25匹目:チーズケーキはあんまり好きじゃない 10
今日も読みに来てくれてありがとう!
昨日からちょっと具合が悪くてとっても短いです…!
ジェマはリリアンの言うハッピーエンドが何を指しているのかよく知らない。
建国祭でのエスコートを目標としているのならば、本気で結婚を見据えているような気もするけれどゲーム感覚で恋愛を楽しんでいたリリアンのことだ。今後のことなど何も考えていなかったとしてもおかしくない。
クリスティーナお気に入りのレモンパイにフォークを差し込みながら、ジェマは細く息を吐いた。
これまでのリリアンの言動からして、どうやって大公令息と結婚するつもりだったのかなんてしっかり考えているとは思えない。
つまりは初めから、リリアンはリリアンの望むハッピーエンドに向かってすらいなかったとも言える。
改めて今更な話をしているなと退屈を噛み殺し、宥めようと試みるアンジェリカとリリアンの攻防を聞き流す。ジェマに釣られたのか飽きたのか、シリルを始めクロエたちまでが黙ってお菓子を食べ始めた。ここには心の底からアンジェリカたち3人を心配している人はいないらしい。
自分のことを棚に上げ、なんとも薄情なものだと尻尾を揺らした。
「もういいっ。じゃあやめる!!」
もう1抜けしたとばかりに気を抜いていたジェマは、とてつもなく嫌な予感がして動きを止めた。
しかし先ほどもう余計なことは言わないようにしようと新たに決意したばかりである。ぎこちなく切り分けたレモンパイを口に運び、少し酸味の強いレモンパイに尻尾を震わせる。
「……学園を辞めたら良いという話ではないわ」
「うるさい! ヒロインをやめるって言ってんの! 返す!! それならもうあたしには関係ないでしょ!? もうほっといてよ!!」
「落ち着いて。そのヒロインをやめるというのはよくわからないけれど、何をしたとしてもあなたのしたことがなくなるわけではないから」
「だからほっといてってば!!」
嫌な予感がぴったりと当たってしまった。周りにバレないようにこっそりため息を吐き、もうひと口レモンパイを頬張る。
幼子の癇癪のように「もうやめる」「やだ」「ほっといて!」と繰り返して話にならないリリアンに、アンジェリカがせっせと声をかける。けれど大人の正論で子どもの癇癪が収まるわけもない。ちらりと見えたリリアンは、拘束されているせいでうずくまることすらできずに髪を振り乱していた。
リリアン物語を知った後も、ジェマはヒロイン役を求めていない。
ジェマは恋愛ごっこをするために学園に入学したわけではない。入学して早々に学業を放り出して恋愛だけに全振りして遊ぶような真似をするわけがない。後見して学費も援助してくれているアシュダートン伯爵家への恩を仇で返すようなこともできないし、リリアンほど恋愛にだけ注力するような興味も熱量もない。
さらにその相手が高位貴族と10歳も離れた年上だけともなれば、好奇心すら湧かないというものだ。
今でもその気持ちは変わらない。返されたとしてもジェマは何もしないし、リリアンの処分にも口を出さない。
せっかくうまいことまとまったと思っていたのに、最後の最後の盛大に引きずり込まないでほしい。




