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26匹目:あの日のアップルパイをもう1度 6

投稿前にちょっと読み直して手直ししようと思ったら20時過ぎてました!びっくり!





アンジェリカのためを思って怒ってくれる友人は「エリオットは不誠実だ」と言っていた。


それほどアンジェリカのことが気に入らないのであれば、まだ婚約を解消しても瑕疵とならないうちに白紙に戻すべき。そして婚約を継続するのであれば、最低限紳士的な振る舞いをするべきだと。



アンジェリカも他人にアドバイスをするとしたら同じことを言うだろう。今のエリオットの態度はどっちつかずでよくわからない。


もしもっとハッキリ拒絶したり問題視されるほどに不貞を働いたりすれば、アンジェリカが訴えたときの大人たちの反応も違ったものになっただろう。大公家の方から婚約の白紙化を申し込まれることもあったかもしれない。


けれどちょっとキツイ嫌味を言ったり、婚約者に見せつけるように他の可愛らしい令嬢と談笑してみせたり、アンジェリカが好きだと言ったスイーツを意地でも食べようとしなかったり。


そんな子どものわがままみたいな可愛らしい反抗でどうにかできるほど、大公令息と公爵令嬢の婚約は安くない。



エリオットは我が国と隣国、双方の王族同士が結婚して生まれた子どもだ。


どちらの王家の血も色濃く受け継いでいるエリオットの結婚相手は、彼が生まれる前から探されていたという。アンジェリカが生まれたのも、もしかしたらエリオットのためだったかもしれない。


高位貴族の婚約なんてそんなものではあるけれど、その中でもエリオットの相手はさらに吟味されなければならない。王家の血が濃いということは、それぞれの王家の血に含まれる魔力や秘伝とされている魔法なども遺伝している可能性があり、さらにエリオットの子どもにもそれが遺伝する可能性が十分ある。


王家の血そのものに利用価値があるため、子どもを作れなくすれば良いという問題でもない。


もしエリオットが他国の王族と恋に落ちて結婚したいなどと言い出しても、それが認められるためにはかなりの苦労をすることとなるだろう。


国内の貴族でも、政治的な派閥というものがある。ランプリング公爵家は保守派で現王と王太子を支持しているが、他の王位継承者を支持する派閥や好戦的な派閥なども存在している。王位継承権はないものの、2国の王家の血を色濃く受け継ぐエリオットが何も考えずにどこかの派閥を選んでしまえば、社交界は混乱するどころの話ではなくなる。



これまではそう懇々と繰り返し説明すれば、不機嫌になりながらも納得して手を切ってくれていた。


けれどランズベリー男爵令嬢にはその理屈が通用しなかった。


ランズベリー男爵は昨年男爵位を授けられたばかりの新興貴族だ。男爵自身は平民出身で、妻はとうの昔に没落した元男爵家の出身。特別な後ろ盾もなくその功績が認められたため、社交にも疎いらしい。まだどこの派閥にも入っておらず、横のつながりも薄い。


もしエリオットがどうしてもランズベリー男爵令嬢と結婚したいと言うのなら、家ごとこちらの派閥へ引き込んでしまえば問題ないと言うこともできるのだ。


しかしその場合でもエリオットが家を興すことは現実的ではない。継ぐ家もないエリオットがランズベリー男爵令嬢と結婚するなら、エリオットが男爵家に婿入りすることとなるだろう。けれどそれもやはり現実的とは言えない。


実際の落としどころは、エリオットがアンジェリカに婿入りした上で、ランズベリー男爵令嬢を妾とするといったところだ。



「でもそれは……」



どうしてもアンジェリカはその結末だけは受け入れられそうになかった。


エリオットには昔のように屈託なく笑っていてほしい。そのためにはアンジェリカではなくてランズベリー男爵令嬢が必要なのかもしれない。けれど、どれだけ経っても最低限の礼儀すらわきまえることのできないランズベリー男爵令嬢のことがどうしても受け入れられない。




『君もランズベリー嬢から愛嬌というものを学んではいかがか』



いや違う。嫉妬だ。


どれだけ綺麗ごとを並べても、あのエリオットの言葉が頭から離れない。ランズベリー男爵令嬢から直接同じようなことを言われたときはまったく気にならなかったのに、エリオットが言ったというだけで心に深く突き刺さってしまった。



これまでアンジェリカが大事にしてきた礼儀もマナーもかなぐり捨ててただ可愛いだけの女の子で居れば、エリオットはまた笑いかけてくれるようになるのだろうか。




『可愛いですよ、アンジェリカ様』



あの日、みっともなく泣き腫らした後を隠すように化粧を施してくれたジェマが、とても眩しい笑顔でそう言ってくれた。


それがとても嬉しくて、けれど少しこそばゆくて、いつもの微笑みも忘れて答えた声は恥ずかしいほどに小さかった。




『……ありがとう』




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