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バサークの葛藤

 戦うのが好き。

 いっぱい跳んで、回って、蹴って、殴って、体を動かすのが好き。


 でもそれは、いけないことらしかった。


 里のみんなは言った。

 あたしたちは竜人で、人間を守らなくちゃいけなくて、この力を自分のために使っちゃいけなくて、清く正しく生きなくちゃいけない。


 じゃあなおさら、戦うのは良いことじゃないの?

 戦ったら強くなれるよ?


 そう言うと、みんなは凄く怒った。

 お前は悪い子だって、あたしを叱った。


 あたしは何度も叱られるうちに、やっと自分がみんなにとっていけないことをしているのだと理解した。

 けれど、どうしても戦いのことになると周りが見えなくなってやりすぎてしまう。


 それで、いつも叱られて反省室に入れられた。

 あたしと遊んでくれる子はいなくなった。

 まともに喋ってくれるのもルシアンくらいだ。


 明るく振舞ってはいたけど、ほんとは悲しかった。


 戦いすぎるのはダメ。

 それはもう知っている。

 問題は、戦いを楽しいと思うことがやめられないことだった。


 今度こそはと決意しても、結局は加減ができない。

 あたしはいけない子なのだ。


 とうとう、あたしは里を追い出された。

 力の使い方をわきまえるまで帰ってくるなと言われた。


 それでもあたしは悪い子のままだった。

 戦いを求めるのをやめられなかった。


 力の使い方とか、そんなのわからない。

 もうどうでもよくなって、好きに生きることにした。

 元々考えるのは苦手だったし、それでいいやと思った。


 強い人と戦いたい。

 あたしはこっそりギルドっていうとこに依頼を出して、冒険者をおびき寄せた。

 冒険者は普通の人より強いって聞いたことがあるからだ。


 しかしみんな弱かった。

 試しに仕掛ける最初の一撃だけで、みんな倒れてしまった。

 つまらない。


 友だちも、好敵手もいない。

 広い山の中、ひとりぼっちでいることに慣れそうになってきた頃、あの人たちは現れた。


 フウツ率いる冒険者パーティーのみんなである。

 彼らはあたしの初撃を防ぎ、互いに連携してすごく強い魔法を撃ってきた。

 炎を無効化するスキル《深紅の鱗》が無ければ、危なかったかもしれない。


 あたしは彼らを気に入り、仲間に入れてもらった。

 その後、はしゃぎすぎて迷惑をかけたあたしにフウツが「追い出したりなんかしない」と言ってくれた時は、もう飛び上がるくらい嬉しかった。


 こんなあたしでも一緒にいていいんだ! って。

 もしあたしの翼がちゃんと動くなら、本当に飛び回ってたかもしれない。


 嬉しくて嬉しくて、涙が零れた。

 悲しくないのに泣くのなんて初めてだった。


 悪い子のあたしは、どこにもいちゃいけないんだと思ってた。

 あたしを受け入れてくれる人なんていないんだと思ってた。


 けどみんなは、あたしが戦いを好むことは否定しない。

 突っ走ったり物を壊したりすると叱られるけど、「竜人なんだから」って怒らない。


 生まれてから14年。

 この日、あたしはやっと自分の居場所を見つけたのであった。


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