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合流

「お待たせ」


 俺はフワリを連れてヒトギラのところに戻る。

 ようやく頭が冷えたのか、デレーとアクィラも一緒にいた。


「お帰りなさいませ。周りが急に静かになりましたけれど、何かございましたの?」


「屋台の人をちょっと寝かせてきただけ」


「なら別にどうでもいいですわね。行きましょう」


 そう言ってデレーはさっさと歩き出す。

 一部始終を見ていたであろう人々の視線には全力で気付かないふりをしつつ、俺も後に続いた。


 残る3人を探して歩く道すがら、俺たちはフワリに図書館でのことを話す。


「へえ、消された出来事に古代語の詩か。面白いね」


「フワリは何か気になる情報はあった?」


「あんまり。ああでも、屋台の占い師に『竜人の弟子ってどこにいるの?』って聞いたら『いません』って言われた。明らかに嘘ついてたけど」


「そ、そんなド直球に……。というかなんで嘘ってわかったの?」


 まさかデレーみたいに心が読めるのだろうか。

 彼女に関してはたぶん俺限定だけども。


「普通に、なんか嘘ついてるなあっていう顔だったから」


「そうなんだ……?」


 芸術家の観察眼とかそういうやつかな。

 やはり今ひとつよくわからない。


「フワリちゃんの言う通りなら、噂の竜人の弟子とやらが本当にスミニアにいるってことよね」


「うん。敵か味方かわからないけど、会えるなら会っておきたいよね」


 と、その時「みんなー!」と聞き覚えのある明るい声が前方から飛んできた。

 目を凝らすと、赤い人影がこちらに向かって走って来ているのがわかった。


 人影は近付くにつれ鮮明になってくる。

 バサークだ。

 後ろにはトキとエラもいる。


「ちょーど探そうとしてたんだ!」


 ギリ人間ができそうなくらいのジャンプをして目の前までやって来たバサークは、笑顔でそう言った。


「俺たちも合流しようとしてたとこだよ」


「わ! すごい偶然!」


 少し遅れて、トキたちも到着する。


「ははは、若者は元気で良いのう」


「あなたも元気すぎるくらいですけどね。フウツさん、聞いてくれます?」


 トキはげんなりした表情で語り出した。


 客として祭りを回っていたトキとバサーク。

 当初のトキの心配に反し、少し危なっかしいところはあったもののバサークは特に大きな問題を起こすことは無く、順調にいっていた。


 さりげない聞き込みを続けていたところ、図らずも2人は竜人の弟子を知っているという人物と接触することに成功。

 さらに彼が何者なのか、何を知っていて、何を目的としているのかをも聞き出した。


 そして彼と会う方法を教えてもらう直前で、爆発音が耳に飛び込んでくる。

 嫌な予感がして聞き込みそっちのけで向かってみると案の定というか、やはりそこにエラがいた。


 しかもエラは見知らぬ男に何やら怒鳴られている。

 あらかたの事情を察して他人の振りを決め込もうとしたトキだったが、バサークが「助けてくる!」と突っ込んでいった。


 仕方なく後を追いかけ、男をそれとなくなだめようと試み、駄目っぽかったのでエラと共にバサークに抱えられて離脱。

 その後、なぜあんなことになっていたのかとエラに尋ねると。


「魔法実験とか謳いながらガバガバの式でしとったから、アドバイスをくれてやっただけじゃもん。実際爆発しておったし。素直に聞かんあやつが悪い」


「というわけなんです。どうせ挑発的な言い方をしたせいで怒らせたんでしょうけどね」


「なにをう!? ただ『まーおぼこい魔法式じゃのう、こんなんでよく屋台を出そうと思ったな?』って言っただけじゃ!」


「どう思います? フウツさん」


「それはキレられる」


 ほらね! とトキが勝ち誇った顔で言う。


「そんなことはどうでもいいんだが、エセガキは何か情報を手に入れたのか」


「おお、そうじゃった。ひとつ面白い話を聞いたぞい」


 ヒトギラの「エセガキ」呼ばわりをスルーし、エラは自慢げに話しだした。


「ククが今晩、祭りの一環として舞台で踊りをするのだと言っておったじゃろ? なんでも、舞台上で踊るのは竜人の仮装をした者のみらしい」


「? それがどうしたの」


「いやなに、天才の勘じゃが……バサークを舞台に上げてみると良いかもな、と。以上」


「今日のエラはポンコツね、はい解散」


「待たんかアクィラ」


 ええ、と疑いの目を向けるアクィラにエラは食い下がる。


「まだ決めつけるのは尚早じゃぞ?」


「あたし踊りたい!」


「ほれバサークもこう言っておる」


「バサークちゃんが可愛いので良し!」


 とてつもない速さの手のひら返しだ。


 まあ特に支障があるわけでもないから、とのことで反対意見も出ず。

 俺たちは街の中央に設置された舞台へバサークを連れて行くのであった。


 すでに日は隠れ始め、街にはカンテラの火がぽつぽつと灯りだしている。

 通りの賑わいはまだまだ冷めないものの、俺たちと同じく舞台の方へ向かう人が多いのか、やや控えめだ。


 図書館の裏手にあたる中央広場に着くと、なるほど立派な舞台が建てられていた。


「すみません、少しよろしくて?」


 デレーがたまたま近くにいた女性に声をかける。


「この後の舞台のことですけれど、受付なんかはどこでしますの?」


「ああ、君は旅の人かな? 受付は無いよ、好きに舞台に上がれるし、疲れたら下りることもできるんだ。実際、だいたいみんな時間の半分くらいで疲れて下りるから、最後に舞台上にいたい人は途中から上がったりしてるよ」


「そうなのですわね。ご教授、感謝しますわ」


「いいってことさ。そこの彼女が出るのかな? 素敵な仮装だね! 竜人祭、最後まで楽しんで行ってくれよ」


 そう言って女性は去って行った。


「ということらしいですわ」


「じゃああれだね、善は急げ? とにかく行ってきまーす!」


 返答を待たず、バサークは走って行く。


「で、僕たちはどうしますか?」


「わしはせっかくじゃから観ていこうかのう」


「ボクも」


 エラとフワリは舞台を観るつもりのようだ。

 うーん、俺もそうしようかな。


「私は適当に辺りを見て回ってきますわ」


「俺もそうさせてもらう」


「お姉さん的にはバサークちゃんを観ていたいけど、まあ譲歩してあげる」


 3人は広場から離れ、通りの方に消えて行った。


「トキは?」


「足が疲れたのでここにいます。なんなら背負っていただいてもいいんですよ」


「じゃあはい、どうぞ」


 俺はしゃがんで彼に背中を向ける。


「冗談ですやめてください」


「ええ……」


 トキジョークだったらしい。

 11歳となるともう他人に背負われるのはプライドに障るのだろうか。

 おそらくバサークに抱えられるのは別として、だが。


「ところで、おぬしらの方も何か有益な情報を掴んだのかえ」


「ああ、えっとね――」


 俺はフワリから聞いたことも含めて説明する。


「エラだったら古代語とか聞いたことあるんじゃない?」


「ある、な。というかその詩……むむむ……」


「何か心当たりが?」


「……うむ。しかしここではやめておこう。華やかな祭りの場にはそぐわぬことじゃ」


 まるで痛ましい出来事を思い出したかのように、エラは眉をひそめるのであった。


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