表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/212

ジュネの街

 俺たちは傷の手当てを行いつつ、エラの話を聞いた。

 きょじんくんの肩には毒矢、右腕には石化ビーム砲、左腕には剣が仕込んであることが判明した。

 それぞれトキ、フワリ、ヒトギラの案を採用したものである。

 付け加えると、石化ビーム砲は本当に相手を石にするわけではなく、拘束魔法を撃ち出すものとのことだ。


 また、単純な歩行だけでなく、人間のように蹴りやパンチを繰り出すことも可能。

 動く速度はさすがに少し遅いものの、破壊力は抜群である。

 なにせ鉄の塊なので。


 とまあこのような戦闘機能も盛り込まれてはいるが、さすがにいざ使うとなると魔力消費量が馬鹿にならない。

 複数人が同時に魔力を込めないと間に合わないほどらしい。

 よってエラ曰く、よっぽど追い詰められない限りこれらの機能は使わない予定だ。


 対してよく使うことになりそうなのが、飛行機能周辺だ。


 どうあがいても鉄人形、きょじんくんの中からは外の様子が見えない。

 そこでエラは、そこを補う機能を付けた。

 操縦室の壁にある方眼紙がそのひとつだ。


 方眼紙には特殊な魔法がかかっており、きょじんくんの周囲の生体反応? を黒い丸で示す。

 例えば乗り込んだ時にあった2つの黒丸は、カターさんとナオの位置を示していた。


 さらに、それだけではやはり心もとない、と外の景色を直接見る装置も。

 操縦室のあちこちに設置してある管がそれだ。


 管はきょじんくんの目や足など各部分に繋がっており、中に鏡を入れることで実際にそこから見える景色を、管を覗くことで確認できるという寸法である。


 そこは魔法じゃないんだ、と思ったが「天才はひとつの方法にばかりは頼らぬものよ」らしい。


「であるからして……おっと、もうそろそろ目的地じゃ」


 どのくらい経ったか、エラはそう言うとまた中央の机に手を当て、きょじんくんを着陸させた。


「どれ、確認するとしよう。ちゃんと残っとると良いがのう……」


 ひとりごちながら彼女は外に出て行く。

 どうやらここには、何かを求めて来たようだ。

 俺たちも続いてきょじんくんの外に出ることにした。


 狭い階段を通り戸を開ける。

 途端に、ひやりとした風が舞い込んで来た。


「わ、なんだか涼しいね」


「そうですわね。もうすぐ夏だというのに……よほど北の方なのでしょうか」


 足元に気を付けつつ、地面に降り立つ。

 見るとそこは、山間の少し開けた場所のようだった。


 山ということは竜人の里があるかもしれない。

 俺はぐるりと辺りを見回した。

 みんな怪我の手当ては済んだけど体力は戻っていないんだ、お願いだから竜人とかいませんように。


「おーい、デレー! ちょっと来とくれー!」


 木々の隙間を縫ってエラの声が飛んでくる。

 名指しで呼ばれたデレーは首を傾げながらも「今行きますわ!」と駆けていった。


 鬱蒼とした森の中は、外からではよく見えない。

 何だろう、気になるな……。


「ここを斧でがつんとやってほしいのじゃ」


「森林伐採に目覚めましたの?」


「違わい。まあ斬ったらわかるから、思い切りやっとくれ」


「はあ、わかりましたわ」


 漏れ聞こえてくる声からして、木を切り倒すつもりなのだろうか。


 そんな予想は的中し、ややあってガンッという音、次いでメキメキと木がへし折れる音がした。


「おお、あったあった。よいせっと……ご苦労、デレー」


 少し間を置き2人が出てくる。

 エラの手には、お目当ての品らしき直方体があった。

 かなり大きく角材のようなそれを掲げ、彼女は言う。


「やあやあ、喜ぶが良いぞ皆の者。これなるは初期型ワープ魔法発動装置、えーっと……ナントカカントカじゃ」


 名前は忘れたらしい。

 初期型と言っているし、随分と前に作ったのだろう。


「ああ、それを取りに来たんですね。木の中に隠してあったんですか?」


「そうじゃ。木とは言っても半分ハリボテじゃがの。ともあれ、これで移動がまた楽になる。きょじんくんではどうしても目立つからのう。さて、もう少し進むぞい」


 エラに促され、俺たちは再びきょじんくんに乗り込んだ。

 きょじんくんは森の中をゆっくりと歩いて行く。


 日は傾き始めており、夕陽を反射する鉄の体はさぞ眩しいだそうな、とどうでもいいことを思った。

 しばらく坂を下り続け、平地に着いたところできょじんくんはぴたりと動きを止める。


「ふう、ぎりぎり辿り着けたな。以前のわしめ、魔力を必要分ちょうどしか溜めておかんとは、いったいどういうことじゃ」


 過去の自分にぷりぷり怒るエラに続いて、再び地上に降りる。

 そこは相変わらず山の中であったが、さきほどとはひとつだけ大きな違いがあった。


「建物がたくさん……いや、廃墟?」


「ああ、どうやら街があったようだな」


 山に囲まれた平地に規則正しく廃墟が並んでいる。

 ヒトギラの言う通り、かつて人が住んでいた場所のようだった。


「そうとも。ここは1000年前の戦いで滅びた街じゃよ」


「第八領地北の盆地……ジュネの街ですか」


「ジュネの街?」


「昔はドラゴンがいたでしょう。人は平地に、ドラゴンは山に。2つは親交が深い一方、住む場所は分かれていました。ですがジュネは両種が共に暮らしていたとされる街なのです。今は遺跡ですけどね」


 初めて聞いたけれど、有名で重要そうな場所であることはわかった。


「あれ、でもドラゴンって寒さに弱いんだよね? こんな北で暮らせたの?」


「いいえ、冬は眠りについていたそうです。代わりに夏は風を起こし、暑さを和らげてくれたとか」


「ちなみに! 学者が頻繁に訪れていたのですが、数十年前に謎の大爆発が起きて以来、立ち入り禁止となっておりますわ」


 デレーが割り込むように解説を付け加える。

 謎の大爆発、か。


「…………」


 俺たちはなんとなくエラの方を向く。


「ねえ、まさかとは思うけど……」


「ん? 爆発ならわしがやったぞ!」


「普通に重罪じゃない!?」


 1000年前の大事な遺跡で爆発なんて、学者が聞いたら憤死しそうだ。


「む、別にわざとではないぞい。すこーし忍び込んで実験してたらうっかり街の中心が吹き飛んだだけで」


「国王にチクったら死刑になりそうですね!」


「じゃろうな。あやつ遺跡とか大好きじゃし」


 うっかりで遺跡破壊、国王様を「あやつ」呼ばわり。

 大物通り越してもはや厄災ではなかろうか。


「ねえエラ、それでここに来たのはなんで? 貴女の爆発の罪を告白するためじゃないでしょ?」


「もちろん。えー、諸君。我々は現状、いくつか問題を抱えておる」


 エラは手を後ろで組み、その場を行ったり来たりしながら話す。


「ひとつ、騎士団に拠点を抑えられた。ふたつ、きょじんくん操縦またはワープのための魔力が無い。みっつ、きょじんくんは知っての通りであるし、ワープ装置も初期型のため膨大な魔力を必要とする。よって我らは、少なくとも魔力が回復するまでどこかで身を潜めねばならん。はいというわけでここジュネの街で数日間過ごしまーす。以上。わしは寝る」


 そこまでほとんど一息で言うと、エラは地べたに寝転んだ。

 さらに、数秒もせず寝息をたて始めた。


「ほ、ほんとに寝た……」


 表に出ていなかっただけで、相当疲れていたようだ。

 思えば拠点からここまで彼女に頼り切りだったな……。


「えーと、とりあえず屋根のあるところに行こうか」


「そうだね。あ、エラはボクが担いで行くよ」


 ジュネの街に住んでいた皆さん。

 彼女は破壊的でもあるけれど、時々すごく良いこともするし根はきっと良い人です。

 どうか許してあげてください。


 ……いやちょっと無理か。

 許すまでは行かなくてもせめて見逃してください。


 そんなことを思いながら、俺はジュネの街に入って行くのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ