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17匹目:人の話を聞かないくせに手土産すら持って来ない阿呆 4

4/5


新年あけましておめでとうございます!

年明けすぐから見に来てくださってすごーく嬉しいです!ありがとう~!!


今年も楽しんでいただけたら嬉しいです♪






「だからわたしは相談には乗りませんって。【幸運の猫】なんて言ったって、別にわたしが悩みを解決してあげてるわけじゃありません。皆さま、どこでも話せないことを勝手に話しているだけです。わたしに答えを求めないでください」



ジェマは相談には乗れない。責任を取りたくないので、高位貴族の婚約事情に首を突っ込むなんてもってのほかである。


ただの恋愛相談の範疇で収まるならともかく、アンジェリカとエリオットの婚約には国王までもが絡んでいる。ジェマが適当なアドバイスをしたせいで大変なことになったら、最悪後見人であるアシュダートン伯爵家が責任を負うのだ。



アンジェリカにエリオットを殴ってしまえと提案したことなんてすっかり棚に上げて、ジェマは「できません」「無理です」「わかりません」と繰り返した。



リリアンには直接的な被害を受けているのでそちらの件であれば乗り込んでやってもいい。大公令息から依頼されたという大義名分があれば、平民のジェマでも遠慮なく貴族令嬢をぶん殴れる。いやどんな理由があろうと殴るのはよろしくないし、初めの相談内容的に権力でぶん殴られるのはジェマであるが。



「先にアンジェリカ様との会話を放棄したのはあなたなのですから、まずは頭でも下げてこられてはいかがですか」


「なぜ俺が話してくれと頭を下げなければならないんだ。婚約者なのだから会話くらいするのは当然だろう」


()()()()()()アンジェリカ様の好きなものさえ知らないあなたが、それをアンジェリカ様に押し付けるんですか?」


「アンジェリカの好きなものくらい知っている!!」



言ってみろと促すと、エリオットは案の定口ごもった。


それはそうだ。なにせこいつは婚約者(アンジェリカ)の機嫌を取るために浮気相手(リリアン)の好物を贈った男。甘味があまり好きではないアンジェリカにとろ甘ミルクチョコレートを購入してきた阿呆。あまつさえそれを指摘されたら、『俺から贈ればなんでもいいはず』と宣った嫌なタイプの俺様だ。言えることなどたいして無いに違いない。



「……アンジェリカは、リリアンのように自分の話をしてくれない」


「そりゃそうでしょう。淑女教育では自分のことばかりを話してもいいなんて習いませんから。しかもあのアンジェリカ様が、迷惑そうにしてる相手に自分の好きなものの話なんてすると思います? あなたもあからさまに嫌そうな顔でもしてたんじゃないんですか」



またうっかり本音がまろび出た。まぁいいやとトラブルの種を未来に放り投げて、マフラーの中で舌を出す。



「そもそも、この歳で完璧な淑女と呼ばれているアンジェリカ様と、学院で必修の最低限の淑女教育すら落第スレスレのランズベリー嬢を比べてどうするんです? もはや住む世界が違うレベルで考え方も物事の捉え方も違いますよ、あの2人。同じ女だからという大雑把な括りだけで一緒くたにしたって、あなたが痛い目を見るだけで何も良いことはありませんよ」



エリオットにとっては2人とも等しく目下の少女なのかもしれないが、本来アンジェリカとリリアンは比較対象にはなり得ない組み合わせである。


受けてきた教育も違えば、背負っているものの重さも違う。その身に流れる血の尊さも違うし、自分の置かれた状況への理解度もまるで違う。


求められているものも違うので、アンジェリカが窮屈な思いをして我慢していることでも、自由奔放に生きることが許されているリリアンは「やりたいならやればいいのに」と平気で言ってのける。


それを無神経と捉えるか天真爛漫と捉えるかは人によるだろうが、リリアンに許されていることがそのままアンジェリカにも許されるわけではない。リリアンは平民上がりの新米男爵令嬢だから許されているのだ。アンジェリカがリリアンと同じ言動をする日はきっと永遠に来ない。



「…………ぅるさい。うるさい! お前に関係ないだろうが!!」


「だから関係ないからわたしに言われても困りますって何回も言ってるのに」



予想通りというかなんというか、エリオットは癇癪を起こした子どものようにガンっと思い切り机を叩いた。拳で石造りの机を殴りつけたのですごい音がした。身構えていたジェマでも、思わずぶわりと尻尾が逆立った。


安物のカップを出しておいて良かったなぁと、顔を真っ赤にして肩で息をしているエリオットを見遣る。


本当に7歳も年上なのだろうか。ちょっと言い返しただけでここまでキレるのは図星にしても酷すぎる。もう成人しているのだから、15歳相手にキレて暴れないで欲しい。


何はともあれ、本当にアンジェリカとは相性が悪そうなクソガキだ。アンジェリカはジェマ相手にも表向き綺麗に微笑みながら困っているところをよく見る。全く理解はできないけど楽しそうだから良しと幼児を見守っている大人と同じ目をしているのだ。



「あんなやつと話しても楽しくもなんともない! 年下のくせに説教臭くて可愛げもないし、何を贈っても素直に喜ぶことすらできない! なぜ俺があんな嫌な女の機嫌を取って気持ちよく話させてやらなきゃいけないんだ!」


「いや普通に会話すりゃいいのでは? なぜ機嫌を取るか取られるかの2択なんです?」


「は??」


「んぇ、なんでぇ?」



別に今のはキレ散らかすところじゃないだろう。


もしかしたら、王族というのは普通に会話をするということを知らないのかもしれない。バチ切れしながらの「は?」はもう喧嘩にしかならない返しだ。


対等な相手がいないとまともな会話すらできなくなるのだろうか。いやでもアンジェリカは普通に優しいし個人の問題だろうか。


まぁなんでもいいやと切り替えて、握りしめた拳を震わせているエリオットをどうしようかとため息を吐いた。




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