かくて鍛冶師は戦士となる
推奨:第4章の「これって運命!」まで読了
レジスタンスに属する魔族の中には、魔王によって近親者や友人を殺されたという者が少なからずいる。
第三支部のリーダーたるジェシカもその1人だ。
彼女にはかつて妹がいた。
学問はさっぱりなジェシカとは対照的に、妹は魔法研究者だった。
遡ること十数年、ジェシカが17歳で妹が14歳の時である。
彼女らの祖父母が相次いで他界した。
そこで彼らが経営していた鍛冶屋を、誰かが継がねばならないということに。
が、さして議論が行われることもなく、白羽の矢はジェシカに立った。
なぜなら既に当時、ジェシカは付近の鍛冶師の元で働いていたからだ。
彼女にならば安心して任せられると、大人たちはひと安心の様子だった。
かくしてジェシカは実家を出、遠く離れた祖父母の自宅兼鍛冶屋に引っ越した。
妹は姉との別れを嫌がったが、彼女は彼女で魔法研究所に通っていたため、致し方なく姉について行くことを断念。
複雑な思いで彼女を見送ることにした。
出発の日、ジェシカは妹にこう言った。
「何も一生のお別れじゃないんだ。そう悲しい顔をするんじゃないよ」
「しっかり勉強に励むんだよ。次会う時は、姉さんをあっと驚かせる魔法を見せてくれ」
大好きな姉から励ましと応援の言葉をもらい、機嫌を直した妹は笑顔で応える。
そして元気よく手を振り、彼女の門出を見送った。
――これが、最後であった。
この僅か1年後に妹は死刑となったのだ。
理由は、「不適切な研究をしていた魔法研究所に通っていたから」。
ジェシカがそのことを知ったのは、妹が死んで数日が経った頃だった。
情報源は、血相を変えてやって来た両親。
彼らもまた、魔王の使いが寄越した通告書により、今朝がた知ったばかりだった。
魔王のあまりにも理不尽かつ不誠実な行いに、ジェシカが憤ったのは言うまでもない。
彼女は魔王城へ向かい直談判を試みたが、門前払いをされてしまった。
途方に暮れるジェシカ。
そこへ1人の男が現れる。
彼は「レジスタンス」を名乗り、ジェシカをこれに勧誘した。
レジスタンスの何たるかを説明された彼女は、両親と妹を交互に思い出す。
ジェシカはそうしてしばらく悩んでから、加入を承諾した。
以降、彼女はレジスタンスの一員として密かに活動を始める。
情報収集や仲間内での情報伝達、武器の融通など、地道ながらも堅実な働きにより、彼女はレジスタンスに貢献していった。
鍛冶屋の地下に支部を建設することを提案・実行したのもジェシカだ。
表向きは一介の鍛冶師として。
裏ではレジスタンスの一員として。
今日もジェシカは妹の仇討ちと魔界の真の平和のため、奔走するのであった。




