカがふらりと飛び込むようなことがあれば、ただでさえ高位貴族からの評判が良くないエリオットには二度と良い縁談は見つからない可能性さえある。大公家と公爵家からもあっさりと許可が下りた理由がそれだった。



「関係者以外、しっかりと人払いをするのならという条件で、エリオットとがつんと喧嘩をしても良いと許可が出たわ」



アンジェリカは肩の力が抜けたようにふにゃりと顔を緩めた。両隣に座るクロエとシェリーと順番に目を見合わせて、ジェマはそっとホットココアを啜った。


完璧な淑女なんて称されるアンジェリカから出る「がつんと喧嘩」がちょっとだけ面白い。


もういっそのこと何も考えずに楽しんでしまおうかなんて思考を放棄しようとしたのを察知したかのように、背後でゆらゆらと揺れていた尻尾をクロエに鷲掴みにされた。



「えぇと、本当にぶん殴るご予定ですか? その、あのときにこの子たちを止めきれなかったわたくしの責任もございますけれど、さすがにそれの許可が下りるなんて……。え? 本当に?」


「落ち着いてクロエ。わたくしも落ち着くから」


「あらまぁすごいですわね。平手打ちですか? それとも拳で?」


「クリスティーナ様は順応が早すぎるのでは??」



あの馬鹿みたいな勢いとノリと屁理屈で乗り切っただけの提案がまさかわずか3日で採用されるなんて。


ジェマは思わずドン引きしていた。婚約者と喧嘩をするのに親の許可がいるというのもおかしいし、決闘でもないのに大公令息をぶん殴る許可が出るというのもおかしな話だ。これまでのエリオットの言動がそれだけヤバかったということだろうか。ジェマも今年のエリオットの動向については元凶を通じて逐一情報が入ってきていたので、納得ではある。



あれだけリリアンを殴ろうとノリノリだったシェリーも、さすがに大公令息を殴ることには躊躇するらしい。というよりは、本当に許可が下りるとは思ってもみなかったというところだろうか。


今更ながらにクロエと一緒になって焦っているが、すでにアンジェリカの方がノリノリになってしまっている。



「そうね……。どうかしら。わたくし喧嘩なんてしたことがないからわからないのよね」


「いやいやいや! 考えるまでもなく拳はいけませんよ!?」


「ちゃんと話をすることが最終目標ですよね? 殴ることが目的じゃありませんよね?」


「でもこれまでの冷遇を考えると、殴ることが目的でも良さそうだけれど」


「クリスティーナ様はすぐそうやって唆すんですから! 他人事だと思って!」



あらあらと楽しそうに笑うクリスティーナは、たぶんエリオットのことが嫌いだ。ちょろちょろと余計な合いの手を入れて、アンジェリカを誘惑している。


やはりフランツにちょっかいを出しているリリアンのことをよく思っていないせいだろうか。リリアン1人と親しくすることで色んな方面から敵視と恨みを買ってしまうエリオットが少々可哀想にもなってくる。



なんだかふにゃふにゃしているアンジェリカをぼんやりと眺めながら、ジェマはこてりと首を傾げた。


普通にまともそうに見えるアンジェリカだが、想像以上に精神がやられているのかもしれない。今思い返せば、この東屋で思い切り泣いたあと、ジェマが()()()()()と判断したあのときからすでにおかしかったのかもしれない。


ジェマはそれまでアンジェリカと交流がなかったので判断が付かなかった。しかしアンジェリカを唆したのは盛大な間違えだったような気がしてきた。



(いや、まともな反応は絶対にクロエとシェリーの方なんだよな……。クリスティーナ様のこれは楽しんでるだけだろうからほっといても良いけど、アンジェリカ様を放置するのはなんか怖いんだけどどうしよ)



ふぅと甘い息を吐き出して、慌ててアンジェリカを引き留めようとするクロエとシェリーの声に耳を傾ける。


殴ること自体を目的とせず、会話をするための手段とすべきだと。


2人の主張は紛れもなく正論だ。屁理屈ではあったが、ジェマもそのつもりで言いくるめようとした。しかしそれにしてはアンジェリカの態度がおかしい。



柔らかく微笑むアンジェリカはとても綺麗だ。ピンと伸びた背筋も感情の読めない微笑みも変わらないのに、その金の瞳には光がないような気がする。


初めてアンジェリカと話をしたあの日は、もっと元気で明るい方向へ吹っ切れていたような気がしたのに。ここに至るまでの2カ月強で何があったのだろうか。







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