売られた喧嘩を買っただけ
推奨:第4章の「上には上がいる」まで読了
6歳で親を亡くしたウラハにとって、姉は親でもあった。
それは9年前のこと。
不慮の事故で彼らの両親は他界し、幼い姉弟は社会に放り出された。
面倒を見てくれる大人も親が遺した財産も無く、さながら海に浮かぶ一隻の難破船のように。
都合よく助けてくれる者などおらず、ウラハと姉は互いのみを頼りとするほかなかった。
本来、行く当てはあるはずだったのだ。
祖父母は既にいなかったものの、父親には弟がいたし、母親には姉と兄が1人ずついた。
しかし誰も彼らを引き取ろうとせず、遺産を山分けしてさっさと去って行ったのである。
家も売り払われ、宿を借りる金も無い。
絶体絶命の状況で、姉弟はどうしたか。
――その日のうちに、母親の兄を締め上げに行った。
まず彼の家に無理矢理上がり込み、2人がかりで袋叩きにする。
それから家の中を漁って金品が十分にあることを確認すると、家主をふんじばって川に流した。
ウラハと姉は、恐ろしく喧嘩が強かったのだ。
加えて微塵も容赦が無かった。
母親の兄すなわち伯父を襲撃対象に選んだのも、彼が唯一の独身であり、妻やら子やらに加勢される心配が無く最も負かしやすいと考えたから。
こうして2人は新たな家を手に入れることに成功。
ちなみに伯父はどこまで流されたのか、結局、帰って来なかった。
新居での暮らしを始めて数日、次に彼らが向かったのは伯母の家。
彼女には夫と3人の子どもがいたが、ウラハたちは遠慮なしに攻め入った。
だが自分の兄がこの姉弟にどんな目に遭わされたかを人づてに聞いていた伯母は、即座に降伏する。
家の中で暴れられてはかなわないし、夫や子どもに自分がウラハたちを見捨てようとしたことを知られるのも嫌だったのだ。
彼女は家族には事情を誤魔化しつつ、言われるままに金品を差し出した。
それからまた数日後、ウラハたちは最後の標的、叔父の家に向かう。
叔父は妻と2人暮らしで、こちらは姉弟の件に関しては共犯者だった。
彼らはウラハたちを返り討ちにしようと襲い掛かって来たが、叔父はウラハに、妻は姉に伸されるという結果に。
家を奪われることは無かったが、夫婦仲良く、伯父同様に川流しとなった。
無論、金品を強奪された上で。
当面の生活費も獲得し、めでたくウラハと姉は平和な生活を再スタートさせられた。
伯父は行方不明、伯母は個人的な財産をほとんど失い、叔父夫婦も財産の大部分を喪失。
やりすぎと言えばやりすぎであるけれど、ウラハと姉はちっとも悪いとは思っていない。
なぜなら2人は、売られた喧嘩を買って、勝利しただけなのだから。




