17匹目:人の話を聞かないくせに手土産すら持って来ない阿呆 3
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11月から突発的に無計画なままスタートしてみた連載ですが、まさか毎日1000PVも見ていただけるほどになるとは思いませんでした…! これまでだいたい2,3000字で挫折してきたので、夢路的にはとんでもない快挙です!!
読んでくださった方々、評価ブクマいいねしてくださった方々、本当にありがとうございます!
作中でももうすぐ新年なので、今日も明日も通常更新です!
2022年、ありがとうございました~!
ひゅるるると思わず身震いしてしまう冷たい音を立てて、冬の風が吹き抜けていった。
せっかく買いそろえた暖房器具は、本日は使っていなかった。
だって約束もなしに来たエリオットが先に東屋を占領していたのだもの。それでお茶だけ要求して勝手に話し始めたのだもの。わざわざジェマが快適な空間を提供してやる義理はないのだ。
現在ぶん殴ろうぜ作戦をどうするかアンジェリカの返事待ちであるため、なんとなくエリオットの件はジェマの手を離れた気持ちになっていて油断した。ジェマが気付いた時にはエリオットに見つかっていた。大公令息に声をかけられてあからさまに逃げるわけにもいかず、しぶしぶ席に着いただけなのだ。
ふぅと息を整えたジェマの口の端が、ぴくりと動いた。自分の発言ながら、あまりにも酷い言い分に思わず笑いそうになった。ジェマの方から詰問しておいて、答えたら答えたで「そんなもん知らん」とは。興味がなさすぎて不敬も甚だしい。
自分で思っていた以上にエリオットに対する怒りは大きかったようだ。一気に気が抜けて、一瞬で飽きた。
呆気に取られて黙り込んだエリオットを横目に、大きく息を吐いてから紅茶をぐいっと呷る。
「そういう言い方をなさるということは、ご自分でもアンジェリカ様に不義理を働いていることはご自覚なさっておられるのでしょう。学園にいる間の息抜きなどと称するからには、あなたが卒業されたあとのランズベリー嬢の処遇についても責任を持つつもりはないということですね。結局どっちつかずにふらふら天秤にかけて2人の令嬢を弄んでいるだけだと。そんなことをわたしに報告されても困ります。あなたがたの三角関係にわたしが入る隙はありませんし、入るつもりもありません。平民のわたしには何か言えることもありません。懺悔をなさりたいのなら教会へどうぞ。謝罪をする気になられたのならアンジェリカ様かランズベリー嬢の元へ行かれてはいかがでしょうか」
口を挟む間も与えずつらつらと言い募って、ジェマは校舎への道へ手を伸ばした。
「お帰りはあちらです。お好きにどうぞ」
エリオットが息を呑む音がはっきりと聞こえた。もしかしたらここまで突き放されたのは初めてなのかもしれない。
しかしこれっぽっちの罪悪感も湧かない。何せ彼はもう22歳。ジェマよりも7歳も年上なのだ。まず15の平民の小娘に重たい人生相談をしている自覚を持ってほしい。本来は大公令息と公爵令嬢の婚約なんて新聞で見て「へぇー」と言うだけの雲の上の話だ。
頼りなさ過ぎて、コレを結婚相手候補として見ることは絶対に無理。けれど目を瞬かせ戸惑っているエリオットは、捨てられた子犬のようでちょっとだけ可愛い。
本当に黙っていれば見た目だけは良い男なのだ。いっそのこと精神的にも財力的にも余裕のある年上の未亡人にでも婿入りさせるのが1番丸く収まるのではなかろうか。
「こんな寒い中で粘っても、わたしはあなたのことは肯定も否定もいたしませんよ」
簡潔に言えばどうでもいいだけだが。
おそらくアンジェリカの元へ行けば非難され、リリアンの元へ行けば全肯定されることだろう。好きに行き先を選べばいい。
7つも年下の少女を睨むことで辛うじて体裁を保っているエリオットでは、きっとどちらも選べないだろう。ジェマはそっと腕を下ろしてマフラーに顔を埋め直した。
そもそも、ジェマが勝手にアンジェリカとリリアンの2択しかないかのように選択を迫っているだけで、実際にはいくらでも他の選択肢が存在する。全てを放棄して親に頭を下げに行くでも良し、親身に相談に乗ってくれそうな人のところへ行くも良し。
というかまず、エリオットがわざわざこんな寒い吹きさらしの場所へ赴いた理由を思い出したら良い。初めの質問は『リリアンを泣かせただろ。何してくれてんだ』だった。
エリオットの待遇や将来などジェマには関係がない。改めて謝罪を要求されても迷惑なので、話を戻すつもりはないが。
あからさまにめんどくさいなぁという顔をしながら、ぼけっとしているエリオットから視線を逸らした。
強い風が吹き、大樹が揺れ透水花が涼やかな音色を奏でた。暖房器具の一切ない東屋では寒いばかりで、さすがに綺麗だと思える余裕もない。なんでもいいから早く結論を出してくれと恨めし気に尻尾を振る。
「…………アンジェリカは最近ろくに話してくれないから無理だ」
思わず罵声が飛び出そうになって、もこもこのマフラーをぎゅっと握りしめた。冷たくなった鼻を埋めてこっそりため息を吐く。
「リリアンに相談できることでもない。だからお前に訊いているんだろう」
(いや、リリアンを泣かせた件で来たんじゃないの?)
終始「何言ってんだこいつは」という感想しか出てこない。ジェマは顔のパーツを思いっきり内側に寄せて、ぺたんと耳を伏せた。




