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エラの探究

 自分がいま何歳なのかはもう忘れた。

 とにかく、長い時間を生きてきたことだけはわかる。


 始まりは何だったか。


 そう、それは確か1冊の本だ。

 通っていた学校の、何の変哲もない教科書。


 子ども用に嚙み砕いた言葉で書かれた本は、在ることさえ知らなかった知的好奇心を目覚めさせた。


 気が付けば魔法の勉強にのめり込み、学校を出るとすぐに研究所の門を叩いていた。

 この辺りですでに、自分が天才であるという事実を理解していたのだが、それはまあいい。


 しかし頭の固い学者たちに追い返されたのは問題だ。

 仕方なく1人で研究をすることを決めるも、ここの研究者の行く末を思うと溜め息が出た。


 さて、しばらくするとお金が足りないことがわかったので、これまた仕方なく研究の時間を削って働きに出た。

 さらに働いてもまだまだ足りないと気付いた時。


 ある解決策が思い浮かんだ。


 ――国に研究費を出してもらえばいいのだ。


 そうと決まれば話は早い。

 自分の有用性をアピールするために、魔物を探知できる道具を開発して魔法道具発表会に乗り込んだ。


 どうやら学者の中では魂の研究が進んでいなかったようで、まずそこから理解してもらうのに苦労した。

 が、なんとか認めてもらうことに成功し、国に援助を約束させた。


 国の研究所に勧誘されもしたので入ってみたが、なぜかものの数か月で追い出された。

 自分から誘っておいてからに、まったく謎である。


 まあ1人の方が気ままで良い。

 引き続き自宅で研究をする。


 やがて自分の屋敷を手に入れた頃、今度は時間が足りないことに気付いた。

 それだけ健康に生きても残りの人生はせいぜいあと70年かそこらだろう。


 これはいけない。

 早急に若返りの魔法を開発し、少女の姿まで戻った。


 それから10代から30代を繰り返すことで、実質的な不老の体を獲得した。

 もはや研究を邪魔するものは無くなり、文字通り時間を忘れて没頭した。


 その過程で実験のために魔物をおびき寄せたり森をひとつ犠牲にしたり、あと騎士団からは危険人物認定されたりした。

 というようなこともあったが、概ね順風満帆だ。


 アクィラやフワリといった友人もできた。

 魔王の再来という危機も迫ってきてはいたが、それでもするべきことは変わらない。


 やがてフワリがある冒険者パーティーを連れて来た。

 フウツという少年をリーダーに据える彼らは、とても面白い匂いがした。


 自分の直感に従い、『魔王の器』を助けたいという彼らに協力することに決めた。

 結論から言えば、やはり自分の勘は正しかった。


 予想外だったのは、魔族の弟子ができたことと、その子の物覚えがとても良かったことくらいだ。


 一行がアクィラに遭遇するであろうタイミングで彼女に屋敷を任せ、パーティーに参加した。


 彼らといるのは実に楽しかった。

 研究以外でこんなに楽しいことは久々、いや初めてかもしれない。


 天才たる自分、そしてこの天才を楽しませるほどの愉快な一行。

 この先、何があろうと平気な気がしたのであった。

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