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説明より先に行動

「最後はとりさん組。リーダーはオレで、メンバーはフウツとデレーとヒトギラだな。っと、あとアクィラか。デレーから離れられないんだもんな」


「そうよ、お姉さんもいるのよ」


 するりとアクィラが斧から半分姿を現す。

 だが、心なしか元気が無い。


「アクィラ、体調でも悪いの?」


「あらまあ! さすがフウツちゃん、気付いてくれるなんてお姉さん感激よ。その通り、お姉さんちょこっと力が出ないの。どうも魔界の空気、というか魔力が体に合わなくてね」


 そういえば、俺の力が暴走してみんなの魔力を吸い取る謎の物体が出て来た時にも、「精霊は繊細なんだから」と言っていた。

 元々実体を持たない種族だし、魔力の影響を受けやすいのか。


「でも、こうして斧の中で寝てたら平気よ。お話しはできないけど加護は与えられるし心配しないでね」


「ちなみにその問題を解消するための魔法道具は、既に作り始めておるぞい。天才の大船に乗った気でいると良い」


 エラが自慢げに付け加える。

 よかった、それなら安心だ。


「あっ、何度も中断しちゃってごめん」


「気にするなフウツ! 疑問は都度潰していった方が良いからな! ええとそれで、次はとりさん組の役割だな」


 度々話が脱線しているというのに、嫌な顔ひとつしないゼン……あまりにも人ができすぎていやしないだろうか。

 これが大きな組織を纏めるリーダーの器、というやつかもしれない。


「とりさん組がするのは仲間集めだ。ちょうちょ組が集めた情報に従って、レジスタンスに協力してくれる人のところへ行く。場合によっては組織ごと味方に付けるべく交渉するかもしれない。そこで鍵になるのが――フウツ、キミだ!」


「俺?」


「そう、キミは成熟しきった『魔王の器』だ。ということは、その気になれば現在の魔王と同等の力を発揮できるはず。『勇者』と並ぶ切り札として、魔王に勝てる可能性があることを相手にアピールする」


「でも……確かにちょっとは魔力を扱えるようになったけど、まだ魔王には全然及ばないよ」


「大丈夫、そこは実戦あるのみだ! 交渉するなら3回に1回くらいは拳を交わすことになるだろうし、使っていくうちに上手くなるさ」


「ど、どんな交渉をするつもりなの……?」


 俺の知ってる「交渉」は話し合いで平和的に取り決めをするものなんだけど、魔界では一味違うらしい。


「詳しいことはそれぞれのリーダーに伝えてあるから、各自できることから始めてくれ! 他、今のうちに聞いておきたいことは?」


「はいはい!」


 バサークが挙手する。


「メイルとキャルラは?」


「む! そうだ、言うのを忘れていたな。2人は今朝、第二支部へ移動した」


「なんでなんでー?」


「向こうにはメイルと同じように住める場所が無く、しかし幼い身内を連れた者がいる。だから年の近い子がいた方がキャルラにとっても良いだろう、とオレが勧めたんだ」


 伝えるのが遅くなって悪い、とゼンは付け加えた。

 ということは昨日1日で支部と本部を回り、2人を移動させる手はずまで整えていたのか。


「うん、あとはもう無いな? じゃあ活動開始! 行くぞ!」


 手を鳴らしてゼンは言い、足早に部屋を出て行く。


「行きましょう、フウツさん」


「うん!」


 デレーに手を引かれ、俺たちも彼の後に続いた。


 ゼンは玄関ホールを抜けて入り口に……は向かわず、横の大部屋に入る。

 あれ、まだ何か準備があるのかな? と思いつつも素直について行くと、そこで彼はぴたりと立ち止まった。


 部屋はだだっ広く、家具も何も置かれていない。

 部屋というより真っ白な箱だ。

 そんな中でくるりと振り返り、ゼンは笑顔でこう言った。


「よし! 手合わせだ! 武器を構えろ!」


「え? って、うわあっ!?」


 言葉の意味を飲み込む前に、大剣を手に斬りかかってくるゼン。

 俺は慌てて腰の剣を抜いて受け止める。


「おお、なかなかの反応速度だ!」


 彼はニコニコと笑う。


「ふざけた真似しやがって……」


 ヒトギラの憎々しげな声と共に、ゼンの背後にいくつもの火の玉が現れ一斉に襲い掛かった。

 それをひらりと躱したゼンを、すかさずデレーが追撃する。


「いいぞいいぞ! その調子だ!」


「ほ、ほんとにここでやるの!?」


 2人の攻撃をかいくぐって距離を詰めてくるゼンの斬撃を、なんとか受け流しながら俺は言う。

 だって既に床が焦げたり割れたりしているのだ。


「やるとも! ほら本気でやらないと怪我するぞー!」


 容赦のない攻め方からして、その言葉ははったりではなさそうである。

 俺は腹をくくり、剣を握る手に力を込めた。


「わかった!」


「ふふん、そうこなくっちゃ」


 ゼンの懐に潜り込み、剣を下から上へと振り上げる。

 しかしゼンは仰け反ってそれを避け、体を半回転させながら足を蹴り上げた。

 危うく顎に一発喰らいそうになるも、咄嗟に後ずさって事なきを得る。


「良い太刀筋だ! 切り替えが早い奴は好きだぞ!」


 俺はそのままさらに下がり、入れ替わるようにデレーが前に出て斬りかかった。

 ゼンは大剣の腹で斧を防ぐ。


「おっと、見かけによらず重いな。精霊……アクィラの加護があるにしても、結構なもんだ」


「あなた、先ほどから馴れ馴れしくってよ! フウツさんを口説かないでくださいまし!」


「ははは! あれはそういう意味じゃないから安心しろ!」


 競り合っているところに再び火の玉が飛来する。

 火の玉は器用にデレーを避け、大剣にのみ直撃した。


「っと」


 大剣が弾かれ、ゼンが体勢を崩す。

 そこへデレーがさらなる攻撃を繰り出さんと斧を振りかぶった。

 対するゼンの大剣は、それを迎え撃つべく振り上げられて――


「うおっ!?」


 俺が反対側から叩き込んだ一撃により、あえなくゼンの手を離れた。


「やった!」


 大剣は大きな音を立てて床に落ちる。

 勝負あり、だ。


「おお……やるなあ、キミたち。てっきりデレーから攻撃が来るものだと。いやあ、まんまと隙を突かれたよ」


「うふふ、これも愛の為せる技ですわ」


 デレーはぽっと頬を赤らめて、俺に体を寄せた。


「ヒトギラの魔法も厄介だった! どの角度からでも的確に飛んでくるもんだから、常に意識を割かざるを得なかったぞ」


「ふん」


 露骨に顔を逸らすヒトギラ。

 一見すると照れ隠しのようだが、これは別に照れているわけではなく単純に目を合わせたくないだけである。


「何よりキミたち、恐ろしいほど連携が取れてるな! さすが、共に戦ってきただけある。だいたい2、3年間くらい連れ添って来たんじゃないか?」


「いや、出会って半年も経たないくらいだよ」


「そうなのか!? そいつはたまげた。ならきっと、前世からの盟友か何かだな!」


「あはは、そうかもね」


 前世からの仲、か。

 確かにみんなといると得も言われぬ安心感があるし、案外、本当にそうだったりして。


「じゃ、準備運動も終わったとこで、まずは第一支部に行くか!」


「あ、準備運動だったんだこれ……」


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