閑話:やがて消え行く嘆きの声
くろいなみが、ありました。
いえ、きました。
ほんとうは、ちがうものだったけれど。
ぶつかって、まざって、おかしなことになって。
くろいなみがうまれました。
わたしは……わたしは、えっと……。
たしか、せいれい、でした。
だからまっさきに、だめでした。
からだをたもっていられなくて。
それで、いずみにもどりました。
もどろうとおもったわけじゃ、ないけれど。
たぶんほんのう、みたいな。
うまれたばしょなら、まだなんとかいきていられた。
くろいなみが、うみにでていったあと。
わたしはみました。
かれがひとりで、たっている。
みえるところにいたので、できたのです。
あ、もしかしたら、ずっとあとだったかも。
だって、すごくねむくて、いまもねむくて。
……なんだっけ…………。
だれか……そう、だれかだいじなひとたちがいた、ような。
だれだっけ。
だれだっけ。
かわいいあのこ……。
……かわいいってなんだっけ。
わからない。
なにもおぼえていない。
さっきまでは、おぼえてたはず、たぶん。
わすれちゃいけない。
わすれちゃだめな、はず、だったのに。
えっと、えっと……。
どうしよう。
わすれないように、わすれないように。
そうだ、ずっとしゃべっていよう。
きっとだれかが、きいてくれる。
もしかしたら、こんなことになるまえのわたしたちに、とどくかもしれない。
ぜんぶ、わすれないうちに。
わたしは、あるかわからないくちで、でているかわからないこえで。
くろいなみ
くろいなみ
うみはかえって
りくになる
…………




